執筆者:ピーター藤尾(在チリ、サンティアゴ)
「2024年7月1日~7日」
「政治」
1)ボリッチ動向
チリで初めて作られた砕氷船の進水式に参加。南極問題でしょうね。アルゼンチンの大統領は任期中に戦争を始めるかもしれませんから。南極問題なら相手はチリ・イギリスかロシアでしょう。
ボリッチは年金と電気代の大きな問題を抱えていますが、すぐに解決する可能性はないです。
この2か月間、世論調査でボリッチを支持するは28%から少し上がり、36%まで行きましたが、ここに来て電気代問題がネックになっています。電気代の問題は2019年から国民に胡麻をするやりかたで値段を据え置いたのが原因ですが、貧困層に援助請求をするよう呼び掛けています。大半に値上げをして一部は据え置くと言う手段でしょうか。大衆迎合主義ですね。
それから新左翼が合併・統一について動いていますが、自分の基礎になった仲間について、ボリッチは後ろからいろいろ援護しているようです。統一して力を合わせるのが新左翼の進む道でしょうが、上手く行くかな?
2)人権委員会
数年前の社会騒乱の時、人権委員会はデモ隊員を守る立場で警察などを訴えました。しかし今回、国会でその委員会のトップ2名を更迭することが決まりました。その不正の理由はよくわかりませんが野党側の訴えが議会で決定されるのは不思議です。新左翼・共産党は人権委員会を援護しないのかな?
それから軍事政権が終わってから、軍隊関係者の人権問題で、有罪になった人間を通常の刑務所に入れずプンタ・ぺウコと呼ばれる特別刑務所に収容しました。もう政権が民主化して30年以上ですが、まだその刑務所はあります。それを廃止して、中にいる囚人を一般刑務所に移すと言う動きが出ました。もちろん右翼側は反対しますが、今までの政権でできなかったことをボリッチが達成できるか注目されています。似たようなケースですが、現在一般の刑務所に入れられている麻薬の組織犯人を収容する特別刑務所が考えられています。一般の刑務所に入れれば、金と力を使って、組織犯が刑務所を支配していくと言うことが起きているからです。
3)大統領選挙
2年も先の事ですが、次の選挙の候補者で一番人気のあるのはマテイ(プロビデンシア区長)、次いでバチェレット元大統領。3位に共和党のカストが入っています。私には3人とも特に素晴らしいとは思えませんが、他の候補者がまた出てくるでしょうね。右翼間のマテイ対カストの争いがどんどん大きくなっているとか。そのカストは今週、ブラジルを訪問しましたが、そこで「国民に選ばれてボリッチは大統領になったが政権の実質はチリ共産党が握っている」とコメントしました。
毎週、共産党は与党か野党かと書いていますが、彼らは何でも自分たちのやりたいようにするわけですね。人気のレコレタ区長が刑務所に入れられると早く釈放せよと声を上げます。次のベネスエラ大統領選挙で現職のマドゥロをチリから応援します。チリで殺されたべネスエラ元軍人オヘダの事件は捜査が進んいるように見えません。ボリッチは共産党とぶつかるのと基盤の新左翼の分裂で毎日頭が痛いでしょうね。
「経済」
1)銅価格と為替
今週の銅価格は先週までよりかなり上がりました。1ポンド4.45ドルです。いつも言われるように、この価格の上下は需要供給の関係ではなく投資家の動きで変わるのでしょうね。理由はともあれ、銅価格の上昇はチリの援護になります。このため為替も1ドル937ペソと少しペソが高くなりました。さて5月のイマセック指数が発表されましたが、何と1.1%と予想よりずっと低いものでした。しかし財務大臣は今年のチリの経済成長は、この5月の低い数字にもかかわらず、年間では2.7%に達するだろうと明るい見通しを発表しました。
アルゼンチンで新リチウム鉱山が始まりました。チリの場合は、あまり進みませんが、それはコデルコ問題などがあるので、鉱山の権利を取得するのが複雑です。ガソリン価格が少し動いています。93オクタンが少し下がって1315ペソから1299ペソになりました。
2)新車の販売
