執筆者:硯田一弘(アディルザス代表取締役)
パラグアイの言葉 moneda(モネダ)=貨幣・硬貨 英:currency 葡:moeda
日本の紙幣が新しくなり、一万円札の肖像が福沢諭吉から渋沢栄一に切り替わりました。と言っても、現時点で新紙幣を手にした人はまだそう多くないようですね。
この機会にパラグアイの紙幣についてご紹介しますと、最高額はGs.100,000=十万グアラニです。1US$=約Gs.7500ですから、この紙幣の価値は約13ドル、2150円程度です。
肖像画に描かれているのは聖ロケ・ゴンザレスという16~17世紀にパラグアイの礎を築いた聖職者で、日本で言えば聖徳太子の様なイメージの人物と言えるでしょう。
今日の言葉をmonedaと御紹介していますが、紙幣はbilleteで硬貨をmonedaと呼ぶのが一般的です。
パラグアイの紙幣は十万グアラニの他に、5万≒1080円・1万≒220円・5千≒110円・2千≒44円と6種類があり、少額紙幣の2千と5千は樹脂で出来ています。
パラグアイのグアラニは1943年10月の制定以降、一度も切り下げを行ったことのない南米最古の通貨で、米ドルに対しても急激な変動はないために、通貨不安のあるブラジルやアルゼンチン等の周辺国からも安全資産として認知され、その結果多くの資産家がパラグアイの不動産に投資することになっています。
今週は新興のデジタル銀行であるUENO bankが中堅銀行のBanco Visionを吸収合併して新体制となり、新たな大手銀行に名乗りをあげました。UENO銀行は、これまでの銀行とは異なり、対面の店舗を使わなくても金融サービスが受けられるという点でユニークであり、先週会った友人から簡単に口座が開設できるという話を聞いて、早速試してみたところ、オンラインであっというまに口座の開設が出来ました。この先進性は外国でも注目されており、米国の全国紙USA Todayでも先進のデジタル金融サービスとして取り上げられたようです。
https://www.5dias.com.py/tecnologia/destacan-a-empresa-paraguaya-en-usa-today-de-estados-unidos
この記事を検証してみようと、USA Todayの電子版を覗きにいったのですが、検索結果には出てきませんでした。もしかすると、巧妙に捏造されたフェイクニュースかも。
しかし、USA Today電子版の購読料が初年度は年間5ドル!ということで、早速購読を開始しました。二年目からは44ドルだそうで、それでも安い。UENO銀行の記事については、また暫くして検索してみます。
ついでに調べてみると、ニューヨークタイムスも初年度10ドル、二年目から90ドル。ネットのニュースが簡単に入手できる今の世の中、既存のメディアもデジタル化は必須の条件ですね。日本もお札の更改に膨大な費用を費やすのではなく、デジタル技術を活用して、費用対効果・利便性の向上に努めてもらいたいと思います。
パラグアイの言葉 billetera(ビジェテラ)=財布 英:wallet 葡:carteira
先週、お札の話をしましたが、今週も興味ある記事をいくつか見つけましたので御紹介します。先ずはLa Nacion紙電子版から「Transacciones vía billeteras electrónicas continuaron perdiendo dinamismo en mayo」(電子財布経由の取引は5月も減速)というもの。これまで順調に顧客と取扱高を伸ばしてきた電子商取引が、やや減速気味であるという報道です。
しかし、別の記事に掲載されたグラフでは、電子商取引自体は過去5年間で4倍以上に成長していることも判ります。
こうした動きはパラグアイに限ったことではなく、ブラジルではPIXという電子決済システムが既に主流になりつつあることを日経新聞も報じています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN050LO0V00C24A7000000/
また、長期的な財政構造の転換を迫られているアルゼンチンでも、イギリスのデジタル銀行Revolutが進出して、庶民への新たな電子財布の提供に力を入れています。
https://www.revolut.com/es-ES/money-transfer/send-money-to-argentina/
下のグラフは昨年7月時点でのパラグアイの主要銀行の取扱高ですが、先週もお伝えした新興勢力のUENO Bankが9位のVisionを吸収しており、今後の金融ビジネスの勢力図が大きく塗り替わる可能性を示唆しています。
もう一つの話題。7月11日は世界人口デーということで、将来の世界人口が2080年代をピークに減少に転じるという予測が報じられました。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20240712-OYT1T50058/
この報道を受けて、パラグアイの新聞5 diasでも、パラグアイにおける世帯当たりの家族構成も1950年代の5.4人から2022年には3.5人に減っていることや、女性の平均出産数が50年代は6.5人(‼)だったのが2016年には2.5人に減っていると報じています。
