【季刊誌サンプル】ルーラ第3期政権の1年を振り返る | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】ルーラ第3期政権の1年を振り返る


【季刊誌サンプル】ルーラ第3期政権の1年を振り返る

浜口 伸明(ラテンアメリカ協会 副会長、神戸大学 教授)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2023/24年冬号(No.1445)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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本特集は、2013年1月に政権に復帰して3期目を務めているブラジルのルーラ大統領が就任後1年を経過したことを踏まえて、現政権(ルーラⅢ)下のブラジルで起こっている変化を捉えようとしている。変化を2つの視点で捉えていきたい。第1に、直前のボルソナーロ政権との比較である。第2に、ルーラ氏が前に2期政権を務めた2003~2010年の期間(ルーラⅠ・Ⅱ)との比較である。

支持と不支持が拮抗するルーラⅢ
Datafolha社の調査1によると、前回任期満了により退任する直前の2010年9月にルーラ大統領は81%という圧倒的な支持(不支持率は3%)を得ていた。ただし、ルーラⅠ・Ⅱの初めからこれほど支持が高かったわけではない。ルーラⅠが発足して1年後の2003年12月時点の支持は41%、15%が不支持であった。2年目末の2004年12月でも支持と不支持がそれぞれ45%、13%と変化がなかった。PT(労働者党)首脳が主導した野党議員への買票贈賄(メンサロン事件)が表面化した2005年の12月は、支持が18%に急落し不支持が29%に上昇した。

ルーラ氏の支持率が上昇したのは2006年の大統領選挙で現副大統領のアルキミン氏(当時はPSDB[ブラジル社会民主党])に圧勝して再選を果たした後である。再選の勝因はボルサ・ファミリア(貧困家庭向け条件付現金給付)等を評価した低所得層からの得票にあったとされているが、マクロ経済状況の改善に後押しされて中所得層以上の生活も改善し、前述の通り国民の祝福を受けて2期目を終えた。

しかし、退任後のルーラ氏の運命は暗転した。石油公社と大手ゼネコンを舞台として組織的に巨額の裏金作りが行われたラヴァ・ジャット事件の首謀者としてパラナ州地裁から2審の有罪判決を受けて逮捕され、2018年4月に収監された。しかし、最高裁はパラナ州地裁にルーラ氏を裁く権限がないと判断して翌年11月に釈放を命じ、2021年3月に判決を無効にした。最高裁は、この嫌疑は連邦検察が捜査し最高裁判所で判断すべき事案という見解を示したのであり、ルーラ氏が無罪という判断をしていない。しかし、嫌疑を立証することは困難と見た連邦検察は動かなかった。この結果、ルーラ氏の政治的権利が回復し、大統領選挙への出馬が可能になった。

ルーラ氏は、2016年のルセーフ大統領弾劾に始まり、ルーラ氏自身を標的にした一部の独善的な司法の圧力、さらにボルソナーロ政権へと続いた、一連の右派による民主主義への攻撃により激化した社会対立の鎮静化を、2022年の選挙運動で訴えた。一方のボルソナーロ氏はルーラ氏が汚職にまみれていると印象づけ、反ルーラ感情を煽った。50.9%対49.1%という予想以上の激戦になった決選投票の結果からわかるように、ルーラⅢは国民の間で政治的意見が極めて分裂した逆風の中で発足した。

分裂社会を象徴するように、政権発足直後の2023年1月8日にボルソナーロ支持派の集団が連邦議会、大統領府、最高裁判所等の三権施設の破壊に及ぶ大規模な暴動が発生し、ブラジルの民主主義は深く傷