【季刊誌サンプル】ブラジルとメルコスール―域外交渉に係る関税同盟としての実態 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】ブラジルとメルコスール―域外交渉に係る関税同盟としての実態


【季刊誌サンプル】ブラジルとメルコスール―域外交渉に係る関税同盟としての実態

井上 和俊(在サンパウロ総領事館 専門調査員)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2023/24年冬号(No.1445)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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はじめに
南米南部共同市場(メルコスール)は、1991年3月にアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ及びウルグアイの4か国の間で署名され、同年10月に発効したアスンシオン条約によって設立された地域共同市場であり、1995年1月1日から4加盟国間の関税同盟が発足した。また、アスンシオン条約は、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)に加盟しメルコスール正式加盟国と貿易協定を締結していることを条件としてメルコスールへの準加盟を認めており、現時点でチリ、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、ペルー、スリナムの6か国が準加盟国として参加している。メルコスール正式加盟国の総GDPは約2兆6600億ドル、人口2億7200万人(出所:世銀2022年)を有する巨大市場であり、メルコスール加盟国の豊富な資源と地政学の観点から南米に着目するにあたって、メルコスール加盟国との連携は無視できず、日本を含めた域外国や地域機構がメルコスールとの協力深化を求めるべく貿易協定締結に向けた交渉に関心を示している。

特にブラジルはメルコスール加盟国の中でも最大規模の経済力を有していることから、ブラジルのメルコスールにおける立場や域外国との政治・経済的関係性は常に注目されている。ブラジルは2023年9月からメルコスール議長国を務めており、欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)交渉や、関税同盟としての実態に疑問を生じさせるウルグアイの個別交渉や環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)加盟申請に対して、議長国ブラジルのイニシアチブが今後のメルコスールの動向を理解する上で重要である。

12月7日にリオデジャネイロで開催されたメルコスール首脳会合において、シンガポールとのFTA調印と、ボリビアのメルコスール正式加盟が決定された。議長国ブラジルのイニシアチブによる決定でもあり、メルコスールにとって10年以上ぶりの協定になるメルコスール・シンガポールFTAは、アジア諸国との初めての協定であるため、メルコスール諸国とアジア地域との経済関係を強化するために重要な役割を果たす。また、ブラジルがボリビアの主要貿易相手国であることを鑑みると、同決定はブラジル企業にとって、雇用と貿易の機会を創出するだけでなく、インフラ投資の可能性が広がる等大きな恩恵をもたらすことになると予想される。このように議長国ブラジルが先導して、どのように今後のメルコスールの舵を取っていくかが注目される。

EUメルコスールFTA
現在、メルコスールは韓国、カナダ等先進国とのFTA交渉を進めているが、EUとのFTA締結を最優先事項として認識しており、その早期承認に向けた交渉を加速させている。2000年にEUとメルコスール間でFTA交渉が開始されてから20年以上の月日が経過し、2023年中にFTA締結を実現すべくEUとの対話を深化させてきたが、交渉が難航している旨が各種メディアで報じられている。2019年6月28日、欧州委員会とメルコスール4か国政府は、EUメルコスール間のFTAが政治合意に達したことを発表した。それから4年以上が経過した現在、未だ署名に至っていない状況である。それは、2023年3月にEUが追加文書を提示し、ブラジルを中心にメルコスール加盟国がその追加文書に難色を示していることがその1つの要因である。

もともと、EU側ではフランス、オーストリア、オランダが農業及び環境保護の観点からEUメルコスールFTA締結に抵抗を示しており、そのようなEU諸国の意見を組み込んだEU側が提示する森林伐採量削減等環境問題への課題対処等に係る追加条項に対して、メルコスール加盟国が難色を示していると報じられている。環境条項に係る追加条項に関して、既にEU諸国の他国に対する森林破壊に関する措置等に加えて、更にFTAに環境条項が含まれるため、メルコスール諸国が抵抗を示しているのである。また、EUが提示した政府調達条項に関しても、ブラジルの中小企業が政府調達に参画し利益を確保できる余地を残すために、この点についてもメルコスール加盟国として修正の必要性があるとの立場である旨報じられている。