【季刊誌サンプル】旧英領カリブの自立への道程―歴史と注目すべき新しさ - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】旧英領カリブの自立への道程―歴史と注目すべき新しさ


【季刊誌サンプル】旧英領カリブの自立への道程―歴史と注目すべき新しさ

堀内 真由美(愛知教育大学 准教授)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2024年春号(No.1446)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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旧英領カリブの自立への道程 ―歴史と注目すべき新しさ 堀内 真由美(愛知教育大学准教授)

本稿では、カリブ諸国の中でも旧英領カリブ(現英連邦カリブ)の成立と自立への道程を振り返るとともに、独立前後の1960年代以降に展開された女たちによる政治・社会運動を通して、この海域が多様性を尊重する新しい社会構築に貢献してきたことを紹介する。

旧英領カリブの現在

新型コロナウィルス感染症の世界的大流行が一段落した2023年5月、新英国王チャールズの戴冠式が挙行された。その前後の新聞記事には、バルバドスの共和制移行のほか、ジャマイカが立憲君主制から共和制への移行を目指していること、アンディグア・バーブーダの両首相も王室離脱に言及したことが報じられた。旧宗主国の新国王登場を契機に、馴染みの薄かった旧英領カリブの島々の名が日本の人々の目に触れることとなった。

現在、英連邦カリブには、12の独立国(アンティグア・バーブーダ、バハマ、バルバドス、ベリーズ、ドミニカ国、グレナダ、ガイアナ、ジャマイカ、セントクリストファー・ネービス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、トリニダード・トバゴ)と6つの未独立地域(アンギラ、モンセラット、バーミューダ諸島、ヴァージン諸島、ケイマン諸島、タークス・カイコス諸島)がある。島々に加えラテンアメリカ(中南米)の陸地に位置する国々も含む英連邦カリブは、地理的にも広大な範囲に及んでいることがわかる。

英領カリブの始まり
―大アンティル諸島と小アンティル諸島

15世紀末コロンブスによる新大陸の「発見」以来、ヨーロッパによる現在の中南米及びカリブ海域への探検が進む。カリブ海に限ってみれば、現在のキューバ、ハイチ、ドミニカ共和国、ジャマイカなどで構成される大アンティル諸島は、初期のスペイン帝国の中心地だった。少し遅れて、イギリスによるこの海域への進出が始まる。イギリスは17世紀半ばにジャマイカを征服し、1670年にマドリード条約で正式に領有を認められた。ジャマイカは、大アンティル諸島内で面積では最小ながらも、砂糖プランテーションが次々と開発され18世紀にはイギリスに最も富をもたらす島となる。同時に、自前では奴隷を確保できないスペイン領への奴隷貿易の拠点としても繁栄を享受していく。

一方の小アンティル諸島は、現在、東カリブとも呼ばれる。ヴァージン諸島から南東に弧を描くように南米ベネズエラ沖に浮かぶトリニダード島まで続く島々である。現在の区分ではさらに南北に分けられており、小アンティル諸島の中央に浮かぶドミニカ島(日本では現在「ドミニカ国」とも表記)の北側をリーワード諸島、南をウィンドワード諸島と呼ぶ。先にこの島々に到達していたスペイン人は、これら小島には関心を持たずに放置していた。そのため小アンティル諸島にスペインの影響は薄く、17世紀初頭から進出していたイギリス、フランス、オランダの影響が、現在も建築物や言語分野などに色濃く残っている。

イギリスは、リーワード諸島セントクリストファー島から植民活動を開始し、同島を起点に1630年はじめには南のアンティグアとモンセラットに植民した。一方、同時代のライバル、フランスも、リーワード諸島最南端のグアドループ島、ウィンドワード諸島のドミニカ島とマルティニーク島、さらに南のセントルシア島、セントビンセント島、グレナダ島に進出した。だがこれらのフランス領は、グアドループ島とマルティニーク島を除いて、七年戦争後の1763年、イギリスに割譲された。同じように、ウィンドワード諸島の最南端、現在のトリニダード・トバゴも、最終的にはフランス革命戦争期に、イギリスがトリニダード島とトバゴ島の両方をフランスから奪取する。

白人入植者、先住民、アフリカ奴隷

英領カリブに白人入植者が増えるにつれ、先住民カリブ人(カリブ族またはカリナゴ族とも表記されるが本稿では「人」を使用)との関係が悪化する。白人入