1966 年からメキシコ研究に40 年間関わってきた著者(アジア経済研究所務の後高知大学ならびに中部大学教授)の長い研究成果の一端を集大成したもの。農地改革、各地でのエヒード(農地改革後に導入されたメキシコ独自の土地制度)とコムニダ・インディヘナ(先住民共同体)の調査によって、農村の実態や農業政策を分析している。それと合わせて1960 年代後半から2000 年代にかけて直面した様々な歴史的事件や政治経済変動をも観察して論じており、ある意味では主観的メキシコ論であると著者も述べている。メキシコ文化の一面を素描した7 本のコラム、参考文献、人名・地名・事項・欧文略号索引も付いていて、書名どおり“多面的”なメキシコ解説書になっている。
(石井 章明文書房2013 年10 月320 頁1600 円+税)