連載レポート142:桜井悌司「インターネット自由度ランキング2024とラテンアメリカ」 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載レポート142:桜井悌司「インターネット自由度ランキング2024とラテンアメリカ」


連載レポート 142

「インターネット自由度ランキング2024とラテンアメリカ」

執筆者:桜井悌司(ラテンアメリカ協会顧問)

「調査の概要」

2024年10月16日付けで、米国の人権団体のフリーダムハウスが、「インターネットの自由度ランキング2024」(Freedom on the Net 2024)を発表した。この調査は、2011年に開始され、採点の基準は、インターネット及びデジタル・メディアにおける言論・表現の自由度を「アクセス規制」、「コンテンツ規制」、「ユーザー権利の侵害」の3分野の観点から21の質問項目と100以上の詳細質問を設定・調査し、0-100ptsでスコア化し評価している。70点以上が自由度「フリー」の国々、40点から69点までの国々は、「部分的にフリー)、39点以下の国々は「フリーでない国々」:と分類されている。今回の調査は、世界72カ国・地域を対象に行われた。それによると19カ国・地域(昨年度17)が「自由」32カ国・地域(昨年度36)が「部分的に自由」、21カ国・地域(昨年度17)が「不自由」となった。

自由度フリーの国は、下記のアイスランドからアルゼンチンまでの18ヶ国と70点のセルビアの19ヶ国である。フリーでない国は、点数の低い国順にすると中国、ミヤンマー9点、イラン12点、キューバ、ロシア20点、ベラルーシ、ベトナム22点、サウジアラビア25点、エチオピア、パキスタン、ウズベキスタン27点、バーレーン、エジプト、スーダン28点、UAE、ベネズエラ30点、トルコ31点、アゼルバイジャン、カザフスタン34点、ルアンダ36点、タイ39点の21カ国である。旧ソ連系が5ヶ国、イスラム系が7ヶ国、アジア系が5ヶ国、アフリカ系2ヶ国、ラテンアメリカ系2ヶ国の20ヶ国である。総じて権威主義的な国が多いと言えよう。残りはすべて部分的にフリーの国である。

表1 インターネットランキング自由度2024の主要国のランク

国 名 世界

順位

合計点と自由度の状況

100点満点

アクセスへの障害25点満点 内容に対する制約 35点満点 個人権利の侵害 40点満点
アイスランド 1(1/1) 94(94/95) Free 25(25/25) 34(34/34) 35(35/36)
エストニア 2(2/2)  92(93/93) Free 25(25/25) 31(31/32) 36(37/36)
カナダ 3(3/4) 86(88/89) Free 23(23/23) 32(33/32) 31(32/32)
チリ 3(na) 86(na) Free 24(na) 32(na) 31(na)
コスタリカ 5(4/3) 85(85/88) Free 21(21/19) 32(33/34) 32(31/33)
オランダ 6(na) 83(na) Free 24(na) 29(na) 30(na)
台湾 7(6/5) 79(78/79)  Free 24(24/24) 29(29/30) 26(25/25)
英国 8(5/5) 78(79/79)  Free 24(21/21) 29(30/30) 25(25/25)
日本 8(7/8) 78(77/77)   Free 22(22/22) 30(29/29) 26(26/26)
ドイツ 10(7/8) 77(77/77)  Free 23(23/23) 28(28/28) (2626/26)
日本 8(7/8) 78(77/77)   Free 22(22/22) 30(29/29) 26(26/26)
オーストラリア 11(9/10) 76(76/76) Free 23(23/23) 28(28/28) 25(25/25)
フランス 11(9/10) 76(76/76)  Free 22(23/23) 29(29/29) 25(24/24)
米国 11(9/10) 76(76/76)  Free 21(21/21) 29(30/30) 26(25/25)
イタリア 14(13/13) 75(75/75) Free 21(21/21) 29(29/29) 25(25/25)
ジョージア 15(9/7) 74(76/78) Free 19(19/19) 28(29/31) 27(28/28)
南ア 15(14/15) 74(73/67) Free 19(17/22) 29(29/24) 25(27/21)
アルメニア 15(16/14) 74(72/74) Free 20(19/20) 29(28/28) 25(25/26)
アルゼンチン 18(14/17) 71(73/71) Free 19(19/19) 27(28/27) 25(26/25)
           
韓国 21(18/20) 66(67/67) P.Free 22(22/22) 23(24/24) 21(21/21)
中国 71(70/70) 9(9/10) Not Free 7(7/8) 2(2/2) 0(0/0)

注:チリとオランダは前回の調査では対象国に入っていなかった。(  )内は、2023/2022調査結果

「ラテンアメリカ諸国の概要」

調査対象国72か国の内、ラテンアメリカ諸国の対象国は、下記表2のとおり、10カ国である。自由度フリーの国は、チリ、コスタリカ、アルゼンチンの3ヶ国であり、チリの世界3位、コスタリカの5位は注目に値する。部分的にフリーな国は、ブラジル、コロンビア、エクアドル、メキシコ、ニカラグアの5ヶ国、フリーでない国は、ベネズエラとキューバの2ヶ国である。

23年調査と比較して、得点で上昇した国は、アルゼンチンが2ポイント、ブラジル、メキシコ、ニカラグアがそれぞれ1ポイントとなっている。変化のない国は、コスタリカ、コロンビア、ベネズエラの3ヶ国、下落した国は、ブラジル、キューバで、それぞれ1ポイントであった。チリは23年度の調査対象国でなかった。

この調査を見ると、国別の動向、問題点、課題などが紹介されているので、ご関心のある方は、ご参照ください。

ラテンアメリカ調査対象国9カ国のインターネット自由度ランキング2024

国 名 世界

順位

合計点と自由度の状況100点満点 アクセスへの障害25点満点 内容に対する制約 35点満点 個人権利の侵害 40点満点
Chile 3(na) 86(na) Free 24(na) 32(na) 36(na)
Costa Rica 5(4/3) 85(85/87) Free 21(19/21) 32(33/34) 32(31/33)
Argentina 18(14/17) 71(73/71) Free 19(19/19) 27(28/27) 25(26/25)
Brazil 22(23/21) 65(64/65)

P. Free

20(20/20) 25(23/24) 20(21/21)
Colombia 22(21/23) 65(65/65)

P. Free

19(19/19) 25(25/24) 21(21/21)
Ecuador 26(23/23) 63(64/64)

P. Free

18(18/18) 23(24/24) 22(22/22)
Mexico 28(25/27) 61(62/61)

P. Free

18(18/18) 25(25/25) 18(19/18)
Nicaragua 49(48/45) 41(42/45)

P. Free

11(11/11) 16(17/16) 14(17/15)
Venezuela 57(57/55) 30(29/30)

Not Free

8(7/7) 11(11/12) 11(11/11)
Cuba 68(67/67) 20(20/20)

Not Free

5(4/4) 9(9/9) 6(7/7)

Freedom House が世界72カ国のインターネットの自由度を調査したもので、2024年10月16日に発表された。( )内は2023/2022年調査結果