執筆者:ピーター藤尾(在チリ、サンテイアゴ)
「2024年10月28日ー11月3日」
「政治」
1)ボリッチ動向
大統領府の発表ではプロテスタントの日に、そのトップ(大司教と言うのでしょうか?)と面談し挨拶した由。もちろん一番大事な動きはバルパライソ州にある大統領の別荘カスティジョの丘で、政府関係者を多く集め面談しています。主要なテーマは、先の地方選挙と、モンサルへ事件の対応でしょう。トア内務大臣がその事件の対応を間違っていたとして批判が出ていますが、これらを関連させて内閣改善をする可能性もあるとか???トア内務大臣は、次回の大統領選挙の左翼側の候補者ですから、この事件で汚名を着せるわけにはいかないわけです。
2)地方選挙
左翼の新左翼・共産党は勢いを落としたと言われますが、バルパライソ州では主要なバルパライソ市とビーニャ市で新左翼候補が市長になっています。共産党員の市長も出ています。極右の共和党は補佐官などの選挙では多くの候補者が当選していますが州知事・市長などでは不調でした。市長選挙で野党グループは前回より35増やし、政府系は39か所を落としました。それより大事な州知事選挙は幾つかの地区で決選投票が行われますが、それが終われば今回の地方選挙の勝ち組・負け組がはっきりします。そして、もちろん2年後の大統領選挙の話が大きく話題になるわけです。
選挙が終わってからボリッチはカメラに向かって、「私はこの選挙を誇りに思う。不正は全くなかった。投票は義務制なのでチリ人全体の声を聴くことが出来た。結果についても満足している」それから当選した知事・市長に向けて「一緒に仕事をしましょう。国民がよりよい生活ができるように努力するのが私たちの仕事です。所属する政党の色など問題ではありません」とコメント。彼は国民が右翼を選んだり左翼を選んだりするのは当然・自由だからそれを尊重したいとするわけです。
「経済」
1)銅価格と為替
祝日の数字は出ていませんが、1ポンド4.24ドル、為替は1ドル951ペソです。
コデルコ銅公社の第3四半期の生産は前年対比少し減少していますが、価格の上昇から利益もアップとか。
2)公共投資
第3四半期の5.5%上昇で、目標3.5%を大きく超えている。必要ですからと答えがあるでしょうが、赤字が増えていくわけです。
「一般」
1)犯罪
毎週同じですが、今週も殺人事件が発生。首都圏ですが、100数十発の弾丸が発砲され、それに当たった男性が死亡。ハロウィンで近所の家にお菓子を貰いに行った少女が弾丸に当たって重傷。車を盗もうと襲い掛かった4人組に、その近くを犬を連れて歩いていた非番の警官が発砲し2人を逮捕。二人とも未成年でした。犯罪組織の争いとか個人犯の乱暴です。こんなニュースは毎日です。チリ南部の小売店に犯罪人が入り、商品を盗もうとしました。オーナーがドアを閉めて犯人が逃げられないようにすると犯人はオーナーを突き飛ばしました。オーナーは87歳でした。それがすべて防犯カメラに映っています。なんとその犯人は過去に25回、同じ犯罪で逮捕されています。警察より裁判所の問題ですね。
2)交通事故
この週末は4連休になりましたが、最初の3日間で297の事故が起き、11名の死亡が確認されています。もちろん、今日の日曜日もその数は増えるでしょう。
3)気温
先の10月は観測史上の最高気温を記録しましたが、11月もその傾向が続くとか。暑そう???