それでもパラグアイでは65歳人口が8.8%と若い世代が主流なので生産性の高さは当分維持できると考えられます。円安の進行で財布の中身が心配な日本の皆さん、人口ボーナスが続くパラグアイでの投資で、将来の安心を確保する手段を考えてみませんか。
ベネズエラの言葉 despreciar(デスプレシアール)=軽視する、拒絶する 英:disdain 葡:desprezar
90年代までは南米で最も裕福だったベネズエラが、2000年代のチャベス政権とそれに続くマドゥロ偽政権によって蹂躙された結果、世界最貧国の一つに成り下がったことはこれまで何度も書いてきました。その偽大統領マドゥロ(61)の偽任期が迫り、大統領選挙が来週28日に開催されます。
この選挙については、最有力候補であった野党のMaria Corina Machado女史(56)への人気があまりにも高いために、偽政府と偽最高裁判所は早々にMachado氏を今年1月に公職追放の処分を下し、大統領選への出馬を禁じる措置をとりました。このために野党は代替候補として大学教授のCorina Yoris女史(80)を擁立したものの、偽政権側はYoris氏の候補者登録を認めず、結果として元外交官のEdmundo Gonzalez氏(74)を擁立して選挙戦に臨むこととしました。
今日のベネズエラの政府系新聞El Universal紙電子版では「Maduro acusa a la oposición de “despreciar” a la mujer venezolana」(野党はベネズエラ女性を軽視している)として、多くの女性支持者を集めた集会の様子を伝えています。そもそも自分達が女性候補者を窮地に追い込んだことは棚に上げて、如何にも多くの女性から支援されているように書いていますが、記事の文中には「650万人のベネズエラ女性に貢献した」とのコメントが載っています。ベネズエラの人口は約2800万人、女性は1400万人とすると、その半数以下にしか貢献しなかったことを認めている訳です。
しかもベネズエラで生活したことのある人なら、この写真が政府から雇用されたサクラ出演者によって構成されたフェイクであることは直ぐに見抜くことができます。 この写真では大勢の支持者に囲まれているように見えますが、人が集まっているのは建物内の一部のエリアで、あたかも大群衆の支持を得ている様に見えますが、この建物の外には大型バスが待機しており、全国から報酬付で駆り出された偽の支持者が集会が終わった途端にバスに乗り込んで帰っていくことになっています。この種のトリック写真はチャベス時代からの政権の得意技で、新聞にこうした写真を掲載することで、国際世論に彼らへの支持を訴えている訳です。
一方の野党Machado氏を囲む集会は、ここ数カ月の間X(旧Twitter)で極めて多くの人達が大群衆の様子を投稿しており、その人気が絶大なものであることが理解できます。
https://x.com/MariaCorinaYA/status/1814730627876282486
ベネズエラの選挙は、故Hugo Chavez氏の政権末期から選挙管理委員会を巻き込んで結果の改ざんを行っていることは明白で、筆者がベネズエラからペルーに異動した2012年10月に行われた選挙では、チャベス派の老婆がテレビのインタビューに「今日二回目の投票に行ってきた」と両方の小指が青インクで染まっている様子を自慢げに見せびらかしていた様子をみて愕然としたものです。そのチャベス氏が亡くなって、2013年4月に行われた選挙では、野党への露骨な妨害を堂々と行いながら、改めてインチキ選挙結果でNicolas Maduro候補が勝利宣言を行ったのです。この時、明らかな不正があったことは誰の目にも明白でしたが、左傾化した南米各国は敢えてチャベス後継のMaduroを支持して、その後の2018年の選挙でも改ざんを繰り返して、現在まで政権に居残っている訳です。
過去の周辺国からの偽与党支持という苦い経験から、今回野党指導者のMachado女史は、アルゼンチン・コスタリカ・グアテマラ・パラグアイ・ウルグアイといった左傾化していない国々に呼び掛けて、公正な選挙の実施を支援するように呼び掛けています。
María Corina Machado agradeció el apoyo de Argentina, Costa Rica, Guatemala, Paraguay y Uruguay: “Fijaron una clarísima y firme posición”
トランプ候補への銃撃事件以降、米国の大統領選挙ばかりが報道される毎日ですが、南米最大の資源大国でありながら、過去20年以上に渡ってバラマキのための借金漬けとなったベネズエラで、野党が勝利することになると、債権国であるロシアや中国の財政にも影響を与えることは明白であり、来週日曜日の選挙は、世界が注目すべき大切なイベントになります。日本でも地球の裏側のこととして軽視することなく、関連の報道にもご注目ください。
パラグアイの言葉 aventura(アベントゥーラ)=冒険 英:adventure 葡:aventura
