『ラテンアメリカ文学を旅する58章 エリア・スタディーズ207)』 久野 量一・松本 健二編著
明石書店 2024年5月 381頁 2,000円+税 ISBN 978-4-7503-5775-1
ラテンアメリカ文学というとわが国ではスペイン語・ポルトガル語で執筆されたものを指すことが多いが、本書ではそのほか英語、フランス語や地場・先住民言語で書かれたもの、南北アメリカやカリブ海諸島で書かれた作家のものまでを網羅した、多様さが際立つラテンアメリカ文学を読もうとする人のためのハンドブック。まず日本におけるラテンアメリカ文学の受容史を述べ、ラテンアメリカ文学の出発点と考える「コロンブス航海誌」・新大陸に渡った欧州人が遺した記録クロニカから始め、征服・植民地時代から21世紀に至るラテンアメリカ文学を58章に分けて、各章で作家の生誕年を基準に作家や具体的な作品の紹介・解説している。
本書の特徴は取り上げたそれぞれの作家の略歴・作品内容の紹介を羅列したものではなく、ラテンアメリカ文学の魅力を翻訳者・研究者が、作家が生きた具体的な作品の場所、言語、背景となる社会、歴史を熱い思いを込めて、多くの執筆者は現地をも訪れて執筆している。これにラテンアメリカ文学に興味を持ち始めた読者に作品を読み始める入り口・関連知識となる6本のコラム、巻末に各章に対応した文献案内も付されている。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2024年夏号(No.1447)より〕