4)移民
もう長い間、チリは移民問題を抱えています。最近の移民数で数が多いのはベネスエラですが、2年連続、2022,2023年とチリに入って来た移民より、本国に戻った数の方が上でした。2023年の場合。入ってきたのは176千人。出ていったのは192千人でした。今年もその傾向が続いたのですが、少し前の大統領選挙の後,風が代わり、9月から移入者の数が帰国者数を超えています。ベネスエラに帰って希望を待つと言うことが無くなったのでしょうか。もっともそれは正規の動きで不法に出入りしている移民の数は不明です。
「11月4日ー11月10日」
「政治」
1)ボリッチ動向
全世界でアメリカ大統領選挙の話がされています。南米のトランプと言われるアルゼンチンの大統領は即時に祝意を表明しました。ボリッチは、テレビの画面で延々とスポーツチームの話をしました。彼は以前、トランプ批判をしていますからね。外務大臣はこの件に関しアメリカは中国と並んでチリに とって最も重要な国だとコメント。
来週月曜日にベトナムの大統領がモネダ宮殿を訪問するとか。
ボリッチは野党がうるさく言うが、私は内閣の改造はしないとコメント。ただその下の補佐官は4名替えました。新聞の社説に社会安全のための政策・組織がちゃんと機能していない・改善されていないと批判されています。問題があるのに放置しているのでしょうね。それから健康問題(病院や保険機構)が困難な状況になってきていると言われます。
バジェホ大統領府長官は、大臣が次の国会選挙に参加したいとなれば、辞任を認めることになるとしています。
2)エルモシジャ事件
検察長官に疑惑が出てきました。彼が起訴されたら検察庁はどう対応するのかな?
検察・警察・政府とすべての分野でエルモシジャが大活躍(?)していたことが明らかになってきています。もっとショックなニュースが出るでしょう。
なんでもチリ人の4人に3人がチリは汚職の国だと考えるとか。以前は南米の他の国は汚職がひどいがチリだけは別だと言われたのですが。会社員の頃ベネスエラにエンジェルフォールを見に行きましたが、土地の人と話をしていると、「この国は汚職がひどい。袖の下を使わないと商売が出来ない」と聞きました。チリも落ち込み始めたのでしょうか?
3)大統領選挙
まだ1年以上先の話ですが、次の大統領選挙の候補者の中で、世論調査によると人気のあるのは次の3人です。首位はマテイ(29%)。2位はバチェレットとカストが11%で同率でした。左翼側で期待されているのは内務大臣のトアですが。
マテイは現在プロビデンシア区長ですから、12月に任期が終われば大統領候補として行動を開始できます。右翼側は中道右翼の彼女と、極右のカストの間で第1 次予選をして次の選挙には右翼から統一候補者を出すよう考えています。そうなれば勝てると言う見通しです。
「経済」
1)銅価格と為替
トランプの当選で銅価格は水曜日大きく下がりました???。もちろん、最後は元に戻りました。銅価格は1ポンド4.23ドル、為替は1ドル951ペソでした。
2)経済成長
9月は前年対比同率で全く上昇はありませんでした。これでは今年のチリ経済が停滞するのは間違いないですね。さて家屋購入時の貸出金利がこの1年間以上で最低のレベルになっています。とにかく売れないので何とかしようと言うことでしょうね。
株式市場IPSAは6510ポイントで今年になって15%の上昇です。
3)物価上昇率IPC
10月の上昇率は1%と今年最高の数字で過去12か月で4.7%になりました。これは予想を大きく超えたものだったので、今年の予想数字の変更と公定歩合の数字もどうするか考える必要が出ているとか。電気代の値上げがその一因と言われますが・・・
この日曜日から首都圏の公共運送の価格が10ペソ上がりました。今年になってから40ペソの値上げ。それに抗議する動きはまだ出ていません。それからガソリン価格が下がりました。価格の変動は上がったり下がったりするわけですが、チリでは最近の4回は全部下がっています。その4回で下がった価格の合計は100ペソ強です。
4)新車の販売
今年の9月までの数字ですが、22万2千台が販売され、その中で日本車は25%のシェアーを占めました。
「一般」
1)犯罪
麻薬犯罪組織に対し大規模な手入れが行われました。
9月の殺人事件は105回、1月からの合計では1418人が殺されています。政府は何をしているのと言われるわけです。
それからまたアラウカ州で木材の盗難事件が起きました。いつもの組織が森林会社のトラックや車両に放火し、置かれている木材を奪っていくわけです。
同じことが繰り返されるのに反応できないのでしょうか?
