『出会いはいつも八月』 G. ガルシア=マルケス
旦敬介訳 新潮社 2024年3月 123頁 2,200円+税ISBN978-4-10-509021-0
コロンビア生まれ、メキシコで2014年に没したノーベル文学賞作家ガルシア=マルケスが、晩年認知症によって執筆できなくなる直前の時期まで情熱を注いで書いていたという最後の未完小説。ラテンアメリカでは高校での必読書とされている『百年の孤独』によって神格化されているが、その著作は無時間的世界や祖父をモデルにして評価を受けてきたことから老人の世界を扱うことが多かったが、本書はその世界から脱して魅力的な40歳代の女性、その娘を通じての若者の世界を視野に入れるという冒険をしている。
46歳のアナは毎年8月の母の命日にカリブ海の島を訪れる。アナは島で母の死を癒してくれる一夜限りの男をその後も探すというストリーだが、結末はあるものの作家自身が最終的にはボツとしたため未完の作品といえる。ガルシア=マルケス手法、執筆の方法を読み取る文学的ドキュメントとしての側面的な意義もある。
〔桜井 敏浩〕