『昭和は遠くなりにけり -沈みゆく太陽』 高橋 利己 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『昭和は遠くなりにけり -沈みゆく太陽』 高橋 利己


著者は昭和4年生まれ、明治大学法学部を卒業後外務省に入ったが陸上自衛隊に転じ6年間在職した後に外務省にあらためて入省、本省中南米移住局等のほかボリビア、ウルグアイ、グアテマラ、そしてキューバには二度在勤した。本書の前半の2/3は日本の建国史、昭和の戦前戦後の対米・韓外交等についての著者の所感・主張が述べられているが、120~192頁に外交官としてボリビアと一回目、二回目のキューバ在勤時の体験、見聞が詳しく書かれている。

1967年からのボリビアでは赴任、館内事情、在留邦人との付き合い等のほか、時あたかもゲバラがボリビアでゲリラ活動を行った時期であり、またボリビアの日系人の移住の経緯に触れている。キューバへは1979年に赴任したが、ペルー大使館へ亡命希望者が殺到し、ついにはカストロの判断で一時海外脱出を容認したことで生じた大量亡命の混乱を目の当たりにした。

1988年からの二回目のキューバ勤務では、キューバの一般市民の事情や海賊も関わるコロンブス到達後のカリブの歴史、カストロが昭和天皇崩御時に3日間にわたる公式服喪を命じたこと、対キューバODA援助の停滞、両国友好のシンボルとしての日本庭園建設に携わりその竣工式にカストロが出席し賞賛したことなどの思い出を語っている。

〔桜井 敏浩〕

(展転社 2023年9月 194頁 1,500円+税 ISBN978-4-88656-563-1)