【季刊誌サンプル】ベネズエラ移民にまつわるコロンビアの現状と課題 松丸 進(上智大学大学院) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】ベネズエラ移民にまつわるコロンビアの現状と課題 松丸 進(上智大学大学院)


【季刊誌サンプル】ベネズエラ移民にまつわるコロンビアの現状と課題

松丸 進(上智大学大学院)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2024年夏号(No.1447)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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ベネズエラ移民にまつわるコロンビアの現状と課題 松丸 進(上智大学大学院)

はじめに
全世界のベネズエラ移民・難民の数は、2024年5月時点で約777万人に上る。総数の約36%を占めるのがコロンビアで、国内のベネズエラ移民の数は約286万人である。依然として、コロンビアはベネズエラ移民の最大の受け入れ国であり続けている。
コロンビアでは2022年8月にグスタボ・ペトロ大統領が就任し、同国初の左派政権が誕生した。ペトロ政権の主要外交政策のひとつに、ベネズエラとの二国間関係の回復が挙げられる。イバン・ドゥケ政権時(2018~22年)にベネズエラとの国交が断絶状態となっていたが、ペトロは大統領就任後、すぐさまアルマンド・ベネデッティ駐ベネズエラ大使(当時)を任命してカラカスに送った。さらに就任から3か月でニコラス・マドゥーロ大統領との首脳会談を実施するなど蜜月ぶりを見せている。
本稿では、ベネズエラに対して融和的な政策をとるペトロ政権が、ベネズエラ移民問題をどのように扱ってきたかについて振り返った上で、2024年7月におこなわれたベネズエラ大統領選挙結果を受けて移民が徐々に増加する中、コロンビア国内、特に国境地域が抱える課題について論じる。

ペトロ政権における対ベネズエラ関係
まずは、ペトロ政権が発足して以降の対ベネズエラ関係について概観したい。先述の通り、政権が発足した8月の末までに、大使の相互派遣により国交が回復した。2022年11月に両国大統領が初の首脳会談をおこなって以降、2024年7月末までに、合計5回の首脳会談が実施された。
国交回復を実体化させるためには、人やものの往来が不可欠である。それを象徴するのが、2022年9月、国境に架かるシモン・ボリバル橋の開放であった。この橋は、2015年から車両の通行が禁止されており、実に7年ぶりに国境閉鎖措置が全面的に解かれた。さらに、2022年11月には、両国間の定期直行便が再開した。
2023年4月には、ベネズエラに関する国際会議がボゴタで開催された。同会議には、ラテンアメリカをはじめとして、米国、カナダ、欧州の約20か国の代表が参加した。欧米諸国とベネズエラとのあいだの対話を促し、ベネズエラを国際社会に復帰させ、同国に対する経済制裁の解除の道筋をつけようというペトロ政権の意気込みとは裏腹に、マドゥーロ大統領の参加はなく、会議としては大きな成果は得られなかったといえる。

コロンビアにおけるベネズエラ移民の状況
ドゥケ政権時にベネズエラ移民対策として臨時保護許可(PPT)制度が新たに設けられた。PPT は、オンライン登録手続き、および本人確認のための対面での登録手続きを経て交付される。PPTは10年間有効で、身分証明書として就労および医療・教育など公共サービスへのアクセスを可能とするものである。ドゥケ前政権は、ベネズエラ移民を社会的に包摂する意欲的な政策としてコロンビアのリーダーシップを国際社会にアピールした。
しかし、2023年頃からPPT交付が大幅に遅れ、多くのベネズエラ移民が証明書を受け取れず、生活に困難が生じた。フェルナンド・ガルシア移民庁長官(当時)はメディアの取材において、ドゥケ政権時に