連載エッセイ277:硯田一弘 「南米現地最新レポート」その49 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ277:硯田一弘 「南米現地最新レポート」その49


連載エッセイ277

「南米現地最新レポート」その49

執筆者:硯田一弘(アディルザス代表取締役)

「2023年9月3日発」

パラグアイの重要産業の一つが牧畜であり、今週末は牧畜産業の中心地である北部コンセプシオン県の県庁所在地Concepcionで牧畜博覧会Expo Norte(直訳すると北部博覧会)が開催され、その開会式にサンティことPeña(ペニャ)大統領が出席しました。

https://www.lanacion.com.py/politica_edicion_impresa/2023/09/03/paraguay-va-a-avanzar-cuando-los-paraguayos-trabajemos-juntos/

この開会式で大統領は「パラグアイはタンパク質の供給において世界で重要な地位を占めるに至っている。(Paraguay es un país cada vez más importante en el comercio de proteínas y desarrollo industrial.)」と発言しました。つまり畜肉と大豆という人間が必要とするタンパク源の両方を世界に供給する重要拠点であり、産業レベルとしても発展を遂げている、という趣旨の発言で、ロシアのウクライナ侵攻で危機に直面している穀物や畜肉の安定供給を担う重要な地位を担っているということです。

下の写真はFrigorífico Concepciónという屠畜能力一日1200頭の設備ですが、コンセプシオンには一日の屠畜能力1000頭以上の超大型屠畜施設が複数存在しており、近隣の牧畜大国からの設備投資も継続的に行われている食肉加工産業の中心地となっています。

今週は首都アスンシオンでエキスポ日本パラグアイLa Expo Japón-Paraguayというイベントも開催されました。

https://www.lanacion.com.py/la-nacion-del-finde/2023/09/02/la-expo-japon-paraguay-vive-su-segundo-dia/

また週明けには東の街Ciudad del Este市でもEXPO Maquilaというパラグアイの産業振興の手法であるマキラドーラに関する博覧会も開催されることになっており、日本では天高く馬肥ゆる秋ですが、パラグアイでは資源価格高く牛肥ゆる博覧会の季節、となっています。https://www.maquila.org.py/expo/

ところで先週の言葉fondosの中で、「パラグアイでも日本の税金で永年に亘って経済協力事業が行われていますが、どこで何にどう使われ、それが如何なる効果を発揮しているか、日本の皆さんは知る術もないというのが実情。」と書きましたが、これに関して『全ての国家事業は公告されている』との御指摘を受けました。確かに探していくとどういう事業が行われているか調べることは出来ますが、国会図書館にでも出向かない限りインターネット発達以前の情報には触れることは出来ないのが実情で、マスコミの皆さんもより質の高い情報発信に努めて頂けるとありがたいと思う一国民です。

https://www.jica.go.jp/overseas/paraguay/index.html

「9月10日発」

およそ百年ぶりというモロッコの地震が大きく報じられています。

https://www.bbc.com/japanese/66766283

今週は南米チリでも地震が発生しました。

https://www.trt.net.tr/espanol/espana-y-america-latina/2023/09/07/terremoto-de-magnitud-de-6-2-sacude-el-norte-de-chile-2034130

丁度業務打合せでパラグアイに来ていたチリ人技術者が、7日木曜日の朝、La Serenaという首都サンチアゴの北約500㎞の街に住む家族から地震発生とそれに伴う停電についての連絡を受けている場に同席したので知ったのですが、日本だけでなく、パラグアイでも殆ど報道されず、このチリ人との会話が無ければほぼノーマークという状態でした。チリは地震大国で、日本と同様にかなり頻繁に地震が発生しており、La Serenaの地元でマグニチュード6.8と報じられた6日の地震の後も以下の図の様に頻発しているので、国外では殆ど報じられないまま、大きな被害となったモロッコに世界の注目が集まったようです。

チリ+地震でGoogle検索しますと、1960年5月にチリで発生した地震が日本に津波被害をもたらした件が沢山ヒットします。

https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1960_chile_jishintsunami/index.html

地球の反対側で起こった地震が太平洋を越えて日本に津波被害をもたらすよいう点で、この時から世界は繋がっているという認識を多くの日本人が持つようになったように思います。また最近の異常気象を図る指標として、ペルー沖の海水温度の上昇や下降がエルニーニョやラニーニャといった現象に繋がることは世界の常識になっています。

チリの北に位置して同じアンデス山脈沿いのペルーも、更にその北のエクアドル、コロンビア、更にはアンデス山脈の北端ベネズエラでも地震は頻繁に発生します。従ってチリで発生した地震はいずれ自国でも同様の被害が起こり得るとして、警戒を呼び掛ける報道も目にします。

https://elcomercio.pe/respuestas/chile/temblor-en-chile-hoy-en-vivo-ultimo-sismo-del-9-y-10-de-setiembre-magnitud-epicentro-profundidad-y-hora-reportados-centro-sismologico-nacional-tongoy-santiago-lbposting-cl-noticia/

これはペルー最大の新聞El Comercioの記事ですが、防災用の非常持ち出しリュックサックを準備するように呼び掛けているのが印象的です。

一方、1967年の地震で首都カラカスで大きな被害が発生したベネズエラでは、今回のモロッコ地震の事は何故か報じられていません。https://www.eluniversal.com/

