『ラテンアメリカ文学の出版文化史 -作家・出版社・文芸雑誌と国際的文学ネットワークの形成』
寺尾 隆吉編著 勉誠社 2024年5月 307頁 5,500円+税 ISBN978-4-585-39040-4
ラテンアメリカ文学は世界中で、日本でも幾度ものブームを含め人気は根強いものがある。カブリエル・ガルシア・マルケス『百年の孤独』、ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』、フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』、フリオ・コルタサル『石蹴り遊び』、バルガス=ジョサ『緑の家』はじめ枚挙に暇がない文学史に遺る名作群は未だに広く読み継がれている。本書は現代ラテンアメリカ小説を専門とし訳書も多い著者(早稲田大学教授)と6人の研究者が「20世紀のラテンアメリカにおける文学出版事業」(寺尾)、国際的文学ネットワークの形成については「出版黎明期のアルゼンチンとボルヘスの創作」(寺尾)、「文芸誌『スール』とラテンアメリカ文学」(大西亮 法政大学教授)、「ウルグアイ出版産業の展開」(浜田和範 慶應義塾大学専任講師)、「フアン・ルルフォ作品がカノンになるまで -1940・50年代の雑誌を中心に」(仁平ひとみ 京都産業大学准教授)、「コスモポリタンなラテンアメリカ文学と文芸誌・出版社」(藤井健太朗 東京大学院博士課程、日本学術振興会特別研究員)、「ベネズエラと『ラテンアメリカ文学のブーム』-受容、出版社、論争」(Gregory Zambrano東京大学特任准教授、栗原祐紀子 東京大学博士課程)、「スダメリカナ社の出版戦略とラテンアメリカ文学のブーム -『石蹴り遊び』と『百年の孤独』の刊行」(寺尾)の論考に、ラテンアメリカ文学出版関連年表と人名、事項・新聞・雑誌、書籍から引ける索引を付している。ラテンアメリカ文学が国際的に認識されていく過程、文学史に名を遺す作家の作品の刊行、宣伝の経緯、各国の出版事情や書籍・雑誌の流通、編集者や出版社の役割を考察した研究書。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2024年秋号(No.1448)より〕