執筆者:硯田一弘(アディルザス代表取締役)
パラグアイで一番古い日本人移住地はLa Colmenaという街ですが、今週はココが人気の観光地としてLa Nacion紙に紹介されました。
パラグアイへの移住の歴史については、パラグアイ日本人連合会のHPで詳しく語られていますので、是非ご覧ください。
https://www.rengoukai.org.py/ja/%E6%97%A5%E7%B3%BB%E7%A4%BE%E4%BC%9A/%E3%83%91%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E7%A7%BB%E4%BD%8F%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2
https://identidadnikkei.org.py/
90年近く前のコルメナ移住地の発足に端を発したパラグアイの日本人社会は、成長著しいパラグアイにおいて極めて重要な地位を占めていることはこれまでも何度も紹介してきました。
今日ご紹介する単語colmenaは、ミツバチの巣箱という意味の他に「大勢の人が集まるところ」という意味もあります。
今はパラリンピックでフランスの首都パリに多くの人が集まっていますが、今週はパラグアイの首都アスンシオンにおいて四年に一度の米州日系人大会Convención Panamericana Nikkei=COPANIが開催され、多くの日本人子孫の皆さんが集まって来られます。
COPANIの歴史については、4年前のアルゼンチン大会での説明をお読みください。
https://discovernikkei.org/ja/journal/2020/04/14/
Japan as #1と言われた’80年代をピークに世界における日本経済のプレゼンスは下降傾向を辿っていますが、海外に移住した日本人の多くは、着実に現地で成功をおさめ、日本人社会はミツバチのような堅実な成長を続けています。
一方、1970年代に南米で最強の経済大国であったベネズエラは今や世界最貧国レベルに落ち込んでいます。今週は全国規模の停電が発生し、大変不便な状況に陥っています。
このニュースで夕方になっても電灯がともっていない首都カラカスの黄昏の写真が掲載されていて、市民の不便さがひしひしと伝わってきます。
居座り台風10号の被害で、日本の各地でも様々な被害が報告されています。
自然災害である台風と人的災害であるベネズエラの停電を同じ切り口で語ることは出来ませんが、ミツバチの巣の中心に女王バチがいて、巣を支える働きバチの個々の活動が巣=社会を支えている構図を人間社会に置き換えて考察すると、ベネズエラで起こっている事象は中心であるべき政治の貧困がもたらした結果であり、社会が機能しなくなる見本として、世界の何処でも起こり得ることですから、シッカリと注視する必要があります。
またCOPANIでは、米州各地の日本の巣箱が素晴らしい活躍をしている様子を見届けたいと思います。
パラグアイの経済紙、5dias紙電子版に掲載された記事、”Este año se incorporaron casi 100 mil vehículos al parque automotor”(今年の新車登録台数は10万台)を御紹介します。国家自動車登録局の発表によると、今年7月末時点での国内の総登録数は3,063,442台で、その内60.4%が普通車(乗用車にSUV、ピックアップトラック等を含む)、37.1%がオートバイということです。残りはバス・トラック・農業用や土木用の特殊車両ということでしょう。
最も多いのはトヨタで、シェアは17.1%、起亜が肉薄して17%、GMのシボレーが11.4%となっています。車種別では日本では見られないトヨタのハイラックスピックアップトラック(↓)が7.9%で、Hyundaiの小型車HB20(↓左)と起亜の小型車Soluto(右)が夫々4%のシェアとなっています。
2018年頃の情報では、パラグアイ全体の年間登録台数が12万台で、そのうち10万台が中古車、新車の登録は僅か2万台でした。
今回の記事では、新車の登録が10万台(と言っても、四輪は6万台)ということで、ここ数年の間に新車の台数が三倍に増えたということが判ります。
まだ情報が報じられていませんが、中古車の輸入台数は減っているように感じます。ただ、以前新車として輸入されたクルマが中古車市場に出回っているとも考えられますので、現時点でも四輪車の年間登録台数は10万~12万台程度とみて良いのだと考えられます。以前、国道の総延長について書いており、2016年の登録台数を187万台としていましたが、これに二輪車が含まれたのかどうか?ちょっとわかりかねます。
