『ペルーから日本へのデカセギ30年史』 “Peruanos en Japόn, pasado y presente” - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ペルーから日本へのデカセギ30年史』 “Peruanos en Japόn, pasado y presente”


ペルー等南米日系人の日本での就労は1998年の入管法改正以降爆発的に増加し、その後リーマンショックで職を失い帰国を促されることもあったこの30年間の日本へのデカセギについては、当事者の経験を基にした小説や論考等が幾つか出ているが、本書はその全体像を描こうと7人の実務者、研究者、メディアライターが執筆し、しかも日本語版とスペイン語版の両方で収録された画期的な構成になっている。
第1章は栃木県真岡市でのデカセギ30年史をハイメ・タカシ・タカハシ(派遣会社で通訳や同市の国際交流協会に勤務)、第2章はリマからデカセギに来て日本に定住している在日ペルー人の経験をエドゥアルド・アサト(日本のスペイン語メディア寄稿者)、第3章在日ペルー人の仕事の変遷をデータ分析を交えて論じた樋口直人(早稲田大学教授)、第4章日本のペルー人アソシエーションの変遷の過去と未来を小波津ホセ(獨協大学講師)、第5章「奇跡の主」の祭りからみる在留ペルー人の信仰をオチャンテ・村井・ロサ・メルデデス(桃山学院教育大学准教授)、第6章在留資格がないペルー人たちを稲葉奈々子(上智大学教授)、第7章父の人生を辿り父の日本での夢をオチャンテ・カルロス(奈良学園大学講師)がそれぞれ執筆している。
各論では在日ペルー人コミュニティ内部からの視点が、デカセギ者自身の体験、就業の経験、長くデカセギについて研究してきた成果からよく描かれており、日本人にも南米出身者等スペイン語話者にも理解できる画期的移民史。

〔桜井 敏浩〕

(ハイメ・タカシ・タカハシ、エドゥアルド・アサト、樋口 直人、小波津 ホセ、オチャンテ・村井・ロサ・メルセデス、稲葉 奈々子、オチャンテ・カルロス インパクト出版会 2024年2月 352頁(日本語187頁+スペイン語165頁) 3,200円+税 ISBN978-4-7554-0345-3 )
〔『ラテンアメリカ時報』2024年春号(No.1446)より〕