1-6月で14.2万台と前年から10.5%減少しました。
3)ワイン
5月の輸出は6.9%の上昇。1-5月の合計では対前年で量は14.3%、価格は7.3%それぞれ上昇しました。
「一般」
1)不正移民
ペルー・ボリビアの国境から不正に移民が入国しますが、その数は毎年数万人です。そして入国してきた人はチリで仕事を探しますが、上手く行かないときはホームレスの生活になります。一時、北部の中心の町イキケでその人たちが公園にテントを張って大量に住んでいましたが、それを止めさせるのに近くに移民用宿泊所を作りました。それを近日中に取り壊すことになったそうで、その人たちはどこに行くのか話題になっています。
今週、サンティアゴで二人組が強盗をしようと襲い掛かりました。しかしその人は私服警官で、所持している銃を取り出し発砲。二人とも死亡しました。どちらもベネスエラ人でした。もう700万人がベネスエラから他国に移住していますが、その多くは犯罪に関連しているのでしょうか。私は運があってチリに住んでいますが、もしかしてベネスエラに住み着いた可能性もあるわけですから、彼らのニュースを聞くと悲しくなります。もっともアメリカでチリ人グループが忍者グループと言われるほど派手に窃盗事件を起こしていると話題になりますが。以 上
「7月8日~14日」
「政治」
1)ボリッチ動向
北部のカラマに飛び、チュキカマタ鉱山を訪問。そして国営化53年記念の儀式に参加しました。その銅鉱山はアメリカ企業の会社でしたが、アジェンデが国営化したのです。その後、軍事革命が起きましたが、その鉱山の国営化をピノチェットも利用しました。
そして首都圏のキンタ・ノルマルの学校を訪問し、PACEシステムの10周年記念のお祝いに参加しました。それは高校生が大学教育を受けられるように援助するシステムで、これに登録した高校生の82%が翌年は大学に進級したとか。
2)大統領選挙
まだ2年も先ですが、与党グループ代表が国会のレストランで集まり、そこにバチェレットを招待しました。中道左翼政権時の社会党、キリスト教民主党そしてPPD党、さらに新左翼と共産党でした。何とか与党グループが統一候補を立てることが出来たら、次回も勝利は間違いないとの考えです。右翼側は中道右翼と極右の共和党に分かれそうですから。もっとも左翼側も共産党が大問題を抱えています。共産党内でボリッチ政権の中堅として現体制を維持する責任を果たそうとするグループと自分たちの権利・要求を正面にすると言うグループの対立です。同じ与党の中で社会党が政権から共産党を外そうとするコメントも出しています???
南米左翼大統領の団結がないと言われますが、コロンビアの大統領ペトロはチリ共産党のハドゥエ区長が刑務所に入れられている件に関し、ボリッチに彼の釈放を図るよう要請しました。
「経済」
1)銅価格と為替
1ポンド4.39ドルと先週とそれほど変わりませんが、為替は1ドル909ペソとペソ高になっています。
2)株式市場IPSA
6544ポイントとかなり上がってきました。
3)零細者援護
零細所得の人をいろんな項目で政府は援護していますが、年間でその費用は6億ドルになるとか。今回の電気代値上げの援護が、それに更に上乗せされることになるのですね。なんでも125万人がその申請をしているとか。
「一般」
1)公共運送の値上げ
首都圏のバス・地下鉄の運賃が今日から値上げになりました。当初20ペソの値上げになるとされましたが、また値上げ反対の社会騒乱が起きないように10ペソに抑えられました。ところで、久しぶりに係官がバスに乗って運賃を払ったかどうか調べると30%ほどの人が無賃乗車だったとか。もちろんその人は罰金を取られます。
時間によって運賃は違いますが、800ペソとすると10ペソの値上げは約1%です。無賃乗車の人が30%もいるなら、それを取り押さえ罰金を取るようにすれば1か月もしないうちに無賃乗車は無くなります。その方がバス会社にとって有利なのははっきりしていますが、どうして係官を毎日すべての路線で働かせないのでしょうか?