https://latin-america.jp/archives/62616
しかし、単純に年間12万台増えたとして、7年間で84万台増えたとすれば187+84=271万台となりますから、四輪だけでも登録台数は200万台を超えていると考えられます。
日本の自動車保有台数が83百万台、人口対比でみると、1.4人に一台のクルマがある計算で、人口7百万人のパラグアイでは2.3人に一台ですから、まだ日本の方が車が多いことになりますが、その差は僅かになっていると認識できます。
https://www.airia.or.jp/publish/file/r5c6pv0000010qjk-att/01_hoyuudaisuusuii04.pdf
ただ、日本は人口減少の国、パラグアイは人口増加の国ですし、日本の中古車は輸出されて国内にとどまらない=登録台数は微増というのに対して、分母300に毎年10=3%強が増えると、いずれ人口と保有台数の数字は日本に肉薄してくるでしょう。
https://www.populationpyramid.net/paraguay/2023/
そうなった時に、公共交通をどうするのか?道路整備をどうするのか?といった現在日本が直面する課題に対峙することになるでしょう。
これはパラグアイに限らず、途上国と定義される成長途上にある国がいずれ経験することになる訳で、こうした経験と解決策を提供することが、先進国が衰退途上国にならないための義務と言えるように思います。
今週は所用で二年半ぶりにブラジルのサンパウロに来ています。
ブラジルへの入国ということであれば、現在住んでいるパラグアイ・エステ市近郊からはクルマで30分で渡れるフォスドイグアスにはほぼ毎週末出向いていますので、珍しい事ではなく、通勤のラジオはフォスの局=ポルトガル語で聴いていますので、ポルトガル語への違和感も、かつてペルーから移り住んだ時と比べて格段に薄まり、日常会話にはあまり苦労しなくなっていて、色々な情報が理解しやすくなった印象です。
で、先ずは今日の新聞Folha de Sao Paulo紙電子版から、ブラジル各都市の行政効率の比較記事を御紹介します。
納税額に対して保健衛生・教育等の行政サービスが如何に効率よく享受できるか?が示されていて、南寄りの海岸部=人口の多いエリアが優位であることを示しています。
人口が多いということは、そこに産業があるから人が集まる=税収が多い訳で、当然提供される公的サービスの質も上昇します。一方で人口が過疎な地域では産業も人口も少ないので行政の収入も少なく、提供されるサービスも限定的にならざるを得ない、という単純な仕組みが視覚化されただけとも言えます。
こうしたデータでは、かつて郵便局と農協の切り捨てを行ない、地方を貧しくして大都市集中型の国を作り上げた日本の政権とイメージが重なりますが、現在のブラジルでは社会主義寄りの政権が格差の是正に取り組んでいます。
とは言え、世界中の為政者たちが行う格差是正策は、単純な国庫からのバラマキで、昭和の日本成長期のような経済の成長=税収の増加は伴っていないケースが多く、ブラジルにおいても、それがどのように実行されるのか?は注目に値します。
因みに我がFoz do Iguacu市は全国5276の市町村の中で166位ということですから、上位にあると考えられます。観光収入の大きさが、良好な行政サービスを支えている訳です。https://www1.folha.uol.com.br/remf/municipio/166/
久々のサンパウロの中心部は、相変わらず大勢の人達が買い物や飲食を愉しんでいて、東京の賑わいを上回る印象があります。また、近郊のエリアの工場視察にも行きましたが、高速道路沿いの様子は、ブラジルの発展が継続していることを示す頼もしいものでした。
とは言え、日本でも良く報じられるブラジルの環境破壊の影響は今回の滞在時に顕著になっていて、昨日のサンパウロの気温は今年最高の35℃となったようです。
記事の中に、干天続きによる野火の発生と、その煙による大気汚染についても触れられていますが、今回の工場訪問の際も、山火事が発生している現場の脇を通ってきました。
快適な生活を追求すると、経済効率を追求せざるを得ませんが、それが環境に及ぼす影響は小さくないことを我々は体感しつづけている訳で、こうしたジレンマを如何に解決すべきかについて、考え続けなければいけないことを改めて痛感した次第です。