2)テレトン
今週の最大の話題はこれですね。障害児童の援護をする組織に基金するチャリティー番組が行われ、チリの国中で盛り上がりました。ボリッチはその準備活動に南部の州を訪問して応援しました。本番の時にも参加しています。招待されて参加したスペイン人の音楽家が、テレトンの様な行事はチリ以外にはない素晴らしいものだとコメントしました。1978年に始まり、今年で46年目です。毎年巨額の基金を集めていますが、今年は目標だった380億ペソをはるかに超えた405億ペソが集まりました。
3)山火事
とうとうバルパライソ州で山火事が起きました。大火事ではなかったですが、この先が心配されます。
「11月11日ー11月17日」
「政治」
1)ボリッチ動向
ベトナム大統領がモネダ宮殿を訪問し、ボリッチと面談をしました。
その後、ボリッチはペルーに飛び、APEC会議に参加。そこで中国の習近平と面談しました。もっと銅を買ってほしい、投資をしてほしいと頼んだのでしょうか? そのペルーで中国は最大級のチャンカイ港を建設する予定と言われますからね。ペルーだけでなくチリにも頼むとして。日本から石破首相も出席していますが、ボリッチは彼との面談に興味なかったのでしょうか?チリのマスコミには石破の名前は出ません。今日、ブラジルに飛びました。明日からG20会議に出席します。
大臣変更依頼を拒否
内務大臣トアを更迭するよう野党は要請していますが、ボリッチは拒否を続けています。前内務次官モンサルべが逮捕され警察に収容されました。このニュースは厭きるほど続きます。しかし内務省のナンバー2だった男が、部下を強姦するなんて。職を失い・家族が崩壊すると思わないのかな?部下だから訴えないと考えたのでしょうか?
エルモシジャ事件
毎週、同じ話題が書かれます。政府・検察・裁判所・警察に大きなダメージを与えているこの事件ですが、どう修復するかがこれからの大きな問題になります。誰も裁判所・検察庁を信じないとなれば国が破壊されます。
「経済」
1)銅価格と為替
何と今週は一日、銅価格が4ドルを割りましたが、金曜日は1ポンド4.11ドルで終えました。良かった。トランプ関連と言われますが、本当かな? 中国の動きが見えなくなったからかな?為替は1ドル975ペソでした。
2)資金の流出
2019年に社会騒乱が起きた時、過去20年で例を見ない97億ドルが流失しましたが、次の年から収まり2023年はわずか7億ドルでした。それが今年になって流れが逆になり9月までに41億ドルが出ていきました。新聞の社説に経済の再稼働はペンディングになっている最大の課題だとされています。しかしそれをボリッチ政権は実行しているように見えないとするわけです。
それに最近の経済停滞から来年の状況が高め安定ではなく、停滞もしくは減少も予想されるほど落ち込み始めました。投資を呼び込むためにインフレを下げる、犯罪を抑え社会不安をなくするなどやることは決まっているのでしょうが、政府は手を打っていないようです。中国にすり寄る姿勢は継続ですが、それは正しいかな?ところで来年度予算が下院で可決され、上院に回りました。一歩前進ですね。
「一般」
1)山火事
バルパライソ地区の山火事は11か所で130ヘクタールが燃えました。放火の疑いで2名が逮捕されたとか。
2)空港スト
サンティアゴの空港で従業員のストがあり、15000人に影響が出たとか。そのストは違法だったようで、それを管理できない空港運営会社に厳しい批判の声が出ています。先月イースター島に行っているときにこの事件が起きていれば、島から戻れませんでしたね。
3)犯罪
毎週同じような犯罪関連ニュースが出ます。今週は、車を盗まれようとしたドライバーが犯人に逆らうと銃を発射され、死亡しました。その場所は日本大使館の近くでした。
「11月18日ー11月24日」
「政治」
1)ボリッチ動向
フランスのマクロン大統領が水曜日にモネダ宮殿を訪問しました。翌日、二人はバルパライソ港に向かい、チリの南極向けの砕氷船を見学しました。しかし不思議でした。その水曜日のテレビのニュースはマクロン訪問やG20関連のニュースはほとんどなく、前内務次官モンサルへ関連ばかり。彼がその女性と夜の街を歩いているビデオとか、二人を乗せたタクシーの運転手のコメントとか・・・。これだけモンサルへを糾弾するニュースが
続くと、与党側から政府に自己批判するよう声が上がっています。新聞に彼の最大のピンチと書かれました???
