講演会報告:野口 泰氏 外務省中南米局長「岸田総理のブラジル・パラグアイ訪問」2024年6月25日(火)15:00~16:30(日本時間) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告:野口 泰氏 外務省中南米局長「岸田総理のブラジル・パラグアイ訪問」2024年6月25日(火)15:00~16:30(日本時間)


【演題】岸田総理のブラジル・パラグアイ訪問
【講師】野口 泰氏 外務省中南米局長
【日時】2024年6月25日(火)15:00~16:30
【場所】外務省精励会大手町倶楽部
【参加者】36名

今回の対面式講演会は、野口中南米局長による「岸田総理のブラジル・パラグアイ訪問」。野口局長は、2024年5月初めの岸田総理の両国訪問に同行され、その様子や成果について詳しく話された。

岸田総理はサンパウロで「中南米と共に拓く『人間の尊厳』への道のり」と題する対中南米政策スピーチを行い、①分断された国際社会にあって、価値観を共有する中南米との間で自由で開かれた国際秩序を確保する、➁環境、気候変動など人類共通の課題の克服(日・伯グリーン・パートナーシップ・イニシアティブ(GPI)、アマゾン基金支援、対小島嶼国協力等)、➂世界の全ての人々が共有できる繁栄の追求(日系人・日系社会の存在、今後3年で1,000名規模の交流事業)とのメッセージを発信された。

ルーラ大統領は、貿易・投資において中国のプレゼンスが増加している中で、対外経済関係の多様化を模索しており、日本と貿易・投資関係を如何に拡大していくかにつき話し合われ、これらの分野の関係強化で一致した。また、両首脳は「日・ブラジル戦略的グローバルパートナーシップの更なる強化に関する共同声明」を発出した。2025年に外交関係樹立130周年を迎えるブラジルとは、同年を「日・ブラジル友好交流年」とすることとし、岸田総理はルーラ大統領を日本に招待し、ルーラ大統領は記者会見の場で、来年訪日することを明言した。

また、ブラジルとパラグアイ両国が加盟するメルコスールに関して、日・ブラジル首脳会談及び日・パラグアイ首脳会談において、幅広い分野においてメルコスールとの経済関係強化の在り方を検討していくことでそれぞれ一致した。

今回の訪問には46企業等がブラジルに、14企業等がパラグアイに同行し、約50件の覚書に署名し、官民一体となってオールジャパンで日本のプレゼンスを示すことができて。

パラグアイのペーニャ大統領は米州開発銀行の日本基金で米国に留学した経験があり、2時間以上の意見交換が行われた。パラグアイは南米唯一の台湾承認国。電力料金が安く、ビジネス・フレンドリーであり、ブラジル市場を念頭においた日系企業の進出がある。また、パラグアイ宇宙庁と株式会社アークエッジ・スペースとの間で宇宙産業協力に関する覚書などが署名された。

講演後の質疑応答では、多くの質問が出され、局長には丁寧にお答えをいただいた。質問の主なものは、①ブラジル南部の洪水に対して首脳会談で言及はあったか、➁タイトなスケジュールで支障はなかったか、➂BRICS、グローバル・サウスへの言及はあったか、④岸田総理は今回の訪問についてどう思ったか、⑤サンパウロでのスピーチはどの程度他の南米諸国に広がってゆくか、ポルトガル語による発信についての限界はなかっか、⑥日系人との会合で4世のビザ緩和についての話はあったか、⑦食糧安全保障において港湾整備以外のインフラ案件はあるか、⑧対パラグアイODAの今後について、➈総務省とパラグアイ情報通信技術省・国家電気通信委員会との情報通信に関する覚書、⑩メルコスールとのEPA、⑪岸田総理の政策スピーチと安倍総理の政策スピーチとの相関関係。