連載パナマ・レポート39:ルベン・ロドリゲス 2023年07月分 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載パナマ・レポート39:ルベン・ロドリゲス 2023年07月分


連載パナマ・レポート39: ルベン・ロドリゲス 2023年07月分

執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(早稲田大学法学研究科講師・パナマ共和国弁護士)

 I. 2024年総選挙

A.  候補者決定

6月中旬から様々な政党において党内選挙が行われている。与党PRDでは、Gabriel Carrizo副大統領が大統領候補者として当選した。PRDの党内選挙に参加するため、Carrizo副大統領は統領府の大臣を2月中旬に辞任した。また、PRDの党内選挙で落選した国会議員7人は2024年の総選挙に参加できず、再選は不可となった。

4月中旬に、Martin Torrijos元大統領(2004-2009)がPP党の下で大統領選挙に出馬すると発表した。Ricardo Martinelli前大統領も自ら結成したRealizando Metas党(RM党)の候補として大統領選挙に参加すると既に述べている。

また、2009年の総選挙時にMartinelli元大統領を支援したCambio Democrático党 (CD党)の党内選挙が7月9日に行われ、Martinelli政権で外務大臣として勤めたRomulo Rouxは大統領候補者として当選した。Varella前大統領を支援したPanameñista党では、Blandon前パナマ市長が大統領候補者となった。

B.  Carrizo副大統領の電撃インタビュー

7月11日、Carrizo副大統領は突然TVN局のニュース番組に現れ、インタビューを求めた。TVN局は、同日同時インタビュー予定であったTorrijos元大統領よりCarrizo副大統領インタビューを優先させたため、Torrijos元大統領は退場した。インタビュー中、Carrizo副大統領はPRD党政権での汚職疑いについての質問には回答せず、政府の成果を上げ国の発展を支えるため大統領選挙に出現すると述べた。

6月中旬に自治体強化政策において、PRD党が管理している行政区画の支援額は、他党の行政区画をはるかに上回ることが明らかになったため、当局が調査を行っている。6月20日もCarrizo副大統領がTelemetro局のニュース番組に突然に訪問し、40分のインタビューを行った。その際、インタビューの予定であったRoux氏は、Carrizo副大統領のインタビューが終わるまで待つこととなった。Carrizo副大統領の行動は独裁的であると批判する声が増えている。

 II. 政府

A.  New Business事件裁判の判決

7月17日に、マルティネリ元大統領(2009年-2014年)が被告人となっている裁判の判決が引き渡された。パナマ国庫から約4400万ドルを利用して、EPASAを買収したマネーロンダリングについてマルティネリ元大統領は有罪判決を受け、禁固刑128か月、1900万ドルの罰金刑に処せられた。元大統領が有罪判決をうけるのは68年ぶりである。また、他の21被告人の内、7人もマネーロンダリングに関与したと認められた。アメリカ政府は1月下旬に汚職事件関与を根拠とし、マルティネリ元大統領とその家族を入国禁止とした。

判決についてマルティネリ元大統領は調査の違法性、選挙特権、訴訟手続き違反を訴え、控訴する意思を示した。検察側も、より厳罰に求刑すると発表している。マルティネリ元大統領は、自ら結成したRealizando
Metas党(RM党)大統領選挙の候補として出馬する予定だが、パナマ憲法では、禁固5年以上の有罪判決を受けた者は大統領になることができない。今回の判決はその条件を満たしており、来年5月上旬に行われる総選挙までに判決が確定した場合、マルティネリ元大統領は出馬できなくなる。

III. 経済

A.  国債

2021年内閣政令第23号によって、パナマ政府は2023年度以降の国家予算の不足を補うため、16億ドルの国債を発行すると決定した。政令第23号に基づき7月18日に6億ドル、利息年6.37%、2033年期限の公債を発行した。2023年度国家予算は275億4900万ドル(前年同期比4億1600万ドル増加)となり、赤字はGDP3%に収まっているため、法律の定めている赤字の上限(GDP4%)を下回っている。新型コロナウイルスの影響によって国家歳入は、赤字状態に陥っている。2018年度を基準として、2020年赤字はGDP9.8%(52億2千万ドル)、2021年赤字はGDP5.5%(35億2200万ドル)、2022年赤字はGDP3.92%(30億ドル)であり、回復傾向が継続している。

以   上