エリア・スタディーズ・シリーズのラテンアメリカ16か国目。カリブ海域13の国の一つで、イスパニョーラ島の東側を占めるドミニカ共和国について書かれた数少ない日本語の総合的な紹介書。
地形、自然、数字で見る概説編「カリブ海世界とコロンブスの島」、コロンブスの到来から現代史に至る「共和国が造られた歴史」、「現代の政治経済」、ドミニカから米国への移民社会やカリブ・中米地域統合との関係の模索、パナマ運河拡張後の対応を述べた「カリブの小国からグローバル化する世界へ」、貿易を含む「産業・企業・金融・流通」、格差社会や隣国ハイチ人との共存、麻薬犯罪やプロ野球選手輩出等の「現代社会の光と影」、単一農産品依存から変化しつつある「21世紀の新しい経済と社会の構築にむけて」、文化のルーツと芸能などを紹介する「混血文化のダイナミズム」、悲惨なスペイン人の征服と植民地時代の「消された先住民」、戦後の日本移民の渡航とその後国を相手取った訴訟事件、ODA供与状況などの終章「遠くて近い日本との関係」に至る10編60章と10のコラムを、学界、外務省、JICA、企業等の様々な分野の、過半がドミニカで生活したことがある14人が執筆している。
〔桜井 敏浩〕
(明石書店 2013年7月 298頁 2,000円+税)