『「多文化共生」言説を問い直す -日系ブラジル人第二世代・支援の功罪・主体的な社会編入』 山本 直子 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『「多文化共生」言説を問い直す -日系ブラジル人第二世代・支援の功罪・主体的な社会編入』  山本 直子


『「多文化共生」言説を問い直す -日系ブラジル人第二世代・支援の功罪・主体的な社会編入』  山本 直子
 明石書店 2024年3月 271頁 4,200円+税 ISBN978-4-7503-5748-5

 本書は、2019年の改定入管法施行により実質的に単純労働者の受け入れも始まり、日本社会が移民の支え無しには成り立たない状況になってきた今、日系ブラジル人第二世代へのインタビュー等フィールド調査によって、日本社会で外国人の社会統合について述べる際に多用されてきた「多文化共生」という言説を再考し、彼らからの日本社会への問いかけの声を届けようとするものである。調査は2012~19年の間、日本有数の日系ブラジル人集住地である愛知県豊田市で実に多くの聞き取りを行った。第1章「政府文書にみる多文化共生概念の展開」では1989年の入管法改定からの社会の変化、政府の多文化共生に対する姿勢の変遷を、第2章「地域社会に浸透する多文化共生言説」では地方行政においてどのように表出されているかを、第3章「支援の功罪」では国や行政によって進められる多文化共生施策の影響と同化主義、日本語支援偏重主義等の弊害を指摘し、第4章では「コミュニティとネットワーク」では調査地域でのイベント、様々なトランスナショナルなコミュニケーションについて検討し、第5章「『グローバル人材』言説が与える新たな立ち位置」では大学・大学院進学を目指す在日日系ブラジル人第二世代の社会的上昇を英語教育との関連に着目して論じている。終章ではこれらにより明らかになったこと、本書の限界と今後の課題を明らかにしている。著者は一時豊田市で行政職員の経験もある、社会学を専門とする東洋英和女学院大学専任講師。

〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2024年夏号(No.1447)より〕