講演会報告:山内 弘志氏 アルゼンチン駐箚特命全権大使「ミレイ新政権下のアルゼンチンの行方」2024年3月11日(月)10:45~12:00(日本時間) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告:山内 弘志氏 アルゼンチン駐箚特命全権大使「ミレイ新政権下のアルゼンチンの行方」2024年3月11日(月)10:45~12:00(日本時間)


【演題】ミレイ新政権下のアルゼンチンの行方
【共催】日亜経済委員会、日本アルゼンチン協会、ラテンアメリカ協会
【講師】山内 弘志氏 アルゼンチン駐箚特命全権大使
【日時】2024年3月11日(月)10:45~12:00
【場所】日本商工会議所 会議室
【参加者】47名

中南米大使会議のため一時帰国中の山内大使をお迎えして、久しぶりの対面形式による講演会が開催された。大使は資料(別途協会ホームページに掲載)に沿って昨年末に誕生したミレイ政権の現状と課題、日・亜関係について分かり易く説明された。

  • ミレイ大統領は既存の政党に属さず、伝統勢力とは一線を画す。自由市場主義(リバタリアン)を掲げ、「小さな政府」を目指し、実際にはマクリ政権の政策を踏襲する(マクリ政権時代の政策担当者を活用している)。
  • ミレイ政権は少数与党であるため、議会運営が困難。ショック療法的な「必要緊急大統領令(DNU)」やオムニバス法案を提出したが、野党の反対で取り下げた。しかし、めげずに近く新たな法案を議会に提出予定。
  • ・ミレイ政権は西側諸国と基本的価値を共有。米国・イスラエル寄りの外交(アルゼンチンにはユダヤ人が多く、ミレイ大統領はユダヤ教に改宗する可能性がある)。
  • ・共産主義、社会主義、集団主義には批判的であるが、実利主義的に対応(「一帯一路」は国益に資する限り有益と評価)。BRICS加盟は拒否(ブラジルを社会主義的と批判)。

現在のアルゼンチン経済

  • 2023年の干ばつにより農産品輸出が減少し、外貨準備が枯渇。公定レートの大幅切り下げにより、実勢レート(ブルーレート)とのギャップを縮小。
  • 大幅な通貨切り下げにより卸売物価・消費者物価ともに上昇したが、補助金削減等で需要を抑制し、経済に急ブレーキをかけた。
  • 経済・財政改革を一気に推進するので、当面は経済停滞が続く。
  • 鉱業活動は活発であり、新規投資が期待できる。
  • 政府費用の削減により、2024年1月には約10年ぶりに総合収支黒字を達成。
  • 日本企業の進出状況:2022年現在自動車関連を中心に72社。資源・エネルギー分野に関心を有する企業がある。
  • 貿易規制の変化:輸入管理システムを廃止し、BOPREAL(既存の輸入債務支払いのための中銀債)を導入したが、その効果については二次市場の形成がカギ。

ミレイ政権の行方(まとめ)

  • 強気の政権運営
  • 政権運営のカギは経済(国民がどこまで耐えてくれるか?)。
  • 西側諸国への強い期待。中国は、アルゼンチンを農産品の産地として関心を持つ。
  • 日本との関係:経済的な相互補完関係と良好な対日感情。
  • インフラの欠如が最大の課題。他に治安、麻薬問題(ラテンアメリカ全域の問題でもある)

講演後の質疑では、ミレイ政権の外資政策、日本はミレイ政権に何を期待できるか、BOPREAL以外の外貨政策、チリとの関係、大きな権限を有する労働組合について、日本との関係での民間の文化交流について、インフレ対策としての需要減について(供給増ではないか?)等、多くの質問が出され、大使から丁寧にお答えいただいた。

講演会資料(会員限定)
講演会報告:山内 弘志氏 アルゼンチン駐箚特命全権大使「ミレイ新政権下のアルゼンチンの行方」