連載エッセイ351:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町 から」その24 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ351:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町 から」その24


連載エッセイ351

南米コロンビア・雲と星が近い町から その24
一時帰国で感じた日本とコロンビアの差・違い

執筆者:新井賢一(Andes Tours Colombia代表、ボゴタ在住))

先日一時帰国をしました。前回の一時帰国の時と比較してまず明らかに異なったのは外国人観光客の数です。私は羽田空港へ到着したのですが、入国審査場・そして荷物受け取りのターンテーブルにいた外国人入国者の数が前回から一年未満でとんでもない数になっていました。昨今日本を訪れる外国人観光客の数が激増している事は勿論知っていた上でそのすごさを実感しました。

そして私にとって前回とは確実に違ったのが「円安」です。今回の一時帰国で手持ちの米ドルを日本円に両替した上で滞在中の買い出しや食事その他に一部充てた為、頭の中では米ドルで換算していました。それで考えると「牛丼並が3ドル!」「100金ショップの品々が0.7ドル!」「自宅までの電車代がたったの8ドル!」と色々驚く事ばかりでした。そんな事もありましたので日本とコロンビアの差・違いを一部の項目について比較してみます。

(野菜・果物・肉類)

一時帰国すると買い出しの為必ず通うのが「スーパー」野菜・果物・肉類の見栄えの良さにはいつも目が点になります。こちらは価格だけで比較すると当然日本の方が割高・コロンビアの方が安いと言えます。但しそれだけで判断するべきではなく「品質」も重要です。コロンビア国内で出回っているこれらの品々は安い事は安いのですが、例えばほうれん草は葉が大き過ぎ・若しくは葉が萎れたり果ては腐っていたり、世界屈指の生産国であるバナナは輸出規格外のものが国内に流通している為に外皮や中が既に腐っていたり逆に青すぎて芯があったりと品質に難があるものが大半です。

アジア系野菜の白菜は葉をちぎると中に大量の芋虫がいて既に相当かじられて穴が開いているとか、大根も切ったら芯の部分に「す」が入っていたり、収穫から日が経ち過ぎて両
端を持つとグニャっと曲がったりするのが大半です。それらの理由により使えない部分が多々あったりする事を考えると結果として日本の野菜・果物類の方が「コスパが良い」とい
う事になります。

肉類も例えば牛・豚肉は日本とは「牛種」「豚種」が異なる為、安い事は安いのですが肉自体が非常に臭みを持ったものです。また肉質も非常に固く、焼くと箸でも切れるどころか
ナイフを使っても切れないケースもあります。これらは典型的な「安物買いの銭失い」になるリスクを含みます。その点で日本のスーパーで手に入る肉類(特に和牛など)はグラム当
たりの価格は高いものの美味しいという点で比較になりません。
         

(インターネット回線)

この分野でコロンビアは日本にだいぶ追い付き、もしかして追い越してしまうのではと思います。他都市の事情は分かりませんが2024年現在首都ボゴタの一般家庭のネット回線速度は500Mbpsが標準で、少しずつですが光ファイバー回線の敷設も始まってきています。私はネット回線+ケーブルテレビ+固定電話のセットで契約していて月額料金は日本円で約5,000円程度です(2024年4月現在)

数年前に日本一時帰国した際はネット回線の速さに驚きましたが、今回の一時帰国ではその差を感じませんでした。何故かと思いスピードチェックのサイトから速度を計測した
ところ結果は「500Mbps」でした。家族が契約したのでその契約書を見た所「1Gbps」となっているので回線を敷設した会社の担当者に「契約速度よりも遅いのですが」と問い合わせた所、日本の場合は大元の回線を持っているNTT以外のネット回線提供各社はNTTからケーブルを「借りている」為、実際には契約の1Gbps通りの速さになる事はまずありませんとの説明でした。

コロンビアにおけるインターネット回線関連最大手はメキシコに本社がある「Claro」です。Claroは自前の回線を張り巡らしていますので500Mbpsの契約であればネット速度は
そのまま500Mbpsと計測されます。Claroは顧客サービス・トラブル発生時の対応も他社と比較して群を抜いていて、あと数年後には市場をほぼ独占しそうな勢いです。私はスマホ回線&データもClaroと契約しています。ついこの間まで長年他社との契約でしたが顧客サービスに致命的な問題があり、同じ番号でClaroへ移管しました。月55GBまでデータ利用が可能な月額料金は日本円で約1,600円(2024年4月現在)です。

(コーヒー)

世界に名だたるコーヒー生産国コロンビアだからさぞかし美味しいコーヒーを安く飲めるだろう、という想像が崩れてしまいそうで申し訳ないです。まず「安い」という点で「飲むコーヒー」は昔であれば勿論コロンビアで飲む方が断然安かったですが、例えば昨今の日本のコンビニコーヒーは安くて美味しいという点で驚愕に値します。勿論コーヒーを当地において「焼いた豆の袋」で買う分には産地コロンビアの方が圧倒的に安いですが、日本はコロンビアから生豆で輸入しそれを高度な技術で焙煎し提供する時点で飲むコーヒーとしての「味」が既に当地で飲むコーヒーとは別物になっています。更に一杯のコーヒーの値段が高いコーヒー専門店などは麻袋に入った生豆を一粒ずつ選別した上で焙煎します。この過程は産地である当地コロンビアではまず行われません。その為良い味を出す豆・味を損ねてしまう豆も一緒くたに焙煎してしまうので同じ高品質のコーヒー豆なのに味に差が出てしまいます。とは言え世界的コーヒー生産地コロンビアですから「本場の味」も是非ともお試しください。

(外食費用)
こちらはカテゴリーによって異なりますので一概に言えません。この場合の比較はラーメン・立ち食いそば・定食その他の「B級グルメ」です。前述の牛丼もそうですがこれらの料金は圧倒的に日本の方が安くてお腹一杯になります。

コロンビアにおけるB級グルメは例えば「アヒアコ」「バンデハパイサ」「サンコチョ」などがあります。これらは店によって金額が全く異なりますので一概に言えませんが昨今の物価高の影響もあり昔ほど安いという感覚ではなくなってきたように思います。とは言えアメリカやヨーロッパと比較すれば格段に安くお腹一杯食べる事が出来ます。

それにも増して安い・美味しいのが日本のB級グルメです。特に魚に関しては当たり前ですがコロンビアで日本並みの金額+鮮度で食べる事はまず不可能です。コロンビアでの
外食費用は前述の通りアメリカ・ヨーロッパ等の先進国に比べればまだまだ破格の安さですが、こと日本と比較すると決して激安ではなくなってきたように思います。その分、今
回の一時帰国で一杯のそば・牛丼などの安さと有難さを実感しました。

以   上