2024-03-11 12:41:02
【演題】二年目のルーラ政権と最新のブラジル情勢と日伯関係
【講師】林 禎二氏 駐ブラジル日本国特命全権大使
【共催】ラテンアメリカ協会、日本ブラジル中央協会
【日時】2024年2月28日(水)10:00~11:30(日本時間)
【場所】リモート
【参加者】160名
林大使は以下の3点について、詳細な資料(別途協会ホームページに掲載)に基づき、分かり易く説明された。
1. ルーラ政権1年目の政権運営と成果:予想以上の成果に合格点を付けることが出来る。
- 2022年10月の大統領選決選投票では、ボルソナーロ前大統領と僅差で当選。ルーラ大統領の支持者は、北部・北東部居住者と貧困荘であり、南北格差・社会階層格差によって国内は二極化/二分化している。そのため、ルーラ政権は流動的な中道派の取り込みを図った。また、同政権は型破りな政策を採ることなく、選挙公約を守ろうとした(財政安定のための財政安定法案、労働法案提出せず、環境保全政策、先住民省・女性省の設立等。
- 2023年の経済成長率は予想を上回り、過去最高額の貿易黒字を達成した。
2. 2024年ルーラ政権の課題と注目点
- 2024年1月に「新産業計画」を発表し、製造業の育成を含めた今後10年間の新産業化政策の目標と2026年までのアクションプランを掲げた。
- ボルソナーロ前政権が国際的に孤立していたのに対して、国際社会への復帰をアピール。南米統合やアフリカとの関係強化を優先課題とするが、日本などで言われる「グローバル・サウス」(定義があいまい)といった言い方はブラジル国内では用いない。
- 気候変動政策はG20 の3本柱の一つであり、COP28(2023)で森林伐採撲滅を打ち出す。COP30(2025)をベレンで開催予定。
- 2024年10月の統一地方選挙はルーラ政権の評価を見るための重要な選挙。
- 30年以上の課題である税制改革;2023年12月に消費に関する税改革が実現(付加価値税の創設)。今後、所得に関する税の改革を予定。
- 温室効果ガス排出市場;2023年9月、炭素取引法案を提出。12月に下院を通過し、現在上院で審議中。
- 外交上の課題は、G20の様々な会議に議長国として臨むこと(2024)、およびCOP30を主催すること(2025)、そしてBRICS議長国。
3. 日伯関係の現状と見通し
- ブラジルは、日本にとって基本的価値観を共有する戦略的パートナー国である。
- 課題は日伯経済関係の再活性化であり、農業分野、再生可能エネルギー分野をはじめとする新たな投資機会に関し、JICAの海外投融資制度と共に駐ブラジル日本大使館として支援を行ってゆく。
講演の最後の質疑では、11月G20首脳会議を前に5月に岸田総理の訪伯の予定があると聞いているがどうか、原子力関係の協力の可能性はあるか、大使はサンフランシスコ川流域のペトロリーナを訪問されたと聞いているが、一大果物生産地となった同地域についてどのように思われたか、といった質問が出され、大使から丁寧にお答えいただいた。
<会員限定:資料・録画>
講演会資料「二年目のルーラ政権と最新のブラジル情勢と日伯関係」