講演会報告:JICA中南米2所長(坪井 創 メキシコ事務所長、三浦 淳一 エクアドル事務所長)講演会:2024年7月25日(金)10:00~11:30(日本時間) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告:JICA中南米2所長(坪井 創 メキシコ事務所長、三浦 淳一 エクアドル事務所長)講演会:2024年7月25日(金)10:00~11:30(日本時間)


【演題】JICA中南米2所長報告会

  • 成長するメキシコとの絆~JICAが目指す共創へ
  • エクアドルの今とJICAのチャレンジ

【講師】坪井 創 メキシコ事務所長(2024年5月まで)
    三浦 淳一 エクアドル事務所長
【日時】2024年7月25日(金)10:00~11:30(日本時間)
【場所】オンライン
【参加者】85名

成長するメキシコとの絆~JICAが目指す共創へ

① メキシコ総選挙を経て
6月の総選挙では、大統領、連邦議会、地方で与党連合が大勝した。大統領に選出されたシェインバウム氏はAMLO現大統領の政策を継承するものと見られ、米国の大統領選を控えて、側近の起用と環境に重点を置いた適材適所の人事を行っている。
② メキシコにおける人づくり、国づくりへの(JICAの)貢献
JICAは1973年のメキシコ事務所開設以来、昨年で50周年を迎え、幅広い分野での協力を行ってきたが、無償協力は無い。力を入れているのは、信頼構築のための人の往来。メキシコの研修員・留学生は、公務員が少ない点で他国と異なっており、「NICHIBOKU」と称される日墨研修には民間人や個人が多い。JICA海外協力隊は主にプエブラ州以南で派遣要請を開拓。相互交流の同窓会組織が活躍している
③ メキシコと共に歩む事業(自動車、民間連携、三角協力を例に)
自動車協力では、特に2005年のEPA発効以降、「自動車産業人材育成プロジェクト」、「自動車産業クラスター振興プロジェクト」を実施してきた。
民間連携では、日本企業の技術・サービスと現地の課題を組み合わせて、課題解決に当たってきた。三角協力としては、20年前から行っている、「日本・メキシコ・パートナーシッププログラム(JAPP)2030」を来年、リニューアルする予定。
④ メキシコから日本への還流促進(スタートアップ、拡大日系社会)
イノベーションおよびスタートアップ・エコシステム強化アドバイザー制度、日本とメキシコのスタートアップ関連アクターを繋ぐデジタルプラットフォーム構築を実施中。メキシコにおける7.9万人という大きな日系社会で、今年4月に「全墨日系人大会」と「ジャパン・エキスポ」を開催。また非日系の親日・知日層を含めての「拡大日系社会」により、オールジャパンでの連携、人材の還流や共創を継続する。

今日のエクアドル
  三浦所長は本講演で、日本であまり親しみのないエクアドルを知ってもらうこと、を意図され、エクアドルの概要、政治、経済、課題について説明された。

① 今日のエクアドル
  • エクアドルは、面積・人口ともに小国であるが、国土は多様(沿岸地域、中央高地(アンデス)、アマゾン地域、ガラパゴス諸島)。国民の72%はメスティソ。
  • 政情不安を経て、2007年に就任したコレア大統領(左派)が好調な石油輸出を背景にポピュリズム的な政策を導入、2017年に引退後も影響力を有する。現在のボア大統領に対して、国民は期待と不安を抱いている。
  • 経済成長率は石油価格と連動している。石油依存度は低下したが、石油依存体質は変わらず。石油以外の5大輸出品目(エビ、バナナ、海産物(缶詰等加工品)、カカオ、花卉)は変わらず。米国が輸出第一位国であるが、その割合は減少し、代わって中国の割合が増加。ラッソ大統領が自由貿易協定を積極的に推進。今年5月には中国とのFTAが発効した。
国内課題:治安、電力不足、環境、自然災害。

  • 治安:2020年以降、人口10万人当り殺人件数が急増したが、ほとんどが麻薬取引や縄張り争いに関するもの。
  • 電力不足:中国の協力による大規模水力発電所が雨不足と土砂堆積によって予告無しの計画停電をして混乱に陥った。
  • 環境:エクアドルは世界で9番目の生物多様性大国。アマゾン地域における鉱物資源開発が懸念されている。エクアドルには90の火山があり、うち8火山が活動中。自然災害に対してJICAが協力している。
② JICAの協力
重点課題

  • 経済基盤整備(再生可能エネルギー開発・利用促進、産業開発・競争力強化)
  • 格差是正・包括的な社会の実現
  • 環境保全・防災(土砂災害リスク減少のための技術協力、災害に強い街づくり等
協力事例

  • 再生可能エネルギー開発・利用促進(円借款8件:地熱発電所建設等)
  • 産業開発・競争力強化(カカオ産業の品質向上等)
  • 防災(土砂災害リスク減少能力向上等)

講演後の質疑応答では、①米国共和党トランプ大統領候補が当選した場合の対メキシコ外交は、メキシコの新政権に不利にならないか? ➁エクアドルの中国寄りの姿勢は強まっているか?➂メキシコにおける日系社会との繋がり、④エクアドルでの無償協力の医療施設建設について、等の質問が出され、講師お二人から丁寧にお答えいただいた。

<会員限定:資料・録画>
講演会資料:JICA中南米2所長(坪井 創 メキシコ事務所長、三浦 淳一 エクアドル事務所長)講演会