連載エッセイ346:ピーター藤尾「チリの風」その25 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ346:ピーター藤尾「チリの風」その25


連載エッセイ346

「チリの風」その25

執筆者:ピーター藤尾(在サンテイアゴ)

「2024年4月1日~7日」
「政治」
1)ボリッチ動向

地下鉄6号線の路線延長の式に参加しました。政治的なことより彼には向いているかもしれませんね。
2)レコレタ区長問題

同区長ハヅェが考えだした人民薬局に関する不正が明らかになってきて、彼を裁判時から刑務所に収容しようとする動きが出ています。彼は「自分は無実だ。選挙が近づくとこうした事件をでっちあげるのがいる」とクレームしています。彼は敵の右翼より仲間の政府や新左翼を批判しているようです???新聞に共産党の危機と書かれました。

選挙が近づくとこうした話題が溢れますね。

プロビデンシア区の区長マテイは再選を狙わず大統領選挙に懸けるとか。右翼の候補者のトップ候補です。

「経済」
1)銅価格と為替

銅の価格は木曜日1ポンド4.2ドルと最近の1年間で最高値を記録しました。金曜日少し下がりましたが、4.17ドルでした。このため為替はペソが強くなり1000ペソが近いと言われていましたが、942ペソで閉めました。中国の経済危機が連日報道されますが、それでも銅の値段が上がるのですね。不思議です。

2)中銀の動き

中銀は金利を下げ6.5%にしました。1年ほど前、11%と言う時期もあったのですが。

それから今年のGDPは2-3%と今までの予想から少し上げました。1月は2.5%、2月は4.5%と最近では珍しい良い数字でした。さらにインフレの予想は3%とか。

さて株式市場IPSAの動きは順調で2週間前に出た新記録とほとんど同じくらいの6512ポイントを記録しました。どの会社の株価が上がっている・下がっているとか動きの量が

多いのはどこかとか発表されていますが、チリ経済全般の動きは分かっても細かい動きを理解するのは難しいです。株式市場の中心の120社の中で3分の1が、これからチリの発展に関わる重要事項は社会経済状況としました。政治経済の安定が無ければ企業の発展はないですね。4年前の社会騒乱がすべてを崩していったのですね。

財務大臣マルセルは今年のチリ経済は順調で来年はさらに上向くと発表しました。さぁどうなるかな?12-2月の失業率は8.5%でしたが、その間の就業者数は28万人にもなりこの2年で最大だとか。

3)中国の動き

最近、話題になった中国企業の案件としてサーモンとリチウムが取り上げられました。駐チリ中国大使の牛情抱は「中国企業がチリで多くの問題を抱えているとは思わない。中国企業がチリで運営していく権利を守るのは私の最重要項目だ」とコメントしています。彼は先月に南のサーモン工場を見学し、環境汚染などを無視した問題会社がどう進んでいくかについてチリと中国の会社の紛争を無視したように振舞ったとされています。
所でワチパトの件は政府はこのまま工場閉鎖を見過ごすのか、関税を上げて中国品のチリ席巻をさせないかの選択が発表されていません。国会での議論も報道されません。チリ共産党は中国と良い関係を維持しているため、この問題に関し、チリ側が特別関税を設置するのを抑えようとしているらしい。中国品の性能はかなり低いと言われますが、それがチリの製品の材料に使われればどうなるでしょう。それほど悪くはないかな?

「一般」
1)犯罪

主に外人組織の犯罪グループの取り調べが大きく進み、首都圏の17地区で100か所以上の家が捜索され数十名が逮捕されました。これを継続すればチリ国内の混乱が軽減するのではないでしょうか。
それからロ・バジェド-ル市場はこの月曜日からチリの身分証明書を見せなければ市場の中に入れなくなりました。もっと大きい中央市場も同じ条件を使用することになりそうとか。チリのイメージは今までと大きく変わりますね。        以   上

「2024年4月8日~14日」
「政治」
1)ボリッチ動向

モネダ宮殿の広報では、今週もいろいろ行事があったようですが、役に立つとか注目したいと思わせることはありません。先日から話題になっているワチパト製鉄所の問題で、南からその代表団がサンティアゴに入り、モネダ宮殿の前で抗議行動をしました。経済大臣・労働大臣などは宮殿から外に出ましたが、ボリッチは無視しました。

ベネスエラ問題

チリ警察大尉のサンチェスがベネスエラ人グループに殺されました。4人グループの内の3人は逮捕されました。捕まった犯人は連行されるときニコニコ笑っていました??