パリオリンピックが始まりましたね。生憎の天気となった開会式の様子を、昨夜はYoutubeでしっかり鑑賞できました。生放送はパラグアイ時間の昼過ぎからだったので、帰宅後にNHKやBBC、CNN等のテレビ局を色々探しても、肝心の映像にたどり着けなかったのですが、Youtubeで検索すると、次々に開会式関連の4K映像が出てきて、居ながらにしてLady GagaやCeline Dionの素晴らしいパフォーマンスを愉しむことができました。https://www.youtube.com/watch?v=_PcAfmmnoTE
本当に良い時代になったものです。
初めて外国で視たオリンピックは1992年のバルセロナ大会をベネズエラのカラカスで経験したものですが、当時はインターネットなどはなく、Venevisionという地元のテレビ局が流す映像をリアルタイムで観ながら、まだ拙いスペイン語の聞き取り能力で、南米とスペインの発音やしきたりの違いの解説を職場の仲間から教わったことを思い出します。
以下は32年前の映像、これが瞬時に再生できるのですから、改めて凄い時代になったと感じます。https://www.youtube.com/watch?v=IzGCXdX6gig
二回目のベネズエラ駐在中の2010年には、世界女子ソフトボール大会が開催されて、当時のなでしこジャパンの選手たちを目の前で応援する幸運に恵まれました。
この大会で日本はオーストラリアに勝って優勝、素晴らしい経験を共有できました。
2014年のサッカーワールドカップはサンパウロに居ましたが、観戦はもっぱら街中の居酒屋大型スクリーンで愉しみ、2016年のオリンピックはパラグアイに異動したばかりで、帰宅後のテレビで録画を愉しんだものですが、ベネズエラでの現場でのリアルな観戦経験には及びません。
で、2024年7月の今日、これまで出会った多くの人達の中でも稀有な経験を重ねた日本人とリアルに合う事ができました。
岩崎圭一さん、1972年群馬県前橋市出身の52歳。
Britain got Talentというイギリスのオーディション番組で日本人初のゴールデンブザー獲得ということで、御存知の方も多い筈ですが、岩崎さんは人力による世界一周を目指して自転車や手漕ぎボートで世界中を旅する真の冒険家です。
https://www.youtube.com/watch?v=F4v0BZtrSbY&t=1s
日本で冒険家というと、我々の世代で真っ先に名前があがるのが植村直巳さんだと思います。植村さんは日本人で初めてエベレストの登頂に成功した人物ですが、今回お会いした岩崎さんも、なんとエベレスト登頂に成功されています。しかも、飛行機・自動車・ヘリコプターでベースキャンプに向かった多くの探検家とは異なり、機械の力を一切使わずに、全て人力で登頂されています。
https://oceans.tokyo.jp/article/detail/41915
というか、エベレスト登頂だけでなく、大西洋を手漕ぎボートで横断するなど、植村さんやその他多くの探検家と言われる人達でも達成していない偉業を、2001年に日本を出発して以来、一度も日本に戻ることなく達成しているという点で、異形の大冒険家であると言えます。
松尾芭蕉は奥の細道の冒頭「月日は百代の過客にして、日々度にして旅を住処とす」と記していますが、正にこれを現代において体現しているのが岩崎圭一さんです。日本語で冒険という単語は「敢えて険しいことを冒す」という意味とされますが、岩崎さんの場合、旅を続けるために身につけた手品を先々で披露しつつ他の人を楽しませ、それによって得た資金で旅を続けるという、険しさとは無縁の旅。
それがイタリアのテレビ局の目に留まってイタリア版のGot Talentに出演、スペイン・ブルガリア版等を経て本家のイギリス版で冒頭のゴールデンブザー獲得、米国版にも登場して、今やYoutubeの視聴者の間では、知らない人は居ないと言えるほど有名な日本人となっている訳です。
岩崎さんは現在パラグアイ国境ブラジル側の街、フォスドイグアスに滞在され、8月にはパラグアイ側のイグアス日本人移住地で開催されるお祭りで、得意のマジックを披露され、その後首都アスンシオンを目指す予定とのこと。その後のスケジュールは確定していないものの、アルゼンチン・チリ・ペルーと移動して、旅の総仕上げに向けてまだ走り続けられるとのこと。まだ多くの出会いが待っていることと思いますが、前人未到の大記録を塗り替え続けるべく、頑張ってほしいもの。今日は本当に大きな感動を頂きました。
ちなみに、今回岩崎さんを御紹介くださったのは、静岡県出身でサンパウロ在住の友人、深沢正雪さん。ブラジル新報という新聞の編集長です。
https://discovernikkei.org/ja/journal/author/fukasawa-masayuki/
かつて南米各地で発刊されていた日本語新聞も、いまやブラジルとパラグアイでのみ発行される絶滅危惧種になっています。そんな状態でも、現地情報の発信を続ける深沢さんも、また真の冒険者であると言えるでしょう。
https://www.brasilnippou.com/2024/240727-112brasil.html
こうして繋がるご縁に感謝し、自分も日本のために頑張ろうと決意を新たにしつつ、若い日本選手達の活躍をテレビで観戦することにします。
明日はベネズエラの大統領選挙、こちらも目が離せません!
以 上