『私が諸島である -カリブ海思想入門』 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『私が諸島である -カリブ海思想入門』


『私が諸島である -カリブ海思想入門』
中村 達 書肆侃侃房 2023年12月 344頁 2,300円+税 ISBN978-4-86385-601-1

カリブ海5か国・地域にキャンパスを置く西インド諸島大学のジャマイカのモナキャンパス英語文学科博士課程に2015年から5年間留学し、現在は千葉工業大学助教を務める著者が欧米の知の形とは違ったカリブ海の思想という知の総体とその現代思想の複数性を、これまで日本ではフランス語・スペイン語圏を対象とするものがほとんどだったのだが著者の専門とする英語圏カリブの文学作品を中心に環カリブ海思想を紹介しようとするもの。一つの世界としてのカリブ海を、1492年のコロンブスの到達後の先住民・黒人奴隷、植民地支配、移民の流入による人種混淆の歴史を背景に、奴隷制によるアフリカ文化の喪失を前提とするプランテーション社会、フランス語圏から出てきたクレオール礼賛(英語圏でのそれはまだあまり議論されていない)に影響されたクレオール社会の多元社会と文化との相互作用からカリブ海におけるフェミニズムに至るまで、縦横にカリブ海思想を論じている。

〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2024年秋号(No.1448)より〕