ベネスエラの麻薬組織「アラグアの汽車」がチリで派手に行動していますが、それに関しベネスエラ外務大臣が「そんな組織はない。我が国を陥れようとするチリの動きが不可解だ」としました。それから先日、同国の元軍人がチリで殺された件に関し、チリの検察官が、その殺人事件はベネスエラが関与しているのは間違いないとしました。その犯人はベネスエラに帰国したようなのでベネスエラ政府に協力依頼をしているとか。
ボリッチはベネスエラのチリ大使を呼び戻しました。もちろんそれはベネスエラ政府への警告でしょうね。それでも近日中にベネスエラに戻すらしい。右翼はボリッチにベネスエラと通常の関係を持てるわけはないから断交すべしと批判しています。もっともチリの共産党はそうした麻薬組織はどこの国にもあり、それを国と国との関係に悪く利用するのは間違っているとしています。しかし与党の中でもベネスエラとの国交をどう進めるか二つの意見に分かれ混乱です。そしてチリに入った不法移民の数はピニェラの時代よりボリッチの方が多いと言われます。ボリッチは国境警備に手を抜いているのでしょうか。

ところでイランがイスラエルを攻撃し始めたようですが、その攻撃部隊のヒスボラとチリが連携していると言うニュースがあります。もし真実ならボリッチは反米を明白にする

わけですね。この決断は大事件です。しばらくの間、彼は安眠できないのでは?
ところで先の大統領選挙でボリッチと争った共和党のカストは中米エル・サルバドールを訪問し、そこのブケレ大統領が建設した超大刑務所を訪問しました。次に彼が大統領になれば同じようなものをチリに建設するのでしょうか。
キトのメキシコ大使館にエクアドル軍隊が入り問題になっています。メキシコはエクアドルと断交を宣言しましたが、その時、メキシコ大統領は「ピノチェットでも他国の大使館に乱入することは考えなかっただろう」とコメントしました。ピノチェットのイメージはまだ他国にも残っているのですね。

2)地方選挙

年末の地方選挙の話題がこれから毎週出ますが、与野党ともに候補者選定についてグループ内での合意事項が出来たようです。野党が統一候補で、与党が3名も候補者を出せば野党側が勝つのは明白でしょうね。野党側の「チリ・バモス」グループは州知事で2名、市長・区長で20名を最終候補者として任命しました。

「経済」
1)銅価格と為替
1ポンド4.27ドルと過去22か月で最高の値段が出ました。中国の景気回復とか言われますが、本当でしょうか?それより戦争が近づいているので金・銅・原油の価格が上がっているのではないでしょうね?ガソリン価格が今週、約30ペソほど上がりました。さて3月の物価上昇率は0.4%、過去1年で3.7%とかなり落ち着いてきています。ところで銅の生産ですが、2月の数字はエスコンは9.8万トンと前年対比34%の上昇、コジャワシは4.5万トンと25%アップ、このように民間企業が絶好調なのにコデルコは10.4万トンで1.6%のマイナスとか。どうして?

2)IPS株式市場
今週また6705ポイントと新記録が出ました。誰がそんなに熱狂的に株を購入しているのでしょう?今年の経済成長率の予想は当初より少し上昇していますが、2025年は更に好調になると見られています。2-2.5%の予想ですが、それがさらに上向くか可能性があるとされるわけです。それに関して今年の投資額は決定済みだが、来年分はまだ余裕がありこの時期の動きがそれを決定することになるとされています。当然でしょうね。

3)新車の販売
3月の新車の販売台数は23525台で前年対比37%の減少でした。そしてその傾向は20か月連続です。売れ行きの良いブランドはトヨタ、シボレーそしてキアでした。

