北大西洋で獲れるタイセイヨウタラ(鱈。ポルトガル語でバカリャウ、スペイン語でバカラオ)の干物、塩漬けは万能の保存食材として、バイキングの時代からポルトガル人の探検、海賊船の食糧となっていた。新世界へはブラジルにポルトガル人が持ち込み、移民者の食習慣として広まったばかりでなく、安価な塩魚はアフリカ人奴隷の食料にもなり、現在に至るまで重要な位置を占めている。
本書は新世界発見や入植など遠く移動する人達を支えたタラの歴史、世界経済と深く結びつきから保存法、英国の国民食フィッシュ・アンド・チップスほか調理法、レシピから乱獲により激減している資源の持続可能性に至るまで網羅的に記述している。
〔桜井 敏浩〕
(内田智穂子訳 原書房 2023年2月 192頁 2,200円+税 ISBN978-562-07217-0 )