執筆者:ピーター藤尾(在チリ、サンティアゴ)
国連の要職についているステイナーが来チして、モネダ宮殿でボリッチと面談しました。イスラエル問題が世界で話題になっていますが、ボリッチは最初からパレスチナの援護をする体制を変えません。以前、大統領恩赦がありましたが、それによって刑務所から外に出た男が、出所直後に同じような犯罪を犯し、恩赦が間違っていたと批判を浴びました。その頃は何とか逃げていたボリッチですが、今週ラヂオ放送界との面談であれは私のエラーでしたと反省しました。
報道の自由大会に出席したボリッチは演説しているときに二人からクレームを受けました。それは2年前のメイデーの時サンティアゴでデモをしていた南部からの報道関係者が
発砲され死亡した事件の事です。報道の自由を守ろうと大統領は言うが報道陣が射殺されても何も言わないのは何故だとクレームしたわけです。ボリッチは「その発砲した犯人は警官ではない。誰が犯人なのか、政府も皆さんと一緒に追跡をしたい」としました。
警察軍の長官が今月に辞任することになっていましたが、先週の警官3名殺人事件の決着が着くまで、恐らく10月まで継続することになりそうです。共産党はそれに反対の声を上げています。自分たちの仲間をいじめた警察のトップを早く追放しようと言うわけです。その3名の警官殺人事件については詳しい動きが分かりません。私はマプチェか麻薬関連のグループの犯行だろうと思いましたが、捜査は進んでないようです。
ところで下院議会でテロリスト法案が可決されました。テロリストの犯罪と認められれば判決が厳しくなるわけです。社会の安全(犯罪を抑える)は緊急課題ですが、そのためには警察・陸軍の強化・提携を進めなければなりませんが、与党側はそれを嫌がるので、政府は野党の説得ではなく与党の説得が問題です。
この犯罪に関する件ですが、今週50名ほどのベネスエラ人が本国に強制送還されました。チリで刑務所に入れておくより本国に送った方が良いとの判断ですね。なんでも今週サンティアゴでベネスエラ人が襲われ、お前たちはここに住むなと言われたとか。彼らの言葉は同じスペイン語でもチリのそれとは大きく異なるのですぐわかります。関西弁の私が東京に行けばすぐにここの人間ではないと分かるように。それからペルーから観光に来ていた人が泥棒に殺されました。ペルー政府はチリ政府に抗議の声を上げています。毎日のテレビのニュースに犯罪関係が溢れます。もう嫌になるほどです。
日本は外人に扉を開けないとされていますが、私がチリに来た1979年はチリにはほとんど移民はいませんでした。軍政下で就職の可能性は低かったので外国からチリにくる移民はいなかったわけです。それがチリの景気が良くなると移民の数が急激に増えたのですが,それが違う問題を起こしているのが最近の傾向です。同じチリでも、南米でも、時代によって様子は変わるわけですね。私もその移民の一人ですが・・・。
チリには国営のフォナサと民営のイサプレの2種類があります。そのイサプレが巨額の借金を持っていることからそれを運営する会社の一部の倒産が心配されています。会社の倒産があれば病院などに入るべき金が消えるとか、患者がその保険で病院に行く時、通常の割引が受け取れません。新聞にこうした重要事項の問題を政府は解決に向けて真摯な対応を怠っているとされました。
今月15日からサンティアゴで世界銅会議が開催されます。専門家のコメントでAI産業により銅の需要が急増し、この先2,3年は高値が継続するとか。もっとも今週はその見解と異なり1ポンド4.41ドルと下がりました。
為替は1ドル939ペソでした。株式市場IPSAの数字は6559ポイントと好調持続です。
昨年の外国からの投資は217億ドルで2015年以降の最大額でした。
失業率は今年の1-3月平均で8.7%になりましたが、数字が前回より下がったのは16か月ぶりです。
3月の経済成長率は0.8%の上昇で1-3月では2.5%となり、今年は何とか上向いていきそうです。しかし首都圏の家屋の販売は1-3月で7.5%も下がり2年前より低いレベルです。ガソリン価格が30ペソ(約2%)上がりました。
5月1日は労働者の祭典ですね。チリでは商店などが全部締まります。都内の中心道路で労働者連合CUTの集会が開かれ多くの労働者が参加しました。最も4年半前の社会騒乱の時は百万人以上でしたが、今回は数万人ほど。連合会長が労働者の集結が新しい社会を作り上げると演説しました。デモ隊の一人が持っていたプラカードに「約束守れボリッチ」と書かれていました。7月から最低賃金が50万ペソに上がりますが、CUTはボリッチ政権中に63万ペソに挙げるよう要求しています。そしてデモ隊の一部が近くの商店のドアを壊して中に入り商品を奪って行きました。以前と同じことです。警察が来てデモ隊に放水しました。