4)ワインの生産
日本のワイン輸入量は2.3位がスペイン・フランスと欧州勢ですが、1位は南米のチリでした。

「一般」

1)犯罪

家族が家で 休んでいるところに強盗グループが入り込み、乱暴狼藉し、物品・車を奪って逃げる事件が毎週のようにあります。その車を追いかけた家主が車にひかれる事件も

ありました。犯罪の抑制はほとんど進んでいません。ランカグア市長が汚職問題で裁判になっており、判決が出る前から刑務所に収容されました。彼は以前、UDI党党員でしたが、辞任しています。右翼左翼も同じですね。新左翼の政府資金不正使用事件は発覚してからもう何か月もたっていますが、結論は出ません。その新左翼グル-プが次の選挙で激減すれば社会は変わるでしょう。

「2024年4月15日~21日」
「政治」
1)ボリッチ動向

全国を回って、いろんな行事に参加しています。しかし新聞に主要企業の多くの代表がチリの現状は経済の成長に足かせになっているとしているが、政府はそれを不愉快に思うのではなく、問題点の解消・改善を図っていくべきだろうとする記事が掲載されました。私はその通りだと思います。さらに78%の企業は今年に用意されていた投資を中止・延期すると発表しています。

2)共産党の動き

国会の上院議長に共産党議員がなりました。私は見る目がないですね。共産党議員のカリオラが選ばれると思いませんでした。副議長になった議員は新左翼ですが、彼が秘密をばらしました。大統領府長官のエリサルデが 彼の所に来て、新左翼が議長に共産党員を推すようにしてほしい。その場合は副議長に新左翼の君を選びたい。結果は何と76対75のわずか1票の得票差でカリオラが選ばれました。右翼左翼に属さない独立派の議員の投票がこの場合のキーになったとか。
野党側はかんかんですね。政府と議会は独立した組織で口をはさむのは許されないとしています。確かに新聞にこうした問題を解決・軽減するために政治組織の改編をすべきだ

とのコメントがでましたが、各組織は自分の勢力以外を見る目は無いのですね。

ところで、そのエリサルデは経営者にチリの将来に関して、右翼・左翼の政治的感覚を入れないで判断してもらいたいとコメントしました。
それから共産党員でレコレタ区長のハズエは不正問題で裁判になっています。その彼がベネスエラ政府に招待され、出国しようとしましたが、それが司法から拒否されました。彼の弁護士がかんかんになってクレームしていますが、まさか彼はベネスエラに出てそのままそこに永住するつもりではなかったでしょうね。ところでチリ政府はベネスエラ人で強制送還になった囚人を5月の始めにその母国に送りますが、その便の到着を同政府は認証したとか。ボリッチとマドウロはその内、ビデオ面談をするでしょう。チリにはベネスエラからの移民が100万人を超えていると言われます。

3)外交

アルゼンチンの外相がチリ北部のイキケを訪問し、そこでイランに応援されているテロ組織ヒズボラがここで活動していると発表しました。ボリッチはそれを否定し、同政府に

クレームしました。アメリカの議員が同じようなことをコメントしているので、何か根拠があるのでしょう。チリの私服警察PDIはチリにそんな組織は存在しないとしています。

その後、アルゼンチン政府はそれは間違いだったと謝罪しました???その発言の根拠がそのうち発表されるでしょう。
ボリッチは大統領についた時、外交を重要項目とし、頻繁に諸国を訪問しました。チリをラテンアメリカの新しい中心にしたいとしたわけです。しかし彼の動きは全く評価されず逆に混沌とした状況に陥っているように見られます。

「経済」

1)銅価格と為替

銅の価格は1ポンド4.42ドルと異常な高さになりました。供給難とAI需要がその原因と言われますが通常ではないですね。しかし不思議なのは銅価格が上がると普通チリペソも強くなるのですが、今週は逆で1ドル958ペソと先週よりペソ安になっています。
それから製鉄産業で中国品がチリに流入し、ワチパト製鉄が倒産する危機にありますが、その状況はチリだけでなく世界各地で起きているようですね。そのためチリでは中国品に25%の特別関税をかけることになりそうで、倒産が避けられるように思われます。ボリッチは中国よりチリを優先したのかな?その特別関税の詳細は分かりませんが、今夜のテレビのニュースでそれを喜ぶ製鉄関係者が報道されました。

