2012 年にアジア経済研究所で立ち上げた「新しいブラジル」研究会での成果に、13 年6 月の民衆抗議デモの勃発による情勢急変を可能な限り取り入れて、社会科学系のブラジル専門家7 人がそれぞれの専門分野から分析した最新のブラジル解説。編者(アジア経済研究所副主任研究員)による序章−近代国家誕生からの軌跡、終章−各章の総括と躍動するブラジルの「新しさ」のほか、第1 章の民主化と現在進行形の政治改革(堀坂浩太郎上智大学名誉教授)では3権と中央・州・ムニシピオ間のパワーシェアリングなどを、第2 章の経済の新しい秩序と進歩(浜口伸明神戸大学教授、河合沙織神戸大学大学院)はインフレとの闘いと経済成長を、第3 章の環境変化に応じての新たな企業の三脚構造の関係(二宮康史アジア経済研究所副主任研究員)は市場開放政策にともなう企業環境変遷とルーラ政権以降の政府の役割の見直しを、第4 章では社会保障の整備と選別主義の試み(編者)は近年の社会変化と社会保障の普遍化を、第5 章は外交におけるグローバル・プレーヤーへの道(子安昭子神田外国語大学准教授)でカルドーゾ、ルーラ、ルセフ三代の政権の外交を比較し、第6 章の開発と持続可能性(小池洋一立命館大学教授)は、農業とアグリビジネス、バイオエネルギーと持続的開発を取り上げている。
いずれもこの十数年のブラジルの著しい変容の実態とその背景、課題と今後の展望を知る上で極めて示唆に富む分析である。
(近田 亮平編JETRO アジア経済研究所2013 年11 月211 頁2600 円+税)