2009 年から 12 年まで駐キューバ大使を務めた著者は、米国でのオバマ政権 の誕生、フィデル・カストロ国家評議会議長の退任とラウル・カストロの議長職継承という、いろいろな変化が起こり始めたキューバを見てきた。超大国米国と目と 鼻の先にあり数々の制裁を受けながら、シジョン(揺り椅子)の如く揺れても倒れ ないしたたかな国の姿を、3年半の在任中の出来事、見聞を時系列的に紹介し、読 者がキューバについて理解を深めるようエッセィ風に述べている。
2009 年の信任状奉呈や主要国駐在大使との意見交換から始まり、10 年には日 本から現職農水相はじめ来訪者が増大し、またペルー大使公邸人質事件をめぐっ ての交渉、11年には東日本大震災犠牲者弔問にラウル議長が大使公邸に記帳にき たこと、米国の制裁緩和の動きの進展、アラブの春、金正日総書記の死とベネズエラのチャベス大統領のキューバでの病気治療などの世界情勢の変化があり、12 年 には海底油田試掘失敗や汚職追放、ローマ法王の来訪、仙台藩士支倉常長のキュ ーバ上陸 400周年に当たることなど、多方面からのキューバ像を示していて、変化を予見させる現代キューバを知る上で有益な解説書になっている。
〔桜井 敏浩〕
(アーバン・コネクションズ 2013 年 5 月 239 頁 1,500 円+税)
〔『ラテンアメリカ時報』2013年夏号 No.1403 より〕