熊本県からの日本移民とブラジル人女性との結婚で生まれたマリアナは9歳の時にデカセギ家族として来日、滋賀県で小学校3年生に編入されたが、日本語がまったく通じない彼女にとって周囲の人とのコミュニケーションが出来ず孤立感に苦しむが、大変な努力で徐々に学力もつき、時に陥る挫折感を乗り越えて中学、高校に進学する。ラテンアメリカの少女が幼児の時から当たり前に付けているピアスを、単に学校の規則を理由に一律禁じるなどの文化のギャップや、ブラジル人とのハーフであることの周囲の違和感などは相変わらず経験するが、アルバイトで外国人(ブラジル人)子女の相談員をしたことをきっかけに教員になるべく短大に入学、国語の教員資格を取るべく教育実習はかつての母校の中学に赴く。22歳で日本国籍を取得(ブラジル国籍を破棄する届けを出すことにほかならなかった)、愛知県で語学相談員に就き、在日外国人の様々な事例の相談に応じている。
マリアナが日本に来た日から強烈に感じたカルチャーショック、学校や地域社会での外国人に対する理解、包容力のなさ、現場で苦闘する教師などの中で、家族の就労や周囲との関係の変化の苦しみが率直に綴られている。家族や周囲の教師等に支えられて、自分のやりたい仕事を見つけ、今ではかつての自分の姿にも似た、学校で困惑、苦労、迷っている外国人の子供たちの相談に情熱を傾けているが、随所にブラジル系のみならず在日外国人の問題が触れられ、日本国内での外国人の置かれている境遇への理解を深めさせてくれる。
(明石書店2013年7月254頁1800円+税)