『構造人類学ゼロ』 クロード・レヴィ=ストロース - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『構造人類学ゼロ』  クロード・レヴィ=ストロース


 世界的なフランスの社会人類学者として名高いレヴィ=ストロース(1908~2009年)は、アマゾン奥地のインディオたちを調査し、それとの出会いを綴った名著『悲しき熱帯』(中央公論社)を1955年に出したが、本書はその3年後に刊行された1940年代に書かれた研究論文、評論、調査報告等を集成したもので、構造人類学を確立する前の前史ということからこの書名が付けられた。
 南米のナンビクワラ族という名称についての考察、インディオにおける戦争と交易、ブラジルのマト・グロッソ州の未開部族における首長権力社会的および心理学的側面、未開社会の部族間外交政策、描画や化粧、インディオ間の親族語彙の社会的用法、部族に狩猟・最終者と初期農耕者の双分組織、幾つかの部族の歴史、分布、文化、生業、衣服、手工芸、社会・政治組織、呪術と宗教、民話・伝承など、人類学者として成長する過程での研究成果の数々が収録されている。

〔桜井 敏浩〕

(佐久間寛監訳、小川了・柳沢史明訳 中央公論新社 2023年8月 352頁 4,000円+税 ISBN978-4-12-005688-8 )
 〔『ラテンアメリカ時報』2024年春号(No.1446)より〕