海外在住日系人がいる日本語教育、言語、文化について、32名からなる研究者の論考13編と11のコラムで構成した総合的な論考集で、具体的にはブラジルはじめカナダ、米国・ハワイ、フィリピンを取り上げている。
本書の大きな部分は、ブラジル移民と日系在日ブラジル人について割かれており、1930年代サンパウロにおける日系社会での言語使用状況と日本語教育、内陸農村地帯の日系社会子弟教育、日本語学校とそこでの教育の変遷、そして戦後多くなったバイリンガルと80年代以降の日本へのデカセギとの関連、日本での外国人のこども達の言語教育の環境、ブラジル学校の日本への進出、日本内地からの移民と異なる沖縄移民の郷里との連繋、2008年に行われたブラジル日本移民100周年記念行事にみる新たな文化の創造、日本移民史料館の記録保全への取り組みなど、さまざまな切り口での分析がなされている。巻末のハワイ、米国、カナダ、ブラジルおよび日本での日系教育史年表(1868〜1960年)も有用な資料である。
(明石書店2012年6月 262頁3400円+税)