これまで日系ブラジル文化の音楽、映画、芸能等について論じた書物を出してきた著者による日系ブラジル移民文学の大部な総合的研究書の第?巻で、この後?も刊行されている。100余年のブラジル日本人移民史の中で、様々な土地、歴史の中で刊行された同人誌や邦字紙の文芸欄等に投稿された小説、詩、俳句、短歌、川柳、歌謡を丹念に追ってひたすら読み込み、6つの期間に区分して、それらの背景、時代の経過にともなう変化などを紹介し、文学史のみならずブラジル日系社会における全文学活動を詳しく解説している。
また後半の 593〜 809頁は、ブラジル日系社会の3つの文学賞の入選作の出版年、作者名、作品の題名、あらすじ、賞の内容を網羅したもので、その後の1906年から 2011年の間の文学年表、人名索引とともに、日系ブラジル移民の文学の全容を記録しようとした、著者の 20年にわたる調査の集大成であり、大変な労作である。
(細川 周平みすず書房2012年 12月825頁15000円+税)