アマゾン河上流のペルーのパカヤ・サミリア国立保護区、エクアドルのヤスニ国立公園、ブラジルのアマゾン支流のネグロ川の熱帯雨林、浸水林にアマゾン川イルカ −明るいピンク色の体色のため“ピンクイルカ”とも呼ばれている−の姿を追った写真集。
もともと海の鯨類仲間であったイルカが、南米大陸の隆起による地形変化によって海と断ち切られて内陸河川での生活に順応し進化したものだが、撮影者は京都大学理学部動物学科を卒業し海棲哺乳類の研究と撮影を行ってきただけに、各地のカワイルカの頭骨の写真も示してその種類の違いや生態などについての解説も付している。カワイルカは、森林伐採、ダム工事による生息水系の分断と水質悪化、刺し網漁での混獲、漁具を傷つける邪魔者としての排斥などにより過酷な状況の中で生きているが、撮影者は優しい眼差しでアマゾンカワイルカがピンク色の妖艶な姿態で泳ぐ姿を実に美しく撮っている。
〔桜井 敏浩〕
(シータス発行 丸善出版発売 2013年11月 95頁 1,600円+税)