執筆者:桜井悌司(ラテンアメリカ協会顧問)
「調査の概要」
2024年10月16日付けで、米国の人権団体のフリーダムハウスが、「インターネットの自由度ランキング2024」(Freedom on the Net 2024)を発表した。この調査は、2011年に開始され、採点の基準は、インターネット及びデジタル・メディアにおける言論・表現の自由度を「アクセス規制」、「コンテンツ規制」、「ユーザー権利の侵害」の3分野の観点から21の質問項目と100以上の詳細質問を設定・調査し、0-100ptsでスコア化し評価している。70点以上が自由度「フリー」の国々、40点から69点までの国々は、「部分的にフリー)、39点以下の国々は「フリーでない国々」:と分類されている。今回の調査は、世界72カ国・地域を対象に行われた。それによると19カ国・地域(昨年度17)が「自由」32カ国・地域(昨年度36)が「部分的に自由」、21カ国・地域(昨年度17)が「不自由」となった。
自由度フリーの国は、下記のアイスランドからアルゼンチンまでの18ヶ国と70点のセルビアの19ヶ国である。フリーでない国は、点数の低い国順にすると中国、ミヤンマー9点、イラン12点、キューバ、ロシア20点、ベラルーシ、ベトナム22点、サウジアラビア25点、エチオピア、パキスタン、ウズベキスタン27点、バーレーン、エジプト、スーダン28点、UAE、ベネズエラ30点、トルコ31点、アゼルバイジャン、カザフスタン34点、ルアンダ36点、タイ39点の21カ国である。旧ソ連系が5ヶ国、イスラム系が7ヶ国、アジア系が5ヶ国、アフリカ系2ヶ国、ラテンアメリカ系2ヶ国の20ヶ国である。総じて権威主義的な国が多いと言えよう。残りはすべて部分的にフリーの国である。
表1 インターネットランキング自由度2024の主要国のランク
国 名 | 世界
順位 |
合計点と自由度の状況
100点満点 |
アクセスへの障害25点満点 | 内容に対する制約 35点満点 | 個人権利の侵害 40点満点 |
アイスランド | 1(1/1) | 94(94/95) Free | 25(25/25) | 34(34/34) | 35(35/36) |
エストニア | 2(2/2) | 92(93/93) Free | 25(25/25) | 31(31/32) | 36(37/36) |
カナダ | 3(3/4) | 86(88/89) Free | 23(23/23) | 32(33/32) | 31(32/32) |
チリ | 3(na) | 86(na) Free | 24(na) | 32(na) | 31(na) |
コスタリカ | 5(4/3) | 85(85/88) Free | 21(21/19) | 32(33/34) | 32(31/33) |
オランダ | 6(na) | 83(na) Free | 24(na) | 29(na) | 30(na) |
台湾 | 7(6/5) | 79(78/79) Free | 24(24/24) | 29(29/30) | 26(25/25) |
英国 | 8(5/5) | 78(79/79) Free | 24(21/21) | 29(30/30) | 25(25/25) |
日本 | 8(7/8) | 78(77/77) Free | 22(22/22) | 30(29/29) | 26(26/26) |
ドイツ | 10(7/8) | 77(77/77) Free | 23(23/23) | 28(28/28) | (2626/26) |
日本 | 8(7/8) | 78(77/77) Free | 22(22/22) | 30(29/29) | 26(26/26) |
オーストラリア | 11(9/10) | 76(76/76) Free | 23(23/23) | 28(28/28) | 25(25/25) |
フランス | 11(9/10) | 76(76/76) Free | 22(23/23) | 29(29/29) | 25(24/24) |
米国 | 11(9/10) | 76(76/76) Free | 21(21/21) | 29(30/30) | 26(25/25) |
イタリア | 14(13/13) | 75(75/75) Free | 21(21/21) | 29(29/29) | 25(25/25) |
ジョージア | 15(9/7) | 74(76/78) Free | 19(19/19) | 28(29/31) | 27(28/28) |
南ア | 15(14/15) | 74(73/67) Free | 19(17/22) | 29(29/24) | 25(27/21) |
アルメニア | 15(16/14) | 74(72/74) Free | 20(19/20) | 29(28/28) | 25(25/26) |
アルゼンチン | 18(14/17) | 71(73/71) Free | 19(19/19) | 27(28/27) | 25(26/25) |
韓国 | 21(18/20) | 66(67/67) P.Free | 22(22/22) | 23(24/24) | 21(21/21) |
中国 | 71(70/70) | 9(9/10) Not Free | 7(7/8) | 2(2/2) | 0(0/0) |
注:チリとオランダは前回の調査では対象国に入っていなかった。( )内は、2023/2022調査結果
「ラテンアメリカ諸国の概要」
調査対象国72か国の内、ラテンアメリカ諸国の対象国は、下記表2のとおり、10カ国である。自由度フリーの国は、チリ、コスタリカ、アルゼンチンの3ヶ国であり、チリの世界3位、コスタリカの5位は注目に値する。部分的にフリーな国は、ブラジル、コロンビア、エクアドル、メキシコ、ニカラグアの5ヶ国、フリーでない国は、ベネズエラとキューバの2ヶ国である。
23年調査と比較して、得点で上昇した国は、アルゼンチンが2ポイント、ブラジル、メキシコ、ニカラグアがそれぞれ1ポイントとなっている。変化のない国は、コスタリカ、コロンビア、ベネズエラの3ヶ国、下落した国は、ブラジル、キューバで、それぞれ1ポイントであった。チリは23年度の調査対象国でなかった。
この調査を見ると、国別の動向、問題点、課題などが紹介されているので、ご関心のある方は、ご参照ください。
ラテンアメリカ調査対象国9カ国のインターネット自由度ランキング2024
国 名 | 世界
順位 |
合計点と自由度の状況100点満点 | アクセスへの障害25点満点 | 内容に対する制約 35点満点 | 個人権利の侵害 40点満点 |
Chile | 3(na) | 86(na) Free | 24(na) | 32(na) | 36(na) |
Costa Rica | 5(4/3) | 85(85/87) Free | 21(19/21) | 32(33/34) | 32(31/33) |
Argentina | 18(14/17) | 71(73/71) Free | 19(19/19) | 27(28/27) | 25(26/25) |
Brazil | 22(23/21) | 65(64/65)
P. Free |
20(20/20) | 25(23/24) | 20(21/21) |
Colombia | 22(21/23) | 65(65/65)
P. Free |
19(19/19) | 25(25/24) | 21(21/21) |
Ecuador | 26(23/23) | 63(64/64)
P. Free |
18(18/18) | 23(24/24) | 22(22/22) |
Mexico | 28(25/27) | 61(62/61)
P. Free |
18(18/18) | 25(25/25) | 18(19/18) |
Nicaragua | 49(48/45) | 41(42/45)
P. Free |
11(11/11) | 16(17/16) | 14(17/15) |
Venezuela | 57(57/55) | 30(29/30)
Not Free |
8(7/7) | 11(11/12) | 11(11/11) |
Cuba | 68(67/67) | 20(20/20)
Not Free |
5(4/4) | 9(9/9) | 6(7/7) |
Freedom House が世界72カ国のインターネットの自由度を調査したもので、2024年10月16日に発表された。( )内は2023/2022年調査結果