2)最低賃金

CUT中央労働者連合はボリッチ政権中に63万ペソまで上げるよう要求を出しました。これが通ると中小企業の財政に瞬時に影響しますから。失業者数の増加が心配されます。
そこは共産党系が組織の中心を占めています。

「一般」

1)ホームレスの増加

現在、チリには21200人ほどのホームレスがいるとか。前年より6%の増加ですが、コロナ問題の前の2017年と比較すると2倍になっています。これから冬が近づくと首都圏でも最低気温は零度になるわけで、ホームレスの人には厳しい環境です。
2)犯罪

麻薬組織ツリニタリオはドミニカ共和国から来た組織ですが、サンティアゴに根を張って活動しています。今週、そこに手が入って組織の基盤が揺らいでいます。そのまま組織が崩壊するまで警察の攻撃が継続してほしいですね。          以  上

「2024年4月22日~28日」

「政治」
1)ボリッチ動向

ボリッチは経営者連盟総会ICAREに参加し、皆さんの関心のある点はよく認識しています。社会の安定が経済の発展につながるように政治を進めていきますとコメントしました。それに関し、新聞に彼の論調と経営者の感覚には大きな差があるとされました。
彼と先の大統領選挙を争ったカストはハンガリーの国際会議に出席しました。そこでボリッチについて、チリの大統領は知識経験のない40歳にもならない若手だがとにかくひどい政治をしていると厳しく批判しました。なんでもボリッチは自宅から警察の警護を受けながら自転車で職場のモネダ宮殿に行くが、勤務時間を守らず、遅れて着いたり、早く帰ったり、ひどいときは家から出ないとか。どこまで本当か分かりませんが、好き勝手に働いているのでしょうか?

2)地方選挙

後、半年に迫ってきましたが、首都圏の有名な区、例えばプロビデンシア、ラス・コンデスそしてサンティアゴなどでは左右の同じ勢力の争いが治まり左右の激突が起きる雰囲気になっています。その選挙に参加するべく政府首脳の何人かが現職を辞任する用意をしているとか。大臣とか理事とか部長クラスの人でしょうか?

「経済」
1)銅価格と為替

もうかなり前から私にはわからない状況になっていますが、今週も銅価格は1ポンド4.48ドルと2年ぶりの高値で、留まるところが分からないように上がっています。需要供給の差がそれだけあるのですか? チリにとっては最高の情勢ですが。このため為替ではチリペソは1ドル949ペソとペソ高になりました。

2)労働時間
1週間の労働時間がこの金曜日から44時間になりました。2028年から40時間になるとか。しかし不思議ですね、私が会社員をしていた昔でも40時間でしたが???

「一般」
1)犯罪

先日、サンティアゴで警官を殺したベネスエラ人の4人グループの中で、一人だけ逃亡していた犯人がコロンビアで逮捕され、チリに送られることになりました。その犯人はチリを逃げてからボリビア、ペルー、エクアドルと通過してコロンビアに入り、母国までもう一歩のところで捕まりました。彼は偽のパスポートで各国を正常に出入国したのか、イミグレを通らずに不正入国していたのかまだ分かっていません。チリ国内で活動する最も大きな麻薬組織はベネスエラの「アラグアの汽車」ですが、その犯人はそこに属していたのではと思われます。
マプチェ問題

マプチェのグループCAMのリーダーのジャイツルが裁判で検察から25年の刑を要求されました。それを受けて同地区の会社が襲われ、10数台のトラックが燃やされました。

有罪が決まれば、その犯行はさらに増加するでしょうね。そんな状況下で、何と土曜日に警官3名が乗った車がビオビオ州のカニェテで襲われ、全員が殺されました。マプチェの犯行宣言は出ていませんが、彼らの攻撃でしょうか。犯人と思われるのが逮捕されました。来週に詳しいことが分かります。
ボリッチは多くの大臣・次官を連れてビオビオ州に行きました。社会の安全が最重要事項と言われますが、ボリッチは何も手を打てないようです。土曜・日曜は朝から晩までこの事件に関するニュースが続きました。

警察長官

長官のジャネスは数年前の社会騒乱の時のデモ隊への虐待で問題になっていますが、来月その職を辞任するとか。裁判になるのでしょうか?

以  上