長期にわたって充分な降雨が無いために、南米の広範囲にわたって野火の影響が深刻になっています。パラグアイではウルグアイから派遣されたC-130 貨物機が消火剤を積んて消防車が入れない森林地帯の上空から消火作業を行っていますが、20万ヘクタールが燃えているチャコ地方では、火種が300ヵ所以上に及んでいるために、消火活動も困難を極めています。
20万ヘクタールというのは、東京都全体の面積22万ヘクタールに匹敵するもので、パラグアイの国土面積の0.5%に相当します。
森林火災はパラグアイだけでなく、北のコロンビア・ベネズエラから南のチリ・アルゼンチンまで広範囲に発生しており、その状況も天気と同様に刻々と中心を移動しています。
南米の森林地帯は、多くは人も住まないエリアだったり森林と牧畜用の草原だったりする場所が多く、道路が無い地域も多いので、広範囲な消火活動を行なおうとすると、冒頭で御紹介した消火用貨物機(Avion
Hidrante)による上空からの消火薬剤散布に頼らざるを得ないのが実情です。
一方で一か月以上にわたって各地で発生している野火や森林火災による大気汚染で、南米各地で呼吸器系の健康被害が報告されています。
また旱魃によって南米の物流の大動脈であるパラグアイ川の水位が過去最低となり、運送コストを押し上げる要因となっています。
今回の水位低下は3年前に記録した史上最低レベルを下回るもので、収穫した農産物の輸出に支障をきたすだけでなく、年末に向けて必要な物資の調達コストが大幅にあがったり、入手できなくなるリスクを孕んでいます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a29b0e196bc96cd22aaa51db873ff8627c558052
今日の言葉hidranteは、水道栓や給水栓という意味もありますが、水が足りないと農業にも大きな影響が発生しますので、早くしっかりした雨が降ることを祈るばかりです。
石破新総裁の誕生で、日本の政界では変化が生じそうですね。これまでのような米国に隷従する姿勢に変化が見えそうなのは良い兆候とお見受けします。日本は内弁慶で国内には強く、外国には弱い政権ばかりのように見受けられたので、少しは期待しましょう。
さて、今週は牧畜関係の方々と対話する機会がありました。パラグアイでは人口700万人に対して牛の数が2100万頭と、人間の三倍の牛が存在します。
この殆どが肉牛であり、乳牛の数はごくわずかです。ちなみに、日本の肉牛は270万頭で、牛肉の生産量は35万トン。パラグアイの2100万頭で生産量は60万トンと比べると、日本は牛を太らせて屠畜するということが判ります。(それだけ脂肪を蓄えているということ。)
統計の数字は出典によって違いがありますが、パラグアイに住んでいて気付くのは、クルマで郊外を走ると必ず牛を目にすることです。放牧牛主体のパラグアイでは、牧草地1ヘクタールに牛1頭という基準で牧畜の採算性が語られますが、牛が常時1ヘクタール=100m x 100mの場所で離れている訳ではなく、群れが広い牧草地を集団で移動しているので、ともかく広い土地の存在が重要であることが理解できます。
日本の場合は舎飼いという、牛舎の中での育成なので、運動量は少なく、食餌も脂質の豊富な大豆滓やトウモロコシなどの飼料穀物中心なので、体重の増加は放牧よりも早く、結果として回転の良いビジネスになる訳ですが、柔らかくてサシの入った和牛は、運動不足と栄養過多の産物でもあるので、過剰に接種しないように気を付けましょう。と言っても、値段も高いので、沢山は食べられないので良いですが。
世界の牛肉輸出国ランキングで面白いのは、神聖な動物として牛を食べないインドが、世界第二位の牛肉輸出国であるということです。経済優先、自国で消費しなければ良いということでしょうか。一人当たりの肉の消費量も、出展ごとに大きくデータが異なるのでなんとも言えませんが、牛肉に関しては、アルゼンチンを中心とした南米南部の消費量が非常に多いのだと感じます。
https://www.visualcapitalist.com/cp/mapped-meat-consumption-by-country-and-type/
今週はNHKのサラメシという番組で、パラグアイの牛肉料理を紹介した2020年の映像が再編集されて紹介されました。ご覧頂いた方も多いようですが、日本でなら見逃し配信というのも利用できるようなので、宜しければご覧ください。
https://www.nhk.jp/p/salameshi/ts/PVPP6PZNLG/episode/te/Y5W25PYPZ8/
パラグアイの牛肉は牧畜関係者の永年の努力の成果で、大変美味しくなっているのは紛れもない事実です。日本の皆さんの食卓にもお送りできるよう、努力していますので、御期待ください。
以 上