「デザインには社会を変える力がある」という観点から、デザイナー達の実践 は社会に変化を与え、持続可能な社会への転換にデザインは何が出来るかを、ブラジル、コスタリカ、アルゼンチンの事例から日本でのデザインの実践の教訓を 得ようと試みた、著者の博士論文を基にその後の調査結果を加えたものである。
デザインを無形文化資本として捉え、それが活用されることによって社会が変 化し、持続可能な社会の構築に貢献する様子を描くとして、まず工芸活性化とデザインの工芸化が結びつき、振興政策が行われているブラジルの事例、著者もか つて青年海外協力隊員としてコスタリカ工科大学でのインダストリアルデザイン活動の経験を踏まえて、国内産業育成、起業のためのデザイン活動、地域連携や ネットワーク化が進むアルゼンチンのデザイン活動の事例を見た後に、それぞれからデザイン活動の意味と役割を比較して、持続可能な社会形成のためのデザイン活動とその政策のあり方を導きだそうとしている。
(鈴木 美和子 水曜社 2013 年 7 月 193 頁 2500 円+税)