チリの典型的な問題ですが、小学5年生では60%が肥満とか。運動をしないで腹いっぱい食べるのですね。
もう4カ月経ちましたが、火事で家屋が全焼した人はテント暮らしの生活が継続です。政府は簡易家屋を早急に設置すると約束しましたが、実行されていません。それから掘っ立て小屋が集まった貧民村がこの2年で全国で30%増加したと言われます。その多くは不正建築です。それを移民の家族に高い値段で貸すケースがあるとか。不法に入国した移民は正規の賃貸契約が出来ないからですね。麻薬などの犯罪の巣になると言われます。それが分かっていればその一掃を図るのが正解のように思われますが、どうかな。
チリ北部で軍事訓練をしていた連隊に死亡者が出ました。気候を無視して強硬演習をしたのでしょう。以前にも同じような事故がありましたが、気合を入れるというのも限界があるわけですね。
ボリッチは南の方に出張しました。例えばランカグアで電気バスの走行開始を祝いました。お疲れさまと言うかそれしかないと言うか。世論調査で彼を支持するとしたのは24%で、大統領就任以来で最低の数字でした。一般市民も飽きてきたのでしょうね。
6月1日に年次教書を発表しますが、モネダ宮殿では心配の声が上がっています。社会安全を進め、経済の進展を確保し、年金・健康保険などの市民の安定を守るとしなければならないのですが、それらすべてに市民を安心させる方針が打ち出させるかとの疑問です。その通りですね。彼が新しい道を歩き始めるのは無理でしょう。味方の与党内で分裂ですから。
彼のアイデアだった増税から市民援助を増やすと言うのはほとんど動いていません。金持ちから所得税を取れば、一般市民は喜ぶだろうと言うアイデアでしたが、経済の停滞が心配され金持ちいじめも上手くいきませんでした。
先週に陸軍の兵隊が訓練中死亡した事故で、陸軍トップがモネダ宮殿に呼びだされ議論されました。人間の能力を超えたレベルの訓練をするのは陸軍の責任でトップレベルの将校が解任されるかもしれません。私の考えではその訓練の指示書を調べ、人権を無視したようなものならそれを訂正し、それが正常ならその訓練を指揮した上官に処罰を加える。それだけです。この問題から政府と軍隊が正面からぶつかるのは正常ではないですね。その訓練の場所は高地で温度が極めて低く、使用されていた服は極寒に適していなかったようです。
民営健康保険イサプレの法案が明日、議会で投票されます。多くの債務をもっている会社の支払い条件が問題になりますが、10年以上の猶予をもって払わさせると言うことになるかもしれません。その支払いの中に契約者への返金もありますが、その対象者(何十万人)の中に私も入っているので、いつかそのうち幾らかの弁償が来るはずです。
2)与党の同意
今年の地方選挙で与党の10党とそれにキリスト教民主党が統一候補を出すことで同意しました。所がコピアポ市で現職の社会党市長を推すはずなのに共産党が
それを無視して社会党と揉めています。同意したことを守らない共産党は与党のメンバーではないですね。
1ポンド4.5ドルと高値安定です。為替は1ドル931ペソとペソ高になっています。
OECDの推定ですが、ラテンアメリカで高い数字が見込まれるのは1位がコスタリカで3.5%、2位はチリで2.3%、3位はメキシコで2.2%です。さぁどうかな。
4月のIPCは0.5%と予想を上回りました。1-4月の合計で2.2%、これも予想を上回っています。もちろん財務省は心配しています。
銅とは重要度が違いますが、サーモンも重要案件です。毎年900-1000トンの生産があり、何とその98%は輸出に向けられています。もちろん日本にも大量に送られています。過去20年で、チリの産業で最も成長したのがこの分野です。現在の課題として環境汚染を抑えることが重要項目で、その次に生産量の増加とか、今年はどんな数字になるでしょう。
新車の販売は20か月連続で前年を下回っていましたが、この4月は25490台と前年より31%も上向きました。それが継続するかな?テレビのニュースで中国の車ショーが報道されましたが、「こうした素晴らしい中国車がいつチリに来るのでしょう」とされました。中国のEV車は大混乱とは出ませんでした。
マプチェの3つあるグループの一つCAM(アラウコ・マジェコ同盟)のリーダーのジャイツルが23年の懲役を受けました。彼は左翼革命のリーダーのようにマプチェを基礎に、ここではチリ人の好きなようにはさせないと過激な活動を始めました。そしてそれがマプチェ族の同意を受け、組織が発展しました。木材の盗伐や麻薬関係などから資本を
