本書の原題は“Thinking Fan’s Guide on the World Cup”、主に英語圏の作家達が書いた2006年のドイツ大会に出場する32か国のサッカー文化、歴史などの文章とドイツ大会のグループリーグと決勝トーナメントの日程、1930年〜2002年のワールドカップの1〜4位の国の試合数、ゴール数、観客動員数や、世界69の国・地域の通算成績表のデータを付けたものである。国別では、結果的に優勝したイタリアをはじめフランス、ドイツ、ポルトガルや予選リーグで敗退した日本、韓国を含む国々に、ラテンアメリカからはコスタリカ、エクアドル、パラグアイ、トリニダード・トバゴ、アルゼンチン、メキシコ、ブラジルについて記述されている。各国別記述の後に、後書きに代えてグローバリゼーションの時代におけるサッカーを読み取る『ワールドカップで勝つ方法』という項があり、これもまた面白い。
各項はそれぞれの執筆者が自由に書いており、構成も内容も様々であるが、熱烈なサッカー好きが書いた各国選抜チームの選手の紹介や戦術の解説を期待すると大きな間違いで、サッカーを切り口にその国の政治・経済・社会構造がこうだから戦績はこうなのだといったような解説や、政治、南北問題、移民問題との関係についての言及をしたもあって、サッカーフアンのみならず世界情勢に関心のある者にも興味深い論集である。
(越川芳明、柳下毅一郎監訳白水社499頁2800円+税)