4年前の社会騒乱は地下鉄代の値上げから起こったのですが、デモ隊が街を破壊しまくったとき、デモ隊の一人がピオノノ地区で川に落ち怪我をしました。その人を川に落としたとして警官が一人逮捕され裁判になりましたが、今週それが結審になり無罪でした。無実の警官を逮捕し、裁判にかけた検察官に批判の目が向けられています。その頃、警官は市民を殺すのを仕事にしているのかとクレームしていたのがボリッチなどのグループでした。
2)ベネスエラ問題
元ベネスエラ軍人オヘダがチリで殺されましたが、彼の家族はチリを出てアルゼンチンに移住するようです。チリ内務大臣のトアは事件の解決をチリで見守っていてもらいたいとしています。チリにはマドゥロを応援する共産党がいますからね。彼を殺した犯人とみられる男がチリを脱出しましたが、今週コスタリカで逮捕されました。チリは強制送還をしてほしいと要請しています。ベネスエラ政府も送還を要請しているようですが。
3)チョコレート
アメリカの農業省の発表ですがラテンアメリカ諸国の中で一人当たり一番チョコレートを消費している国はチリだとか。しかしそれはチリ人にとって心臓まひなど幾つもの病気の増加の原因になっているとされています。 以 上
「7月15日~21日」
「政治」
1)ボリッチ動向
パラグアイを訪問し、先方の大統領との政治・経済関連の話し合いや中銀総裁との面談を実施しました。ただチリで殺人事件が大きな問題になっているので、外交だけでなくその方面にも目は向いていたようです。帰国後、すぐに彼は犯罪組織グループの囚人を収容する安全な大型刑務所を首都圏に作ると発表しました。サンティアゴ区長(共産党)はそれを自分の区には認めがたいとしましたが、その他でもすべての区長が自分の区に刑務所を作ってほしくないとしています。
それからマプチェ問題から南部で警察の他に軍隊を警備に使う特別法を採用していますが、それを首都圏でも応用できないか考慮中とか。ボリッチの右傾化です。もちろん共産党は反対しています。
最近、多くの殺人事件が起きていますが、その一つで、グループがパーティをしているところに他のグループが入り込み銃で5名が殺されました。被害者は全員外国人でした。犯罪グループの争いと見られています。毎日のテレビのニュースはこの犯罪に関するものがほとんどです。確かに嫌気がさしますね。今日の事件ですが、仕事を終えて帰宅する警官が(私服でしたが)4人組に襲われ、ナイフで刺されました。彼は銃を取り出し発砲すると、犯人グループは逃げ出しましたが、その一人は逮捕されました。彼は警察病院に入院です。
この件に関し、新聞にボリッチ政権の政治危機とされました。内務大臣トアは首都圏の一部の地区で「安全に歩ける道路」計画を実施しているが、その地区は8%も犯罪が減少している。つまりそのシステムを全首都圏に当てはめれば前進になるとしました。彼女のアイデアが1歩前進、ボリッチの特別法案は2歩前進になりますが、与党内での分裂が激しくなるのは明白です。
犯罪組織の多くは外国人ですが、その入国をどうコントロールするかはっきりしなければこの先も組織の勢いは衰えませんね。
2)新左翼の動き
選挙法違反としてデモクラシア・ビバは1億ペソ以上の罰金を課せられるとか。新左翼グループの犯罪的行為はこの他にも幾つもありますね。新左翼の合併・統一の動きの中でリーダーになりそうなのはウィンテルで、ボリッチの旧友ジャクソンが続いているらしい。今年10月の地方選挙で勢力拡大はほとんど可能性が無いようです。
「経済」
1)銅価格と為替
銅の価格はかなり下がり1ポンド4.18ドル。そのため為替もペソが弱くなり1ドル940ペソまで下がりました。
アメリカ大統領選挙が話題になっていますが、新大統領になればチリ経済にどんな影響を与えるか分析されています。ドル高・ペソ安になるだろうというコメントは多いです。
2)株式市場IPSA
