池田 健太(経済産業省通商政策局中南米室 総括補佐)
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ルーラ政権の経済・産業政策と、今後の日・ラテンアメリカにおける経済関係 協力強化の可能性 池田 健太(経産省通商政策局中南米室総括補佐)
ルーラ政権の経済運営方針(マニフェスト)
本稿では、ルーラ政権における経済・産業政策を中心に記載する。なお、本稿に関しては、政府の公式見解ではなく、個人的見解が含み得る点について、御留意いただきたい。
ルーラ大統領は、2022年6月、大統領選挙マニフェストとなる「国家再建・変革プログラム方針2023–2026」(表1参照)を発表し、「官民投資比率の向上、資金調達コストを低減させ、再工業化(新工業化)を推進する。加えて、環境、エネルギー、デジタル等のイノベーションに重点を置いた生産構造の強化と近代化を図る」と経済政策の方向性を打ち出した。2023年1月、ルーラ政権発足以降、左派政権という立場ではありながらも、国内(連邦政府、州政府等)の複雑な税制改革に着手し、自国産業の国際化やビジネス環境整備を実施するとともに、「低所得者層向けの現金給付(ボルサ・ファミリア)」による貧困格差是正対策や、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の目標値を定め財政均衡を目指す「新たな財政均衡策」を制定するなど、経済・財政政策及び構造改革の着実なる実施には一定の評価を得ている。
ルーラ政権始動(経済政策の舵取り)
ルーラ大統領の経済政策の一つとして、2023年8月11日、ブラジル政府は新たな経済・投資促進政策となる「New Growth Acceleration Program(Novo PAC、新経済成長加速プログラム)」を打ち出した。本プログラムは、第2期ルーラ政権時における第1次PAC(2007年~)、ルセーフ政権時における第2次PAC(2011年~)に次ぐ、第3期ルーラ政権時における第3次計画(2023~2026年)となっており、経済成長、インフラ投資による国内投資の拡大、雇用創出、所得増加、競争力強化、地域間及び貧困格