連載エッセイ272:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町 から」その16 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ272:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町 から」その16


連載エッセイ 269

南米コロンビア・雲と星が近い町から」その16

知られざる温泉大国・コロンビア

執筆者:新井 賢一(Andes Tours Colombia代表 ボゴタ在住)

コロンビア国内情勢については昨今かなり揺れています。ただ前回投稿時にコメントした通り私はこの国において選挙権を持たない外国人居住者であり、政治的・経済的に微妙な発言をすれば私自身に影響が出てしまう為この件についてこの場でコメントする事は控えたいと思います。という事で閑話休題。

約三年間コロナ禍に巻き込まれて厳しい日々を送り続けていましたが、今年はようやく日本人の方々のコロンビア来訪数が徐々に増えてきている事を実感しています。現在は別の問題・円安の影響で海外旅行は費用がかさむ事からまだまとまった数の来訪はありませんが、例え個人単位であってもコロンビアを訪れる方々が増えてきているだけ有難い事です。

既に来年の話ですが新年早々「温泉地旅行」をする事が決まりました。それも私自身の個人旅行ではなく日本から来訪されるお客様の専属同行ガイドの仕事としてです。現在旅程を調整中ですが私自身の過去の旅行経験がこのような形で活かされるとは思いもよりませんでした。

アンデス山脈・そして複数の活火山を持つコロンビア、実は国内各地に多くの温泉地がある「温泉大国」である事は日本人の方々には殆ど知られていないと思います。新年早々コロンビア国内の温泉地を巡られるお客様は既に世界数十カ国の温泉地を巡られている「温泉マニア」です。今回コロンビアの複数の温泉地を指定・訪問を希望された事を嬉しく思います。私自身が訪れた複数の温泉地を改めて紹介します。

【クンディナマルカ県】

私が訪れた温泉地の中で首都ボゴタから最も近いのがクンディナマルカ県チョアチ(Choachi)村にあるサンタモニカ温泉です。ここはボゴタから車で約一時間・標高約3,200mの山を越えたあたりにあります。直線距離にすれば数十キロ程度に過ぎませんが意外と時間がかかるのはアンデスの山越えがある為です。ルートの途中いきなりストーンと落ちるような地形があり、アンデス山脈の地形の変化がはっきりと分かります。

このサンタモニカ温泉、大小さまざまなプールがありますがこれは全て温泉であり源泉を水で冷ましています。そうでないととてもではありませんが入る事は出来ない、源泉はそれほど高い温度です。サンタモニカ温泉は硫 黄臭がとても強く、肌や着衣にその匂いが暫く残るほどです。

首都ボゴタから北へ車で約二時間、クンディナマルカ県・マチェタ(Macheta)にあるその名もLos Volcanes(火山)という名の温泉地です。クンディナマルカ県・北隣のボヤカ県にかけては多数の温泉地があり、マチェタとその付近にも多数の温泉地があります。山間にあるこのLos Volcanes温泉も知る人ぞ知る場所です。ここも高温の源泉を水で薄めています。前述のサンタモニカ温泉はリゾート地のような華やかさがありますが、このLos Volcanesはひなびた昔ながらの温泉地のような風情で、温泉自体はほぼ無臭です。

首都ボゴタから北へ車で約一時間、かなり穴場的な場所がグアスカ(Guasca)村周辺の温泉です。まるで泥水のような濁った温泉ですが地中の鉄分が溶け出したものでかなり鉄分が濃い温泉です。このGuascaの鉄分が濃い温泉は世界的の温泉マニアの間では有名なようです。Guasca村近郊は露地もののイチゴの生産地としても知られています。

【リサラルダ県】

世界文化遺産・大コーヒー地帯を持つリサラルダ県にあるサンタロサ・デ・カバル(Santa Rosa de Cabal)と付近にあるサン・ビセンテ(San Vicente)はコロンビア国内で最も有名な温泉地です。付近には現在も活発な活動を続けているルイス火山があります。サンタロサの方は大小さまざまな温泉施設があり、宿泊施設も充実しています。目の前には大きな滝(これは冷水)もあり風光明媚な場所です。他方、サン・ビセンテの方は秘境の温泉的雰囲気があり、コロンビア国内で唯一流れる川がそのまま温泉になっている場所があります。いずれも温泉はほぼ無臭です。コーヒー地帯観光と合わせ、時間に余裕があれば是非ともこの温泉地を訪れて頂きたいです。

【ボリーバル県】

カリブ海に面したボリーバル県にも「温泉」があります。世界遺産の古都・カルタヘナから車で約一時間、カリブ海のすぐ近くにあるのが世界的に知られている「トトゥモ泥火山温泉」です。この場所だけ土が盛り上がっていて、入場料を払って最上部まで行くと火口口(?)が全て泥沼のようになっている珍しい温泉です。正確なのかよく分かりませんが、話ではこの泥の層は推定の深さ約2,000m位まであるらしく地熱により微妙に温かいようです。そんなに深いのであれば沈んでしまう恐れがあると思いきやそうではなく、逆に横になってプカプカと浮く事が出来ます。また、温泉としての効能もあるとの事です。その為入場者は全身泥まみれになるのが常識です。

こんなに泥まみれになってしまっては後が大変だと感じる思いますがそこは上手く出来ていて、山を下りてとぼとぼと坂道を歩いて下った先に湖があり、そこで複数の女性が待ち受けていて有料で湖の水を使って丁寧に泥を洗い流してくれます。

この他にもコロンビア国内には多数の温泉地があります。温泉マニアの方々、是非ともコロンビア各地の温泉を訪れてみて下さい。きっと満足して頂ける事でしょう。

以 上