執筆者:広瀬明久(Sociedad Intercultural S.C.創立者、社長)
スペイン語学習を進める上で、多くの学習者が直面するいくつかの壁があります。これらを意識して取り組むことで、学習の挫折を防ぎ、スムーズな習得が可能になります。
今回は、私たちの学校で多くの日本人学習者がぶつかる壁を紹介します。
スペイン語学習の初期段階で、多くの学習者がまず直面するのが動詞の活用のです。日本語には存在しない動詞の人称や時制による変化は、日本人にとって厄介です。英語も主語に応じて動詞の形が変わりますが、スペイン語においてはそのバリエーションは格段に多く、初めて動詞の活用表を目にしたとき、多くの人が「こんなに覚えられるのだろうか?」と不安になることでしょう。
しかし、ここで大切なのは、はじめからすべての活用を完璧に使いこなせなくても大丈夫ということです。実際によく使われる動詞の活用から少しずつ慣れていくことで、徐々にマスターしていきます。基礎的な動詞からスタートし、少しずつステップアップすることが大切です。
次に直面するのが、gustar系の動詞や再帰動詞、そして間接目的語です。特に間接目的語であるse, le, lesなどがどのように使われるかは、日本語とは異なる感覚が必要なため、多くの学習者が苦労するポイントです。
スペイン語は「誰が」「何を」「どうする」という関係が明確であり、また性数一致の原則などから、文の構成が複雑に感じられることがあります。そのため最初は慣れるまでに時間がかかるかもしれません。しかし、実際に繰り返し聞き、使用することで、自然と身につきます。重要なのは、実際に口に出して使ってみること。繰り返し発話練習をすることで、自分のものにしていくことです。
スペイン語学習において避けて通れないのが接続法です。「希望」「不確定な状況」「仮定」「感情」などを表現するために使われる接続法は、日常会話やビジネスシーンでも頻繁に登場しますが、多くの日本人学習者が大きな壁と感じる部分です。英語の仮定法と似ているものの、使われる場面や活用の幅が広く、初めはなかなかしっくりきません。
しかし、文法を理解するだけでなく、実際にどのような状況で接続法が使われるのか、日常会話や新聞、ニュースなどから学ぶことが重要です。スペイン語圏の文化や習慣に触れ、実際にどのように使われているかを繰り返し体験ことにより、腑に落ちるようになります。
圧倒的な語彙力
スペイン語を自在にに使いこなすためには、圧倒的な語彙力が必要です。特にニュース記事、書籍を読みこなし、ビジネスシーンで通用するスペイン語力を身につけるには、基礎的な語彙に加えて、専門的な語彙の習得が不可欠です。
この課題の克服には時間と努力を要しますが、日々少しずつ新しい単語を覚えることで確実に越えることができます。知らない単語に出会うたびに調べる姿勢は大切です。
新聞記事や業界に関連する文献を読み、ニュースを聞ことを習慣化し、またビジネスシーンで場数を踏むことにで、より実践的な語彙力が身につきます。
最後に、日本人学習者にとって永遠の課題とも言えるのが、冠詞と前置詞の正しい使い方です。冠詞や前置詞の微妙なニュアンスは、文法的には分かっていても、実際に使う場面になると迷いが生じるものです。
例えば、英語のinやonに似たスペイン語の前置詞enやaの使い分けは、文脈によって異なることがあり、慣れるまでには多くの実践が必要です。さらに、不定冠詞(un, unos, una, unas)、定冠詞(el, la, los,las)をうまく使い分けるにも、言語の感覚を養う必要があります。
しかし、この課題も完璧を目指すのではなく、徐々に慣れていくという心構えで進むことで、確実に前進します。失敗を恐れず、間違いながらも学んでいく姿勢が大切です。
スペイン語学習は、日本人にとって挑戦の連続ですが、これらの壁、課題を一歩一歩乗り越えることで、確実に成長を感じることができます。発音に関しては、日本語話者は他言語話者に比べて有利な面があり、恵まれた条件にあると言えます。
「継続は力なり」とはよく言われますが、まさにその通りです。巷の語学学校では「すぐに習得できる」などと喧伝していますが、そんな甘い言葉に惑わされず、自分に合った学習法を見つけ、コツコツと続けることが成功への鍵です。学問に王語なし、語学にも王道はありません。長い視野で楽しみながら学んでいきましょう。
以 上