作り、同盟軍は反政府運動で生活できるようになったわけですが、ここで彼が逮捕され有罪になりました。CAMはこれから潰れていくのか彼の跡継ぎがさらに過激に行動するのかのどちらかですね。
南極でロシアが大量の原油が貯蔵されている場所を見つけました。南極でその活動は国際条約で禁止されています。その地区はチリ、アルゼンチンそしてイギリスが自分たちの領土だと主張しています。ボリッチは、国際条約の通りに約束を守るとしていますが、ロシアがそこから原油を採掘し始めれば態度を変えるでしょうね。
それから第7回チリ国際投資会議に出席し、チリへの投資を呼びかけました。28か国の100を超える企業の代表を前に皆さんの投資が上手くいって進展するようチリ政府は応援しますと約束しました。
そして警察軍の創立記念行事に参加しました。97年目です。ところで先の大統領選挙でボリッチに負けたカストはスペインを訪問し、右翼グループの集会で演説しましたが、その中で「ボリッチは社会騒乱の時、反政府グループのリーダーとしてお前たちの好きなようにはさせないぞと警察と対決していたが、今は皆さんのおかげで社会が安定するとすり寄っている。そんな人格で大統領が務まるのか?」としました。
大学生への奨学金ですが、大きな問題になっています。ボリッチたちの学生運動の時、「それを無理に返還させるな、国が助けてやれ」と訴えていました。で、自分たちが政権を握ったので、それを実施しようとするとその資金はどこにあるのと言うことになったわけです。無理やり実施して国が破産するか、急にトーンを変えて、10%だけ値引きしますとするのかな?
10月27日に州知事や市町村の地方選挙が行われますが、その候補者を選ぶ与野党の第1次選挙が6月9日にあります。それは全国で60の市・区で実施されますが、私の住んでいるラス・コンデス区はありません。
国会で承認されました。今まで必要以上に支払っていた金額が各社の契約者に平均で毎月1万1千ペソが13年払われるとか。68万人ほどの契約者がいます。私もその一人ですが、65歳以上は13年でなくもっと短い期間に支払われるとか。もっとも各保険会社はそれを払うため、毎月の保険金を高くする計画とか。何それ、国会はその値上げを許すの?
銅価格はロンドン市場でなんと過去数年間で最高の5ドルに近づきました。ニューヨーク市場では5.08ドルでした。そのため為替は1ドル900ペソを切りました。891ペソまでペソ高になっています。これはチリ経済に好影響です。財務大臣は今年のGDPは当初の予想より上の2.7%になるだろうとニッコリです。ガソリン価格も値下がりするとか。
サンティアゴの不法建築の貧民街に警察の手が入り、撤去作業が始まりました。その中の住民が「警察はいきなり催涙ガスを打って突入してきた。ここには年少児や年長者も多くいるわけで、そうした虐待行動は住民を傷つけるだけではないのか?」としました。もちろん何週間も前からこの不法建築を撤去しますので家具をもって退出してくださいと連絡しています。全国各地にこの問題はありますから、政府が本気になれば大混乱になるでしょう。同じようにサンティアゴの中心部を流れるマポチョ川にテントを張って住んでいる多くの人を除去しました。これは明日からの大雨でテントが流される可能性がありますからね。トラックのグループが主要道路で駐車するデモをして、交通遮断の事件が起きています。彼らは社会の安全のため、軍隊を前面に出せと要求しています。最近、チリで移民グループの犯罪が多いと言われますが、なんとアメリカにチリの犯罪グループが100もあって、活発な活動をしているとか。アメリカ人にチリ人はすぐに出て行けと言われそうですね。
サンティアゴの南部にある公立病院ソテロ・デル・リオのダイレクターが辞任(もしくは解雇)しました。その理由は手術などの手当てを受けるのに長い間待たされるのですが、そのリストを破棄したからです。患者の中には手術をしてもらうのに10年たってもまだ連絡がこないとする患者がいます。その長い期間を待たされる患者で死亡したのが全国で何万人もいるとか。病院の施設・医師が実態に適合しないと言うわけですが、ボリッチだけの責任ではなく、歴代大統領が改正しようとしても上手くいかなかったと言うわけです。
今年は風邪(インフルエンザ)の患者が昨年の2倍以上と言われます。病院にベッドが不足してきたと言うニュースもあります。そのため、生徒にそれが影響しないように冬休みを早めに開始すると言うコメントがありましたが、教育相はそれを認めませんでした。
病気が怖いから、私は病院に行ったときはマスクをしました。地下鉄に乗る時もそうします。 以 上
