『グアテマラ断章 −現代史の襞の中に隠されたエピソード』  近藤 敦子 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『グアテマラ断章 −現代史の襞の中に隠されたエピソード』  近藤 敦子


1951年3月のハコボ・アルベンス・グスマンの大統領就任、特にユナイテッド・フルーツ社傘下の農地、港湾・鉄道を通じた経済支配にもメスをいれた農地改革等は、国内上流階級や軍の一部はもとより米国政府の反発にあい、駐グアテマラ米国大使とCIAの仕組んだ軍人の反乱であっけなく倒されるところから始まり、その後の軍政が続く中で搾取とそもそも人間扱いをされてこなかった先住民が改善運動を起こし、それに対する政府と特に軍による凄まじい弾圧、暴行、殺戮から、ついに武力による内戦状態となった1970年代後半から80年代にかけての惨状、それが世界的に知られるようになり、国際的に孤立したグアテマラの政府・軍がパナマ、コロンビア、メキシコ、ベネズエラ4か国の“コンタドーラ・グループ”やノルウェー政府等の尽力もあって停滞と紆余曲折を経てやっと96年12月に和平協定が締結されて、40年近く続いた武闘は終焉した。

本書はこの間のグアテマラ現代史の襞(ひだ)に折りこまれた史実を、アルベンス政権の挫折した農地等改革、ゲリラの出現、常に犠牲となったマヤ系先住民の被搾取の歴史と武装抵抗化、それに対するに軍や暴力準軍事組織の公然とした弾圧、1980年に駐グアテマラ スペイン大使館にエル・キチェ州の農民が陳情に入り込んだ機を捉えて警官隊を突入させ、大使執務室で40人近い館員、農民と学生支援者を焼き殺し、一人大使のみ重傷を負いながらも生存した事件、長くグアテマラの“反共体制”維持に固執して協力者や軍部を庇い、資金・武器を渡してきたCIAの緩慢な方針転換、和平協定締結に至るまでの多くの困難、揺り戻しと協定の成立の歴史の流れを追い、最後に“フィンカ”というグアテマラの征服者侵攻時に端を発し、先住民搾取と既得権益層の政治経済支配の根本原因となってきた大土地所有制についての解説を行っている。

グアテマラに長く在住し、『グアテマラ現代史』(1996年、彩流社)の著書もある著者による著者の丹念な解説は、現在においてもメソアメリカの先住民の問題が解決したとはいえない状況が続く中、多くの犠牲者を出してきたグアテマラ現代史に関わる数少ない有用な文献なので、出版から多少時間が経過しているが取り上げることにした。

(エクセルシア2008年9月256頁1600円+税 ISBN978-4-99900683-5-6)