【季刊誌サンプル】カリブ諸国のリーダーを自認するジャマイカ - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】カリブ諸国のリーダーを自認するジャマイカ


【季刊誌サンプル】カリブ諸国のリーダーを自認するジャマイカ

中村 建(在ジャマイカ大使館 参事官)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2024年春号(No.1446)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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カリブ諸国のリーダーを自認するジャマイカ 中村 建(在ジャマイカ大使館参事官)

はじめに
ジャマイカは、人口300万人足らずの小さな島国である。そのようなジャマイカが、カリブ地域の14か国からなるカリブ共同体(CARICOM:カリコム)でリーダーを自認し、実際リーダーであるかのように振る舞っている。

本稿では、なぜそのような小国であるジャマイカがカリコムのリーダーとして振る舞っているのかにつき、ジャマイカの政治・経済の現在の状況、及び外交面での実績との側面から見ていきたい。またそのようなジャマイカと、日本はどのように関わっていくべきか、考えてみたい。

ジャマイカのカリブでの立ち位置
ジャマイカは、1973年にカリコムが設立された際の原加盟国4か国の内の1か国である(他はバルバドス、ガイアナ、トリニダート・トバゴ)。人口規模は282万7000人(2022年、世銀データ)で、カリコムメンバー国14か国中、ハイチに次ぎ第2位となっている。また一人当たりGDPでは、ジャマイカは6047米ドルであり、14か国中12位(より下位の国はスリナムが5858米ドル、ハイチが1743米ドル、世銀データ)。

政体としては、カリコム加盟国中、ジャマイカを含む12か国は英連邦加盟国である。またジャマイカは英連邦の一員として立憲君主制を維持しているが、バルバドス、ドミニカ国、ガイアナ、トリニダード・トバゴ、ハイチ、スリナムが立憲共和制を採用している。

カリコム加盟国間には、文化的・社会的多様性が存在しているが、カリコムは経済統合を目指し、自然災害や地球温暖化の影響の受けやすさ等の小島嶼国特有の脆弱性の克服や持続的発展といった共通の課題に対し協調して取り組んでいる。またパレスチナ問題といった国際社会の課題に対しても、可能な限り共同歩調をとる姿勢が見られる。

政権の行方と共和制への移行
2024年2月26日、本来2020年に行われる予定であった地方選挙が、数回にわたる延期の末、ようやく実施された。

政権与党のジャマイカ労働党(JLP)としては、選挙に勝てるタイミングを見計らっていたものと思われるが、2025年の総選挙を前に、地方選挙を実施せざるを得ないタイミングで行われ、全13県及び1市で争われた選挙の結果、JLPが獲得したのは7県、野党の人民国民党(PNP)は6県1市(セント・アンドリュー県及びキングストン市は一つの選挙区として扱われており、JLP、PNPとも同数の獲得議席数であったが、Popular Voteの結果、PNPが勝利した)との結果となり、「勝者のいない選挙」となった。

2016年に政権を奪取して以降、JLP党首のホルネス首相は2期にわたり安定的に政権を運営しており、2020年9月の前回総選挙では、JLPは63議席中49議席を獲得し、圧勝した。今回の地方選挙でも、JLPの勝利を予想する意見も見られたが、JLPとPNPの拮抗状態を予想する選挙前の世論調査が示していたとおりの結果となった(ただし、改選議席数228議席の内、JLPは113議席、PNPは115議席を獲得しており、PNPがわずかながらリードしている)。

今回の地方選挙は、2025年に行われる総選挙の結果を占うものと考えられているところ、今後現政権がジャマイカが抱える最大の課題であ