今週の一番大きな話題は21日のイキケ海戦の祝日です。海軍の日になっています。海軍本部のあるバルパライソでそのお祝いの儀式が行われボリッチは参加しました。テレビの中継でその儀式を見ましたが、なんと大統領府の行事案内にはそれが掲載されていません。ところでその海軍兵の行進のパレードの時に群衆からボリッチは「お前は共産主義者」と嫌味を言われたとか。近日中に彼は欧州数か国訪問をしますが、その中で世界平和会議に出席しウクライナ大統領ゼレンスキーと面談するらしい。その欧州訪問の意味が素人の私には良くわかりません。
外交と言えば、例の南極問題が重要でしょう。チリ・アルゼンチン・イギリスが自国の領土と主張している地区にロシアが石油を採掘することになりそうですが、アルゼンチンの大統領の気性ではロシア開発部隊に軍事攻撃をかけるでしょう。そうすればプーチンも意地を出して反撃し両国間で戦争が始まるかも。ロシアにもアルゼンチンにも大きな打撃になりますね。ボリッチは黙って見守るでしょうが。
昨年のパンアメリカオリンピックの選手村になっていたセリヨス区の建物を一般市民のマンションとして提供することになりました。そのお祝いの式に彼は参加し、皆さんの
快適な生活をお喜びしますとしました。1300家族がそこに入れるとか。地下鉄の駅の近くで便利そうです。
貸出金合計は119億ドルとされますが、資金が無いから奨学金の支払いをすべて取り消すことは不可能で、どうすればボリッチの公約を何とか実行できるか悩んでいる様子です。新左翼議員が政府は最後の日まで公約を守る努力をするべきだと噛みついています。まったく逆に内務大臣は借金を払うのは世界のどこでも正常・通常の事で、借金の取り消しを図るのは違った問題を起こすきっかけになるときっぱり拒否しています。同じような雰囲気ですが来週、6月1日の年次教書の内容も与党内でもめているようです。ボリッチはにっこり笑ってお話しすることはたくさんありますとか。
先週の急上昇の後、今週は下落しました。1ポンド4.65ドルで先週よりかなり下がっています。そのため為替もペソが下落し1ドル908ペソでした。銅の需要供給より誰かの投資の関連で、こんな動きになるのですね。それはともかく今年もこの先数年間も、こんな高い価格が続きそうです。チリの財務省は年間10億ドルの追加収入が見込まれるとかでニッコリですね。しかし好調な銅と全く逆なのがリチウムです。第2の銅と大きな期待が集まったのですが、リチウムの価格は2022年は1トン59000ドルでしたが、昨年は13000ドルと激減です。掘っても掘っても利益は出ないと言う感じ。しかし不思議ですね。プロの予想がこれほど狂うなんて。
4週連続で上昇です。金曜日少し下がりましたが6765ポイントと絶好調です。それとは関係ありませんが昨年の失業率は8.7%でした。
サンティアゴのメトロの乗客が、1-4月の比較で今年は昨年より10%アップの1.4億人でした。コロナ問題で落ち込んだ2020年以降の最高の数字です。ただその前年の2019年にはまだ20%ほど下がっています。社会騒乱の前のチリは活気があったと言うのがその数字に表れますね。
年初のバルパライソ州の大火事は放火・失火・自然発火の可能性があったわけですが、今週、一人の男が放火の疑いで逮捕されました。なんとその男は消防署員でした。
彼の放火で135名の死亡者が出たようです。裁判でその実情が分かりますね。ところで、ボリッチはその火災で家屋が全焼した家族に、寒い冬が来る前に皆さんの簡易住宅を
用意しお渡ししますと約束しましたが、ほとんど実行されていません。それで被害を受けた多くの家族が、住居建設に適しない急斜面などの所に新家屋を建設しています。そこは
再度土砂崩れなどの被害に遭いそうな場所で、時間と金をかけて問題の先送りをしています。政府が無策だといつまでたっても解決しませんね。
首都圏の犯罪が多い地区で、警官グループが商店を訪れ、店の安全を図るから金を出せとしました。月100万ペソとか、いろんな条件で合意し金を巻き上げていたらしい。それは日本では暴力団が商店を脅すときに使う手ですね。12名が逮捕され、裁判になっています。
この週末に文化財施設の一般市民への公開が行われました。各所各地で行われましたが、その中の一つはモネダ宮殿で、普段、入れない大統領宮殿の一階部門に市民が入りました。ボリッチはそれに参加する為、モネダに赴き、宮殿の中で観衆に挨拶しました。子供が家に帰ってから、「お母さん、私、ボリッチと握手したよ」って言うのでしょうか。
病気がおさまらず、病室が92%も使われて、近日中に空室が無くなりそうとか。もちろん死者も出ています。厚生省はインフルエンザの予防ワクチンの接種を呼びかけています。
以 上