【季刊誌サンプル】ラテンアメリカ・カリブ地域におけるスタートアップの成長と IDBグループの取り組み - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】ラテンアメリカ・カリブ地域におけるスタートアップの成長と IDBグループの取り組み


【季刊誌サンプル】ラテンアメリカ・カリブ地域におけるスタートアップの成長と IDBグループの取り組み

竹内 登志崇(IDB Lab プリンシパル・アドバイザー)、中山 愛美(IDB Lab コンサルタント)、田中 秀治(IDBアジア事務所長)、笠井 萌里(IDB アジア事務所コンサルタント)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2023年秋号(No.1444)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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ラテンアメリカ・カリブ地域におけるスタートアップの成長と IDBグループの取り組み-竹内 登志崇(IDB Lab プリンシパル・アドバイザー)、中山 愛美(IDB Lab コンサルタント)、田中 秀治(IDBアジア事務所長)、笠井 萌里(IDB アジア事務所コンサルタント)

ラテンアメリカ・カリブ地域におけるスタートアップへの投資環境

ラテンアメリカ・カリブ地域におけるベンチャーキャピタル(VC)投資は過去着実に増加してきた。中でも、ソフトバンクグループが2019年に発表した「ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンド(LatAmファンド)」は、技術革新を促進する成長企業を投資対象とした50億米ドル規模のファンドとして一躍注目を集めたことは記憶に新しい。

その後は新型コロナウイルスの影響や世界的な高金利環境の影響もあり、世界の他地域同様、2021年をピークに投資額は減少したものの、同地域の経済規模や投資家によるポートフォリオ多様化の可能性に鑑みると、VC投資の拡大余地はなお大きい。本稿では、米州開発銀行(Inter-American Development Bank:IDB)グループの「イノベーション・ラボ」であるIDB Labによるスタートアップ等への支援状況を解説すると共に、改めてラテンアメリカ・カリブ海地域におけるスタートアップ等への関心を喚起したい。

ラテンアメリカのベンチャーキャピタル協会であるLAVCAのデータによると、同地域のVC投資は、2016~21年にかけて投資額、案件数ともに上昇傾向を辿った。2016年時点でVC投資額が約5億米ドル、案件数が197件であったが、ピークの2021年には同投資額が30倍超の160億米ドル、案件数は4.8倍の939件に到達した(なお、一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター[VEC]によると、2021年度の日本国内のVC及びCVC[コーポレートベンチャーキャピタル]による投資額は1米ドル120円換算で約23億米ドル、投資件数は延べ1569件と、一件当たりの投資額はラテンアメリカ地域と比較して小規模の傾向)。

翌2022年には世界的なパンデミックや金利上昇局面での投資家心理の変化もあり、全体の投資額は半減した(案件数は1148件に続伸)。レイターステージへの投資が一巡したタイミングで世界的な金融引締等が投資家心理の重しとなり、VC投資額が減少したが、これはグローバルに展開する大型VCファンドの投資戦略見直しによる影響が大きい。他方、シードステージ及びアーリーステージへの投資額は、これまでのラテンアメリカ・カリブ地域を本拠に活動するVCファンドの質的向上・量的拡大もあり、底堅く推移している。

国別にはブラジル、メキシコ、コロンビアへの投資が域内全体の約8割、セクター別ではフィンテックとプロップテックで約半分、これらにヘルステック、ロジスティックテック、並びにEコマースを加えると全体の約8割を占める。今後は、教育や農業などの開発分野においても、貧困・脆弱層の各種サービスへのアクセス改善、生産性の向上等に資する革新的な技術を持つスタートアップの活躍が一層期待されている。

ラテンアメリカ・カリブ地域ではこれまでの良好な投資環境を背景に、データ取得可能な2018年以降、54のスタートアップが評価額10億米ドルを超える未上場企業のユニコーンへと成長、うち36社は過去3年間に躍進した。例えば、コロンビアのユニコーン企業であるRappiは、消費者向けテック企業として域内でフードデリバリーサービスを展開している。

2019年には上述のソフトバンクLatAmファンドも同社に対し、10億米ドルの投資を発表するなど急成長を遂げている。その他、直近では、社員のウェルビーイングや保険プラットフォームを手掛けるHRテックのBetterflyが2022年にチリで2番目のユニコーン企業へと成長し、HRテック業界では域内最大の規模を誇っている。加えて、ブラジルにおいても個人向けに不動産等の担保付ローンの貸付を行うフィンテックのCreditasが、2020年末の評価額17.5億米ドルから22年には48億米ドルへと急速な成長を遂げている。このように、同地域では最近のリスクオフ環境においても着実に事業拡大を継続しているスタートアップが一定数存在していることが分かる。

IDB Labによるスタートアップへの支援概要

IDB Labはラテンアメリカ・カリブ地域の民間投資促進を図る目的で1993年に設立され(本部は米国ワ