『収奪された大地 -ラテンアメリカ五百年〔新装新版〕』 エドゥアルド・ガレアーノ 大久保光夫訳 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『収奪された大地 -ラテンアメリカ五百年〔新装新版〕』  エドゥアルド・ガレアーノ 大久保光夫訳


『収奪された大地 -ラテンアメリカ五百年〔新装新版〕』  エドゥアルド・ガレアーノ 大久保光夫訳 藤原書店 2024年4月 495頁 3,600円+税 ISBN978-4-86578-420-6

コロンブスの新大陸到達後の500年間の暴力と抑圧によって豊かな土地から資源が奪われ先住民が迫害され奴隷化され、欧米の資本主義国民に収奪されてきた貧困と飢餓の歴史を告発しており、「Ⅰ 大地の富の結果としての人間の貧困」では金銀収奪から始まり、砂糖、コーヒーその他の農園主の君臨と土地所有形態改革、地下資源権をめぐる争奪、「Ⅱ 開発とは航海者を上回る数の難破者を従える船旅である」ではラテンアメリカの保護主義と自由貿易、域内で戦争、経済を奇形化させた外国からの借款・鉄道建設の歴史を概観し、門戸開放、IMFの介入、世界市場での不平等の構造を変えない工業化、米国の下での統合など、現代の略奪の構造を指摘している。
著者はウルグアイのジャーナリストで、軍政時代はアルゼンチン、スペインに亡命経験がある。本書の初版は1980年、本邦での訳書も同じ訳者(常葉学園元教授)によって1986年に新評論から出版され、1991年以降藤原書店から版を重ねてきたものの新装新版。原書が出版されて以来半世紀近く経つが、西欧資本主義の豊かな生活の裏には、別の場所、ラテンアメリカで暮らす人々の犠牲があるという植民地支配構造の根本は今も変わっていないとする主張に本書再版の意義がある。冒頭の著者の新版への序の解説、巻末にラテンアメリカ史略年表(メソアメリカ・アンデス古代文明から1985年まで。472~486頁)も付されている。

〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2024年夏号(No.1447)より〕