大手新聞社がほぼ完全に独裁政権の管理下に置かれるようになったベネズエラの最大手新聞El Universal紙の最近の傾向は一面で大きく外国の災害や事故を取り上げることで国内の不満の目を外に向けようとしているので、モロッコの地震もさぞや連日一面トップになると思いきや、それが見つからないのです。穿った見方をすれば、当局はほぼ60年周期で発生すると言われているベネズエラの大地震の情報を持っていながら、全く対策を打っていないことから、モロッコの二の舞になることを懸念して敢えて報道を押さえているのかも、と思えてしまいます。

日本でも台風災害のニュースが度々ありますが、ともかく大切なのは憂いに備える意識を常に呼び掛けることでしょう。地震は起こらないとされるパラグアイですから、色々な建築物がかなり脆弱な工法で建てられています。しかし、災害はいつどこでどのような形で発生するか判りませんから、身の回りの危険を察知して備える心構えは忘れないようにしたいものです。

「9月17日発」

パラグアイの西端アスンシオンに居た時と、東端エステ市に来て大いに変わったのがクルマの汚れ具合。ブラジル国境に近いエステ市近辺は、ご覧の様に土が真っ赤で、この赤い土埃が雨の後等に付着してボディを汚すので、定期的な洗車は必須になっています。

この写真は今日のUltima Hora紙の電子版からとったもの。

https://www.ultimahora.com/la-racha-positiva-de-la-economia-apunta-a-continuar-segun-analistas

この記事のタイトルは”La racha positiva de la economía apunta a continuar, según analistas”(アナリストは好調な経済の継続を予想)というもので、パラグアイ経済が今後もこれまでの成長軌道を進み続け、今年のGDP成長率も4.5%程度となるとの明るい見通しであるとしています。因みに上の赤い大地の写真は屠畜工場新設の工事現場の様子のようです。赤い土は、かつでは鉄分が多過ぎて耕作には適さないなどと評されていましたが、今では大豆の栽培には適した土壌として、世界中への植物タンパクの供給に重要な役割を負っています。

ところでパラグアイ名物のボトルダンス(頭の上に何本もの瓶を載せて踊るもの)のギネス記録チャレンジが今晩アスンシオンの河岸公演La Costaneraで開かれ、500人を超える踊り手たち(Botelleras)が一斉に踊ることになるそうです。

このボトルダンス、熟練の踊り子さんは10本くらい載せても踊れるということで、本当に凄いのですが、その踊り手が5百人以上も集まるなんて。

何とも素晴らしい一続き、今夜が楽しみです。

最後にLa Nacion紙の社交欄に出ているClub Centenarioで開かれた社交デビューに関する記事。これは写真を添付するよりURLをクリックして頂いて実際の電子版をご覧いただくのが良いでしょう。

https://www.lanacion.com.py/gran-diario-domingo/2023/09/17/la-fiesta-de-debut-del-centenario-un-poema-de-rosas-y-hermosa-juventud/

Club Centenarioというのはパラグアイの上流社会の皆さんが集まるクラブで、このメンバーだけで国の富の半分以上を所有しているとも言われています。

密林を開墾して出てきた赤土を耕して大豆を栽培したり牧畜に活用し、そうした活動で得た富で民俗芸能を形成し、更に超富裕層がディズニープリンセスのように豪華な装いを競う国パラグアイ。成長のスピードは加速しています。

「9月24日発」

僅か一週間あまり前の15日朝、7℃という9月にしては珍しく低い温度を記録した翌週、最高気温は一気に30℃越えとなったものの、パラグアイ各地は猛烈な豪雨に見舞われたことで温度の上昇は抑えられました。しかし、南半球で春分の日となる21日以降の今週末はパラグアイ全国各地で9月としては異例な猛暑に見舞われ、首都アスンシオン近郊のルケ市からサンベルナルディノ市にかけては野火が発生したことが報じられています。

https://www.abc.com.py/nacionales/2023/09/24/dantesco-incendio-cerca-de-la-ruta-luque-sanber-arrasa-con-vegetacion/

この週末は多くの場所で40℃を超え、チャコ地方の中心地Mariscal Estigarribia市では43℃、首都アスンシオンでも39.8℃を記録し、2003年の最高記録を抜いて全国13都市で歴史上の最高気温となっています。

https://www.ultimahora.com/las-13-localidades-que-batieron-records-historicos-de-temperatura-maxima

https://www.lanacion.com.py/pais/2023/09/24/seguiran-los-dias-de-intenso-calor/

こんな暑さを乗り切るための食べ物として、カボチャやトマト、スイカやメロンを摂取することを推奨しています。

https://www.lanacion.com.py/estilodevida/2023/09/23/conoce-los-alimentos-que-ayudan-a-hidratar-durante-la-ola-de-calor/

今日日曜日は更なる酷暑が全国を襲うようで、シッカリと水分を摂って熱中症を避けることが必要とされています。

https://www.ultimahora.com/el-extremo-calor-continua-este-domingo-con-maximas-de-hasta-43-c

この暑い中、第11回のパラグアイ日系女性の会が開催されたというニュースも報じられています。女性が中心となって国を動かしてきたとも言われるパラグアイ、日本人女性の活躍も益々期待されます。

https://www.abc.com.py/sociales/2023/09/22/brindis-por-el-11-encuentro-mujeres-nikkei-del-paraguay/

以  上