ブラジルのアマゾン河中流域で毎年3月頃に出現する河水の大逆流ポロロッカでサーフィンをすることを夢みた高校生が、ついに実現するまでを描いた長編小説。
母の弟の剛が製薬会社のメディスン・ハンター(将来の薬原料・ヒントとなる植物等の収集専門家)としてベレンに赴任し、メールのやり取りでアマゾン河に関心をもった主人公の泳は、必死にアルバイトに励んで資金を貯め、28時間かかってロサンジェルス、サンパウロ経由ベレンに到達、日系ヤマモト家の世話になりつつ、マナウス近くでポロロッカのコマーシャル映像を撮りに来た米国人チームに加わることになり、ついに二度にわたって逆流の大波に乗る。
全体の半分は自宅での両親にブラジル行きを納得させるまでのやり取り、学校での友人たちとの付き合い、湘南の海へのサーフン通いなどの描写だが、それが泳の“終わらない波”ポロロッカ(大きな声の意味)に乗ることを実現するための必然的な伏線になっている。
ベレンで初めて見たブラジル社会の新鮮な印象、血は日本人でもブラジル人の価値観・道徳観を合わせもつ3世の子供たち、米国とブラジル人の混成グループに加わった泳と剛との愉快な交流などの描写もあって、サーフィン実現を通してブラジルの片鱗も見せてくれる、楽しい青春小説。
(角川書店2012年11月602頁1900円+税)