さてマスコミの話題になったのはボリッチが経営者を批判したことです。「短い期間ではチリ経済が浮き沈みするのは当然で、長い目で見てチリへの投資をするのがチリ経営陣のやるべきことだ。しかしそれが実施されていない」としました。経営陣はそれにすぐに反論して、彼は大統領として資格・経験が少なすぎるとしました。すると翌日、ボリッチは皆さんは間違っている。私は皆さんを批判したのではなく協調してやっていこうとするのだとしました。誰かの忠告があったのでしょうね。今晩、選挙の結果を見ながらモネダ宮殿でボリッチと幹部の話し合いがありました。その会議の前にテレビカメラに向かって「今日の選挙で当選された方々にお祝いの言葉を送ります。全員が一丸となって仕事をしていきましょう」としました。
さて今回のAPEC、G20の国際会議で中国の習近平が目立ちましたね。ペルーのチャンカイ港を軸にして一帯一路運動を南米でも実施しそうです。それを利用してペルーと中国の距離が縮まるとか。チリの競争相手になるの?チリの港湾はそれと対抗できるのか出来ないのか議論されています。不動産バルブなどで中国が崩壊すると長い間言われていますが・・・。
2)地方選挙
前回の2021年の選挙では16州の中で13と左翼側が圧勝したのですが、今回は何と左9、右6と拮抗でした。その他に独立が1あります。それは次の国会議員・大統領選挙に大きく影響しますね。しかしこの選挙は全く盛り上がりませんでした。週日のテレビのニュースでどの州で選挙があるのか、候補者は誰と誰かの基本的なことが全く報道されません。選挙運動や選挙民の声も出ませんでした???
3)健康問題
現在38万人が手術の順番待ちで、1年ほど待たされるのが普通らしい。そして36000人がその順番待ちの時に死亡したとか。この問題も長い間解決されません。
「経済」
1)銅価格と為替
銅価格は低めになっています。1ポンド当たり4.00ドル。しかし今年の銅生産量は2位ペルー、3位コンゴですが、首位はチリです。
そして為替は1ドル971ペソでした。
2)GDP
第3四半期は0.7%のアップで対前年2.3%の上昇でした。それほど落ち込んでいないのですね。10月の航空便の数は対前年13%アップと順調に伸びています。
ただ2023年のチリの税収入の動きはOECD中の最下位でした。GDPは3.2%下がったひどい状態で、同じような状況は韓国の3.1%ダウンでした。
チリの経営陣にとって心配される状況です。
3)家屋税
9月の家屋税収入は昨年対比12%上昇とか。全国に346ある自治体の中で、わずかの10の市町村(首都圏は区)がその40%を占めるとか。その中でも断トツはラス・コンデス区でした。その地区の家・マンションの価値が他の地区より高いと言う証拠ですね。格差がひどすぎますね。
「一般」
1)幸福度
世界30か国の幸福度調査が行われました。チリ人で自分は幸せだと感じているのは68%で21位でした。日本は57%で27位とほぼ最低レベル。どうして?不思議なのは貧困層が国民の半分にもなるアルゼンチン人がこのランキングでチリより上位に入っていることです???
2)モンサルへ問題
彼はランカグアの刑務所に収容されていますが、そこで麻薬グループから脅迫されているとか。グループのリーダーが今までお前が俺たちを脅してきたのだから、今回は俺たちがお前を脅してやるとするわけです。どんな事故が起きるかな?これが看守から確認されると裁判所は彼を違う刑務所に移動させました。
彼の弁護側は刑務所を出して裁判が終わるまで自宅待機にさせてほしいと要請しています。ボリッチが法の前には誰も平等だと言いましたが、刑務所・裁判所がこんなに彼のことを気遣うのは異常ですね。
以 上