連載パナマ・レポート51:ルベン・ロドリゲス 2024年7月分 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載パナマ・レポート51:ルベン・ロドリゲス 2024年7月分


連載パナマ・レポート51: ルベン・ロドリゲス 2024年7月分

執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(早稲田大学法学研究科講師・パナマ共和国弁護士)

 I. 政治

A. 政府の透明性

政権交代後、様々な機関や地方公共団体が透明性を高める政策を採用している。新政権の初内閣会議では、ムリノ大統領が内閣会議緑を公開すると発表した。2021年にコルティソ政権では、国家が当事者となった契約の情報を除いて、大統領および副大統領が参加した会議と内閣会議の会議録は秘密情報と認定されたため、10年間未公開となった。当時、カリゾ副大統領が、法律に従った判断のみだと説明したため、透明性に反する政策として様々な反対が上がった。選挙前、ムリノ大統領は会議録の公開を約束した。さらに政府省は7月18日から、毎週木曜日8時半にムリノ大統領が対話式の記者会見を行うことを発表した。

また、全国の各市区町村では、出勤しない公務員の確認や解雇プロセスが始まった。かねてからパナマでは、実際には出勤しないにもかかわらず給与を受け取る公務員が存在しBotella「瓶」と呼ばれ、無駄歳出として問題と意識されている。こうしたbotellaと呼ばれる公務員が給与の一部を、任命の決定者に渡すことは珍しくない。国会のカスタニエダ議長は、既に75人のbotellaを解雇し、現在の国会では、botellaその者やその任命する者に刑事責任を負わせる法案が提案されている。パナマ市のミズラチ市長も市役所のスタッフの内、出勤せず現金で給与を受け取った者がいると発覚したため、7月分の給与支払いは小切手で行われたと説明した。その結果、発行された小切手4010枚の内、51人が出勤歴がなく、516枚の小切手の受取者は現れなかった。他の市役所でも同じような者が発見された。西パナマ県のアイラハン市では、botella 疑いで解雇された約150人がデモを行った。

さらに、教育支援担当局IFARUによりPRD幹部や関係者に給付された返金義務なしの教育支援に関する調査が進んでおり、調査の結果が公開される予定と発表した。パナマ商工農会議所は既に刑事通報を行ったことも判明した。

A. 経済状況

米国の金融関連事業の持株会社のシティグループはパナマのGDPが2024年に2.4%、2025年4.5%の成長を予測している。また、シティグループは2024年後半に現時点での債務を果たすには、パナマ政府が更に30億ドルを借りる必要があると発表した。

7月18日に行われた対話式の記者会見では、ムリノ大統領はコルティソ元大統領から引き継いだ歳入状況から予測すると人件費のような政府の歳出を中心として緊縮政策を採用する必要があると述べた。これに対して、インフラ等のような出費は影響されないとわかった。経済財政省は1月から3月にかけて建設業界のGDP割合は前年同期比6%成長したと発表した。

B. パナマ運河の干ばつ

7月3日、パナマ最高裁判所は、運河の流域の廃止、およびパナマ運河局が裁量で利用できる地域を制限した。2006年の法律第20号は、運河局の意見を求めずに可決されたため、違憲だと判断し、返還当時の流域に戻した。2006年に運河拡張を提案したトリホス政権(2004-2009)は、影響されるコミュニティの理解を得るため、悪影響を最低限にする約束を交わした為、2006年の法律第20号および同年の法律8号によって運河局が貯水池を建設することができなくなった。

判決の効果によって運河局の管理地域は、3430㎡から5530㎡に拡張され、干ばつ対策に必要な貯水池は運河局の権限のみで建設できるようになった。7月9日にバスケス局長は、新たな貯水池に必要な準備は既に進めており、建設は影響を受けるコミュニティーの移動や賠償を含め16億ドルで4年間かかると予測されていると述べた。さらに、バスケス局長は新たな貯水池の利用によって今後50年間の通航に必要な水量の確保、および200万人への水道水提供ができると説明した。

以  上