【演 題】JICA中南米2所長報告会
・アルゼンチンにおけるJICA事業の取り組み
・JICAエルサルバドル事務所長報告会
【講 師】
武田 浩幸氏 JICAアルゼンチン支所所長
小園 勝氏 JICAエルサルバドル事務所所長
【日 時】2024年2月29日(木)10:00~11:40(日本時間)
【場 所】リモート
【参加者】72名
アルゼンチンでの勤務が10年におよぶ武田所長は、アルゼンチンを「第2の故郷」とされている。講演では昨年末に発足したミレイ新政権について、選挙の際の過激な発言がどのような政策となって表れ、また実施に当たって多くの課題に直面していることを詳しくお話しいただいた。経済学者であるミレイ大統領は、「財政の健全化によるインフレ抑制と貧困削減」のため、300項目以上の法改正や規制緩和を盛り込んだメガ必要緊急大統領令(DNU)を公布し、「劇薬」ともいえる「オムニバス法案」を国会に提出したが、議会を通らず、現状政権運営が難航している。
日本の対アルゼンチン協力に際しては、「日本ブランドの普及」と「日本の高度な科学技術による研究協力」を通じた知識・価値観の推進、を重視している。日本ブランドの普及では、①「カイゼン」プロジェクト、➁一村一品(OVOP)プロジェクトを、「科学技術協力」では、「気象災害に脆弱な人口密集地域のための数値天気予報と防災情報提供システムプロジェクト」を実施している。
武田所長は最後に、アルゼンチンは「開発協力において重要な日本のパートナー」であり、研究機関は技術力が高く「共同研究パートナー」となり、WIN‐WINの関係を築ける、との思いを語られた。
小園所長は、2期目に入ったブケレ政権の高支持率の背景と内容について詳しく話された。一期目のブケレ大統領は少数与党の下で、立法、司法、メディアと対立しながら、COVID-19対策で成果を挙げ、21年2月の立法議会選挙で大勝した。ブケレ政権は、ブランドイメージを用いたメディア戦略、憲法を制限してまで導入した例外措置体制による治安対策、国家デジタルアジェンダを通してのDX推進、夫人主導による教育・保健政策、インフラ推進、デフォルトリスクを切り抜けた財政・金融政策、中央集権化等の行政組織の刷新、等々多くの政策を次々に打ち出した。これらの中には、中米ロジスティクス開発マスタープラン、エルサルバドル病院における集中治療能力強化、地方行政能力強化と一村一品運動等、JICA事業と関連のある政策も含まれる。
治安対策を始めとして成果を挙げたブケレ大統領は、2024年2月の大統領選挙で圧勝した。JICAはエルサルバドルにおける今後の事業の方向性として、教育分野、保健分野、インフラ整備、DXを掲げている。
武田、小園両所長は詳細な資料に基づいてお話されたが、説明資料は別途協会ホームページに掲載する。講演後の質疑では、アルゼンチンについてミッショネス州の環境、エルサルバドルについて無償資金協力についての質問が出された。
<会員限定:資料・録画>
講演会資料:JICA中南米2所長(武田浩幸アルゼンチン支所所長、小園勝エルサルバドル事務所長)