『遠い声 −ブラジル日本人作家 松井太郎小説選・続』 松井 太郎 西 成彦・細川周平編 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『遠い声 −ブラジル日本人作家 松井太郎小説選・続』 松井 太郎 西 成彦・細川周平編


1917年神戸市に生まれ、36年父の失業を機に一家でブラジル移住、サンパウロ州奥地で農業に従事していたが、隠居後長年親しんできた文芸活動に邁進し、コロニアの新聞・同人誌に投稿しており、2010年に同社から『うつろ舟ブラジル日本人作家松井太郎作品選』が出ている〔協会Webサイト「掲示板」→「図書案内」で紹介〕。

続編の本書も、日本人移民の息子と娘が駆け落ちして原生林の開拓に挑むが出産とマラリアで妻子を失い、寡夫はやがて研ぎ屋として日系人移住地を旅する果てに亡妻の弟とめぐり合う「ある移民の生涯」をはじめとする日本人移民の辛酸をなめた生業と生活の挿話を綴った短編と、上記前書に収録されている「堂守ひとり語り」とともに、著者が関心をもった東北部の夜盗・殺人者を題材に描いた「野盗懺悔」「野盗一代」の東北ブラジルもの三部作と、同地で今なお人気が高いシセロ神父を称えたコルデール版(韻を踏んだ吟遊詩人語り節)の訳詞「ジュアゼイロの聖者」に至る、幅広い著作の中から選ばれた15編の短編小説が収録されており、優れたコロニア文学作家の集大成である。

(松籟社2012年7月333頁1900円+税)