『蒸留酒の自然誌』 ロブ・デサール イアン・タッターソル - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『蒸留酒の自然誌』  ロブ・デサール イアン・タッターソル 


植物や蜂蜜の糖を発酵させて醸造酒を造ることは世界各地で9000年前後から始まっていたとみられているが、酒を熱して容器の蓋などに付いた液体からの蒸溜物から凝縮したアルコール成分を抽出する蒸留器は紀元前数千年にはあった。現在世界には様々な蒸留酒が作られている。市場で多い代表的な6大蒸留酒と言われるのはブランデー、ウォッカ、テキーラとメスカル、ウイスキー、ジンとジュネヴァ、ラムとカサーシャである。

うちラテンアメリカに深く関わるのはニューギニア島原産のサトウキビをカリブ海に持ち込み栽培を始めたサトウキビの産地で作られるラム、同じ原料でブラジルで広く愛飲されているカサーシャ、メキシコで竜舌蘭の根を球茎が原料のテキーラとメスカル(両者の違いは竜舌蘭の種類、原産地等に関するメキシコ公式規格での区分)のほか、発酵させた葡萄汁を直接蒸留して作るペルー(後にチリでも作られるようになった)ピスコについても言及している。

「酒が人類に欠かせない命の水」として世界のあちこちで飲まれている蒸留酒の歴史、文化・社会的背景、特徴から飲み方にいたるまでを、米国自然史博物館の学芸員が中心になって纏めた人類史の一面である。

〔桜井 敏浩〕

(白井慎一監訳 内田智穂子訳 原書房 2023年10月 398頁 4,500円+税 ISBN978-4-562-07337-6)