金曜日少し下がりましたが、週としては先週より上がり、順調です。
「一般」
1)地下鉄料金値上げ
10ペソ上がりました。木曜日に抗議デモが起き幾つかの駅が閉鎖されましたが、短い期間で、営業再開されたようです。その他では多くの高校生が運賃を払わずに乗り越えて駅に入る行為をしたとか。4年前と似ていますが、規模は全く違います。
地下鉄ではないですが、アメリカではシステム障害で多くの空港で飛行機の便が取り消しになったようですが、チリではその問題は起きませんでした。値上げ関連ですが、電気代値上げで政府の援助が欲しいと要請したのは150万人だとか。
2)地震
北部でM7.3の地震が起き、カラマで一人死亡したとか。長い間、地震は無かったですが、サンティアゴにもそのうち大きな地震が来そうですね。
3)少子化
チリの人口が減少していると新聞の特集記事で発表されました。もっともそれはチリだけの問題ではないですね。逆に人口が増えすぎて食料が足りないと言う問題も昔はありましたが、どちらが良いのでしょう。
「7月22日~28日」
「政治」
1)ボリッチ動向
犯罪抑制政策が当面の最重要項目になっていますが、先ずは首都圏で警官数を500名ほど増員することと、首都圏の犯罪組織犯を収容する刑務所をオヒギンス公園地区に来年から建設開始する予定としました。
何と首都圏の中央駅区とセリジョス区の区長が犯罪組織から脅迫を受けているので、警察の特別警戒が必要とか。悲しいですね。
ただボリッチのこれに関する対応策が遅い・しっかりしないとされ、世論調査で彼を支持するは前回より4%下がりました。
それから明日から彼はアラブ首長国連邦に外遊とか。アブダビとドバイに行きます。アラブの資金をチリに投資するよう要請するのでしょうね。
2)地方選挙
与野党ともに内部分裂が治まりません。野党のUDI党党首は辞任しました。政治的なことからではなく、彼の父親が年少児女性への性的行為から有罪になったからです。彼は父親を守ろうと動いたようですが、父親は6年間の有罪になりました。これは単に彼個人の事ではなくUDI党に悪い影響を与え、またそこから次の大統領選挙に出るマテイにもダメージです。その対応を間違うと中道右派グループのチレ・バモスでなく最右翼の共和党員が大統領候補になる可能性があります。
モネダ宮殿で与党側の8党の党首が集まって選挙対応策を検討しました。ボリッチは参加しなかった由。キリスト教民主党DCがどうなるかまだはっきりしません。
さてベネスエラで今日、大統領選挙が行われています。チリのほとんどの市・区でベネスエラ人が集まり大騒ぎをしています。移民しないでベネスエラに残って住んでいる人はもう25年も苦しんでいるわけですね、気の毒です。チリはまだましです。
「経済」
1)銅価格と為替
銅価格は4.09ドルとかなり下がり4月以来の低い数字、そのため為替も1ドル 947ペソとペソ安になりました。コデルコ銅公社は今年前半は58万トンの生産で昨年より8%減少しましたが、収入は昨年より29億ドルと31%もアップ。コスト削減より銅価格の上昇が主な理由です。ガソリン価格が下がりました。最近、灯油の価格も下がっていますが、市民は喜んでいます。
「一般」
1)地下鉄デモ
先週に続いてデモ隊が暴れ、1号線の2駅で駅の封鎖が起きました。4年前の社会騒乱の時とはレベルは全く違いますが、運賃値上げを利用して暴動デモをするグループがいるわけですね。
2)マプチェ問題
マプチェの過激グループCAMのリーダージャイツル56歳は23年の刑を受けましたが、政治犯としてそれに抗議し、2か月ほどのハンガーストで20キロも体重が減少とか。明日の月曜日、最高裁はその刑の確認か変更を発表することになっています。彼のグループが犯罪をしたのは事実でしょうが、チリが不法にマプチェの領土に入って搾取したのも歴史上の事実です。チリがスペインから独立したとき、アラウカニア州はチリの領土には入っていませんでした。
以 上