『「移民列島」ニッポン −多文化共存社会に生きる』 藤巻 秀樹 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『「移民列島」ニッポン −多文化共存社会に生きる』  藤巻 秀樹


欧米諸国等に比して外国人の割合が極めて低く、同質社会の馴れ合いでやってきた日本で、好むと好まざるにかかわらず外国人受け入れが増大している。東京だけ見ても池袋(中国人)、西葛西(インド人)、高田馬場のミヤンマー人、韓国人をはじめ多国籍の街といわれる大久保などがあり、愛知県の保見団地等にはブラジル系等の南米の日系人が多く住む。また農家へのアジア各国からの花嫁が嫁いでいる新潟県南魚沼市のような例もある。

本書は、まず日本の各地、様々な仕事に入ってきている移民たちの存在、彼らの渡航目的、分布を紹介し、次いで日本人と外国人の共生には何が必要かを、実際に保見団地、大久保、南魚沼市に著者(日本経済新聞記者)が住んでみての記録と、日本各の取材を通じて聞いた移民たちの肉声を伝えようとするものである。

最終章では1990年の入管法改正をきっかけに増大した外国人に対応する政府や政党の移民政策の試行錯誤などを振り返り、これからの日本の移民政策と脱「同質社会」への道を提言している。巻末には、戦後日本の移民受け入れに関する年表(1951〜2012年)や参考文献リスト、本書に登場する店舗・団体・人物の一覧も付けてあり、日本における外国出身者との共存を考える上で有用な情報を提示している。

(藤原書店2012年10月315頁3000円+税)